第二話『ペロペロキャンディー欲しいぴょこ』
緑豊かな広い森。ここはみんなが住む森。今日も何か起こるかな。
『ああ、おなか減ったぴょこ!』
『家に帰って野菜炒めでも食べるニャ?』
『嫌だよ~、毎日ニンジンばっかり…オイラ甘いものが食べたい!』
『ニンジンだって甘いにゃん』
ウサぴょことおにゃんこが、森の広場で無駄話をしていると、一人の美女が通りかかりました。
『ペロン、ぺロロン、ペロン』
美女は右手で何かを持ちながら、その何かを繰り返し舐めまわしていました。
『ああっ!モケ美ちゃん!何を舐めているんだぴょこ?』
『用でもあんのかよウサギ?あん、コレ?見りゃ分かるでしょキャンディーよ』
森で唯一の人間、モケ美が手にしていたのはピンク色の透き通ったキャンディーでした。
『美味しそうだにゃ~』
『ねぇ、僕にも少し舐めさせてぴょん』
『冗談じゃないわよ!ウサギと間接キスなんてごめんだわ。汚いし動物特有の病気がうつるわよ』
おにゃんこがモケ美のキャンディーを羨ましがり、ウサぴょこがモケ美のキャンディーを欲しがり、モケ美が二人を拒絶する愉快な広場。
『病気なんてしてないぴょこ!舐めさせてぴょこ!』
『しつこいわね!あっち行かないとファーにするわよ!』
『ぴょぴょぴょーん!』
あまりにしつこいおねだりに、モケ美の堪忍袋がぶち破れてしまった、これ当然。
『ふんっ!ウサギの癖に喋るわ物を要求するわとんでもない森だわ』
プンスカプンプンと怒りながらモケ美は広場を去って行きました。
『こ…怖かったぴょこ…』
『ああいうタチの悪い女に関わっちゃダメにゃ』
おにゃんこに説教を受けても、まだウサぴょこの欲望は続いていました。
『でもキャンディー欲しいぴょこ!』
『お菓子屋さんに売ってるから買えばいいにゃ』
『お金を持ってないんだぴょこ!』
『じゃあ諦めるにゃ』
『ヤダヤダ!キャンディー舐めたいぴょこ!…そうだ!』
頭の悪いウサぴょこでも、ひらめきという感覚は頭脳内に存在する。
『何か思いついたのにゃ?』
『お金を払わずに、お菓子屋さんからキャンディーを取って来ちゃえばいいんだぴょこ』
『にゃるほどにゃ!レジを通さなければお金を払う必要ないニャ』
『オイラ頭いいだろう?』
早速ウサぴょこは、大嫌いなブリゴキ君が経営をしている、森のお菓子屋さんへと向かいました。
『やぁウサぴょこ、相変わらず間抜けな顔してるゴキね』
ブリゴキ君は、会えば悪口を言ってくる森一番の嫌われ者です。
『大きなお世話だぴょん!オイラは客だぴょこ!』
『ええっ!?いつも金欠のウサぴょこが俺の店で買い物?…怪しいブリね』
勘のいいブリゴキ君は、ウサぴょこの奇行を疑い始めてしまいました。
『あ…怪しくないぴょこ…ジロジロ…ふんっ、ロクな品揃えじゃないぴょこ』
ウサぴょこは、近くの棚に並んでいたキャンディーをサッとポケットに隠し、店を出ようとしました。
『おい待てゴキ!そのポケットに入ってるキャンディーはなんだブリ!』
『こ…これは最初から入ってたんだぴょこ!他の店で買ったんだぴょこ…』
『嘘つくなブリブリブリ!このキャンディーはブリゴキ菓子屋がメーカーと協力して提携開発したオリジナルブリゴキキャンディーだゴキゴキ!ここにしか売ってないブリブリブリ!』
『て…ていけ…?ぴょぴょこぴょこ??』
『万引きだゴキゴキゴキ!警察呼ぶリブリブリブリ~!』
『ぴょぴょぴょーー!!!』
ブリゴキ君は警察に通報し、ウサぴょこは身柄を拘束されてしまいました。通報から10分後、ブタの女警官おまわり子が現場にかけつけました。
『お金がないのにキャンディーを強奪するなんて卑怯極まりないわねブヒ』
おまわり子にウサぴょこの身柄は引き渡され、店先で尋問を受けることになりました。
『だってキャンディー欲しかったんだぴょこ…オイラは悪くないぴょこ…』
『悪いのよ!そういうの万引きっていうの!万引きすると警察に引っ張られるのよ!刑務所に入れられるんだから!ブヒヒ』
ウサぴょこにおまわり子は容赦ない罵声を上から浴びせます。
『ぴょぴょーん…刑務所はいやだぴょこ…』
『ぴょこぴょん泣き喚いても遅いわよ!犯罪を犯した後に反省したって時は戻らないのよブヒ』
『ぴぉーんぴぉーん』
ウサぴょこは観念したのか、俯いたまま顔を上げようとしません。もう顔を上げる元気もなくなっていたからです。
『ブヒヒ…13時35分、ウサぴょこを窃盗罪で現行犯逮捕するブヒブヒ』
おまわり子さんはウサぴょこの両手に手錠をかけ、警察署へと連行しようとしました。その時です…。
『待って!』
遠くから美しい叫び声が聞こえてきました。
『ミンミンちゃん!』
そうなのです。心優しい森の妖精ミンミンちゃんが、ウサぴょこ逮捕の噂を聞きつけ、現場に駆けつけてくれたのです。
『おまわり子さん、ウサぴょこを放してあげて』
ウサぴょこを心配するミンミンちゃん、これ当然。
『ダメよ、もう逮捕したのよブヒ。これから裁判にかけて法で裁くのよブヒヒ』
『おまわり子さん、ちょっと見ててください!ウサぴょこ、これいくつ?』
ミンミンちゃんは指を三本立てて、ウサぴょこに指が何本立っているかを聞きました。
『え…え~とぴょこ…1、2、3、4、5、6…6本だぴょこ!』
『ね?おまわり子さん、ウサぴょこってキチガイなの、だから許してあげて』
おまわり子さんは青ざめた呆れ顔をしたまま、無言でウサぴょこの手錠を外してくれました。
『よかったわねウサぴょこ、あなたは無実よ』
『ほ…本当に刑務所に行かなくてもいいぴょん?やったぴょこ~!』
世の中、頭が適度に悪いと非難されるが、完全におかしいと擁護され法律さえも通用しない。被害者は泣き寝入り、これ当然。




