一匹狼と屋上
【シズク視点】
ユウと俺は、いつも屋上で飯を食う。
あったかいし、広いし、誰も来ない。
───いや、誰も来ないと言うよりは、『来させない』と言う方が正しい。
高校一年になりたての4月、屋上は、ヤンキーどもの溜まり場だった。
俺とユウが初めて屋上に来たときも、ヤンキーみてぇなのが数人いた。
ユウも俺も、人と話したり、付き合ったりするのが好きではない。お互いを除いて。
だから俺は、ヤンキー等を追い払った。
俺は小学校から空手をやっていた。
あまり乗り気はしなかったが、だからといって誰かと遊ぶのも正直めんどくさかったから、空手を言い訳によく、約束を断った。
毎日のように、空手を習った。空手をやっているときは、自分だけの世界にいる気がして落ち着けたからだ。
まあ、中学入ってユウに会ってからは、道場に通う頻度も落ち、高校入学と同時に辞めたけど。
それでも、空手歴9年は伊達じゃない。
屋上の奴等なんて、赤子の手を捻るのと同じくらいに弱かった。
ユウには空手のことは言ってるが、俺がケンカしたことは言ってない。
ユウは知らなくていい。心配かけたくない。
ユウはいつも通りの仏頂面で、俺の隣にいればいい。
ただ、それだけで、いい───
こうして、俺達二人だけが、この屋上を使ってるってわけだ。
「ここ、最初はヤンキーが使っていたな」
ユウがぽつりと呟いた。
まさか、同じことを考えているとは思わず、少し笑ってしまった。
「なに笑ってるの」
すると、不機嫌そうな顔で、ユウが聞いてきた。
俺は少し、口角を上げたまま、
「なんでもねぇ」
と言った。隣から「なんでもないのに笑うとかキモい」って聞こえてきたから、俺の肩口くらいの高さにあるユウの頬を引っ張ってやった。
「いひゃい…はなひぇ…」
コイツの頬、意外と伸びるな。それにやわらかい。と、感心してると…
ドスッ
「うぐっ…」みぞおちに一発やられた。
「自業自得。」
ユウはジト目でこっちを一瞥した。
更には、まるで何もなかったかのように寝転がり、寝ようとしていた。
「もうすぐ始まるぞ」
腹をさすりながら、俺はユウに言った。
「騒いだら眠くなった。」
ユウは授業などもはや気にせず、己の欲望のまま、完全に睡眠モードに入った。
当然、俺もコイツの横に寝転がり、寝ようした。
が、その前に…
「風邪引くだろーが」
ブラウスとベストで寝てるコイツに、己のブレザーを掛けた。
そして、改めて横になり、ユウと向き合う形で眠りについた。
最近、シズクが甘くなってきた。
もっとユウ対して変態なシズク書きたい…!!