【第二話 葬儀―burial―】
アメリカ合衆国の中央に位置するネブラスカ州。
広大な平地を有し、州都のリンカーンや最大の都市オマハを離れると、のどかな田園風景や手付かずの大草原が広がっている。
だが逆に言うと、都心部を離れると自然以外は何もない。
そのせいで若者達が離れていき、過疎化に悩む田舎町の年老いた警官ドミニク・ベッセマーは、パトカーの中でブランデーを飲んでいた。
「ふぅ、今夜は特に冷えるな」
アルコールで体を温めながら、月明かりだけが差す暗い車外に目を移す。
場所は町の外れにある墓地で、活気のあった昔を思い出させるように、田舎町の割には広く墓の数も多い。
「まったく、面倒な事を頼まれたものだ」
ドミニクは愚痴りながら、再びブランデーを口にする。
真夜中、こんな所に居るハメになったのは、最近墓地に怪しい人影があるという目撃情報のせいだった。
墓荒らしなど断じて許せんと怒る、善良な住人達にせっつかれたドミニクは、仕方なく老体に鞭打ち見張る事となったのだ。
「ダニーの奴は役に立たんし」
二ヶ月前、不幸な事故で亡くしてしまった部下に代わり、配属されてきた新人。
彼は真面目で田舎暮らしも苦にしない、実に善い若者であるのだが、どうにも気が弱くて仕方ない。
墓荒らしよりも幽霊が恐ろしいらしく、仮病を使ってまで墓所の見張りを蹴ったのだった。
「先が思いやられるな……」
自分が退官した後、この町を守っていく若者を、どう鍛え直してやるか。
少し酔いが回った頭で考えていたドミニクは、視界の隅で何かが動いたのを感じ、ハッと顔を上げた。
「誰だっ!」
即座に老練な警官の顔に戻り、ドミニクはパトカーから飛び出る。
右手で愛用の回転式拳銃、S&W・M36チーフスペシャルを構え、左手のマグライトで前を照らしながら、慎重に何者かが居た方――墓所の中へと足を踏み入れていく。
(一人ならまだしも、複数だとマズいな……)
相手が銃を持っているかにもよるが、老体で多勢を相手にするのは流石に無理だ。
そう冷静に判断しながらも、勇敢に進み続けたドミニクは、墓所の中心近くでついに人影を視界に捉える。
「警察だ、両手を上げて地面に膝をつけ!」
墓石を幾つか挟んでいたため、ハッキリとした姿は見えないその相手に、銃口を向け叫ぶ。
だが、警告を受けても人影は止まる事なく、妙にゆっくりとした動作でこちらに近付いてきた。
「止まれ、でなければ撃つぞ!」
もう一度告げ、足下に向かって威嚇射撃を放つが、人影の遅い歩みはやはり止まらなかった。
次は当てる覚悟を決め、ドミニクは相手が近付いてくるのを待つ。
だが、マグライトに照らされたその顔を見て、驚愕のあまり凍り付く。
「お、お前が、何で……っ!?」
真っ白く血の気を失ったその顔は、とても見覚えのあるものだった。
二ヶ月前までは、共にこの町を守ってきた部下。
嘆きながらこの手で土をかけ埋めた僚友。
アンソニー・ハンプトン――事故で死んだ男の顔がそこにあった。
「あ…あぁ……」
白目を剥き、言葉にならない呻き声を上げ、近付いてくる元同僚。
寒い冬場だったおかげか、その体はまだ肉が崩れ落ちたりはしていない。
だが、皮膚の所々は虫に食われ、異臭を放つ黄色い腐液が滲み出ていた。
明らかに死んでいる。なのに、彼は動き声を上げ、命ある上司を妬み殺そうとするように、冷たく凍った足を踏み出し続ける。
「う、うわああぁぁぁ―――っ!」
ドミニクは勇敢に勤めた長い警察官人生の中で、初めて恐怖の悲鳴を上げ銃を乱射した。
◇
科学では解明されていない、常識では存在しないとされる未知の力、魔術。
それを使う魔術師と呼ばれる者達は、二つのタイプに大別される。
一つは、魔術という深淵を極めようと、研鑽と研究に没頭する者達。
そして、手に入れた力を悪用し、自らの欲望を叶えようとする者達だ。
一般に『正当』と言われる研究者タイプの者達は、『不法』と呼ばれる犯罪者達の事を、本心では何とも思っていない。
彼らにとっては研究が全て、自分達の邪魔さえしなれけば関係ないからだ。
だから、問題となるのは邪魔をする者達――『数』という絶対の力を持った、魔術を使えぬ普通の人々だった。
自分に理解出来ない危険な力を持った魔術師を、普通の人々が恐れ、妬み、そして排除しようとするのは、人間として当然の感情と言えよう。
その粛正から逃れ、ただ静かに研究を続けるために、正当魔術師達は結束した。
まずは魔術による協力(護符による守護、敵対組織への諜報活動など)を約束に、財界人と手を組む事で、権力による庇護と莫大な資金を手に入れる。
同時に、自分達の善性を示すために、悪しき不法魔術師達を狩る事にした。
そのために結成された組織が猟犬、『黒犬』。
彼らの多くは魔術など使えない普通の人間であり、だが純粋な肉体と近代兵器で魔術師を狩る事に特化した、手練れの傭兵達であった。
そんな黒犬の中では異色の存在である少女、エル・イリム・ワンは、道端にしゃがんで可愛らしい犬と見つめ合っていた。
「あらあら、お嬢ちゃん、この子が気に入ったの?」
「…………」
飼い主のご婦人が話しかけてくるのも聞こえない様子で、毛玉のように丸く白い犬を見詰め続ける。
「お前は何をやっているだ?」
電話中にまた勝手に離れていた連れを、ようやく見付けて駆け寄ってきた牧師風の男、ジョン・ルーザーが呆れた声をかけると、イリムはようやく顔を上げた。
「ジェイ、このモコモコした生物は何だ?」
「はぁ? どう見ても犬だろうが」
そう言うと、イリムは納得いかなそうに首を傾げる。
「犬とは三角形の耳を生やした、もっとスラリとした四足獣だろう? こんなモコモコではない」
「その理屈じゃあ、猫も虎も犬の仲間だろうが。ちょっと毛や体型が違うだけで、そいつはプードルっていう犬の一種なんだよ」
「なるほど。肌が白くても黒くても黄色くても、二足歩行の生物を人間と呼ぶのと一緒か」
「それは新手のブラックジョークか?」
この少女には風刺や冗談を生み出すだけの知識や常識がない事を、ジェイは嫌というほど知っていたが。
そんな二人を微笑ましく見守っていた婦人に、何とも気まずい苦笑を浮かべて別れた後、魔術師狩りの男は真顔に戻り、最強の武器である少女の肩を叩いた。
「行くぞ、新しい仕事が入った」
「分かった」
挨拶だけは素直で結構だな――と口の中で呟きながら、ジェイは近場の駅へと足を向けた。
電車で空港に向かい、飛行機を下りてからレンタカーを走らせ、半日かかって到着したネブラスカ州にあるその田舎町で、イリム達を出迎えたのは、疲れ切った顔の老人だった。
「本当に、本当に死体が動いたんです!」
人口千人程度のこの町で、たった二人しか居ない警官の一人、ドミニク・ベッセマーは明らかに白髪の増えた頭を抱え、恐怖に取り乱して訴えた。
「町民の中には私をホラ吹きと蔑み、墓荒らしの犯人だと言う者までいます。ですが主に誓って誠に、死体が独りでに動いたのです!」
そんな必死の訴えを余所に、イリムは普通の一軒家と大して変わらない、小さく狭い警察署の中を見回して呟く。
「汚いな」
「安心して下さい、俺達は貴方の話を疑ってなどおりません」
素直な感想を漏らす連れの頭を小突きつつ、ジェイは十字架を手に、ことさら穏やかな声でそう告げた。
「この世には常識で計れない事など無数にあります。主の存在がそうであるし、主に仇なす悪霊もそうです。今回の事はそれが原因でしょう」
普段はFBI捜査官という、本物と同じ権限を与えられた偽物の身分を名乗るジェイだが、今回はこちらの方が都合が良さそうだったので、牧師の演技を貫く事にしたのだ。
もっと、実際の彼は無神論者であり、こんな時の小道具としてしか十字架を扱わない、罰当たりであったのだが。
「警察官の仕事はあくまで悪人を捕らえる事です、悪霊の相手は我々に任せて下さい」
「おぉ、ありがとうございます牧師様」
ペテン師の演技にすっかり騙された老警官は、感激と安堵のあまり祈りだす。
ジェイの本性を知る者が見たら、腹を抱えて笑いそうな光景だったが、この場に居る唯一の観察者は、笑いの感性を持たない無知で無垢な少女だった。
「それで、動き出したというその遺体ですが、もう埋め直してしまいましたか?」
「いえ、ここにあります。正直に言えば、直ぐにでも埋めて忘れてしまいたかったのですが、詳しく調べるべきだと思ったので……」
恐怖に駆られていても、警官としての本分は忘れなかったという事か。
ドミニクの手際に感謝し、ジェイは死体の検分を求めた。
老警官は了解し、彼らを建物の地下へと案内する。
そこは、鉄格子の填った小部屋が並ぶ、ろくに使われた事のない留置場だった。
「アンソニー・ハンプトン、二ヶ月前まで私の同僚でした」
檻の中で固いベッドに横たわった三十歳ほどの男は、なかなか整った顔立ちをしていたが、それも鼻を突く異臭の前では何の意味もなかった。
「死因は何でしたが?」
「交通事故です。休暇でリンカーンへ遊びに出ていたさいに、トラックと衝突してしまって……」
相手の不注意による純粋な事故であり、事件性はなかったという。
遺体の側頭部を注視すれば、死因となったのであろう陥没痕が、死化粧で隠されているのに気付く。
「孤児で身寄りもないという話なので、私達が遺体を引き取り、この町に埋葬したのです」
「そうですか、大変でしたね」
適当な慰めを口にしつつ、ジェイは遺体の胴体に空いた、四つの穴に目を向ける。
「これは貴方が銃で撃ったものですね?」
「はい、ですがアンソニーは動きを止めませんでした……」
問われた老警官は、当時の恐怖を思い出して青ざめる。
「私は恥ずかしくも元同僚に背を向け、逃げ出してしまいました」
そうして、パトカーに乗り墓所から離れた彼は、この町で唯一の教会に駆け込んだ。
「牧師様に全てを話した後、騒ぎを聞いて起き出した町の男達二人も連れ、恐る恐る墓場へと戻ったのです」
そうしたら、アンソニーは元の動かぬ遺体となって、墓場の中で倒れていたのだという。
「彼の墓には、蓋をこじ開け土を掻き分け、自力で這い出してきた跡までありました。これがただの墓荒らしや幻覚であるものですか!」
その騒ぎが黒犬の情報網に引っ掛かり、こうして牧師のふりをしたジェイ達が派遣されてきたという事だった。
「これは黙示録の予兆なのではないかと、恐ろしくて仕方ありません……どうかなにとぞ、我らをお救い下さいませ」
手を合わせて膝を付き、祈り始めるドミニクに、ジェイは心の中で溜息を吐きつつ、死体に手を伸ばす。
(交通事故と銃弾以外の傷は無いな……)
異臭に鼻を曲げつつ、特に首筋を調べてみたが、二つの小さな穴――噛み傷のようなモノは見当たらない。
(とりあえず、最悪の可能性はなしか)
魔術師達すらオカルトと存在を怪しみ、そうでありながら恐れる真の化け物――吸血鬼と呼ばれるモノの痕跡は見当たらず、ジェイは安堵しつつ連れの方を窺う。
少し離れた所から、色違いの瞳を死体に向けていたイリムは、無言で小さく頷き返す。
それで確証を得たジェイは、まだ祈り続けていた老警官を立たせ、留置場を後にした。
◇
観光客も来ないような田舎町で、宿屋もろくにないらしく、警察署に泊めて貰う事にしたジェイ達は、拝み続けるドミニクを自宅に帰した後、ようやく肩の荷を下ろしていた。
「あー、疲れた……」
善人面を維持するのが余程堪えたのか、ジェイはソファーに腰掛けながら、首をゴキゴキと鳴らす。
その横で、イリムは一つしかないベッドの前に立ち、修道服に手をかけた。
「ジェイ、あれは魔術による『動く死体』で間違いない」
「生物兵器災害じゃなくて助かったな」
子供の裸に興味はない――という理由にしても、少々異常だと思える速度で、ジェイは少女の着替えから目を逸らしつつ頷く。
「本来のゾンビ――ブードゥー系かどうかは知らんが、魔術師の仕業だというなら、見つけ出して叩くだけだ」
それが彼ら黒犬の仕事。
「銃で撃たれたにせよ、動き出した死体が勝手に止まったというのが気になるが……術者が離れたせいか?」
警官に姿を見られた魔術師が、驚いて逃げ出してしまったせいで、術が不完全だったのだろうか。
もしそうなら、手際の未熟さから考えて、今回の犯人は御しやすい相手だろう。
「楽な仕事だな。人口も少ないから、犯人も直ぐに見付かるだろう」
ジェイはそう楽観的に述べた後、少女に背を向けながらソファーに横たわり、「早く寝ろ」と手を振る。
下着と左手の小手だけとなったイリムは、言われた通り大人しくベッドに入りながらも、口は閉ざそうとしなかった。
「ジェイ、魔術師は何故、死んだ人間をゾンビにするんだ?」
「俺じゃなく魔術師に聞けよ」
面倒臭そうに言い返しつつ、ジェイは少しの間を置いて語り出す。
「まず考えられるのは、『出来るかどうか試したかったから』だろうな」
力を得た者は、それで何がどこまで出来るのか、限界を突き止めたくなるものだ。
その実験として、絶対不可逆とされる『死』に挑むのは、ありふれた話だろう。
「次に、『手駒として死なない人間が欲しい』というのもあるだろう」
農作業のように単純で過酷な作業から、兵士のような死に直結する仕事まで、疲れを知らず死ぬ事もなく、命令通りに動く人形というものは、使う者からすれば最高の駒だ。
極論すればゾンビとは、有機物で構成され動力がオカルトパワーなだけで、作業用ロボットと変わりない。
「あとは――死んだ人間を蘇らせたかったから、だろうな」
真っ先に思い浮かぶであろう事を、あえて一番最後に回し、ジェイは素っ気なく言い放つ。
「そうか……」
納得したのかどうか、眠たげな返事を漏らすイリムに、ジェイは「もう寝ろ」と繰り返し、部屋の明かりを消す。
そうして暫く経った後で、まだ起きていたイリムは呟いた。
「ジェイは、蘇らせたい人間はいるのか?」
「いねえよ」
一瞬の逡巡さえない即答が、果たして嘘か真か、人生経験の乏しい少女には判別する方法も、そもそも疑うという思考さえない。
「そうか……」
だから頷き、今度こそ目蓋と口を閉じて、羊の代わりにモフモフとした白い犬を数え始めた。
◇
次の日、朝食を終えたイリム達が向かったのは、動く死体の第二発見者が居る、町で唯一の教会だった。
「主の教えを説くために旅をしている、ジェイという者です。この度の災難を聞き、微力ながらお力になれればと思い、立ち寄らせて頂きました」
「おぉ、これはお若いのに感心な」
礼儀正しいジェイの演技を、頭の剥げ上がった牧師は鵜呑みにし、連れのイリムにも優しい笑みを向ける。
そんな人の良い牧師と、当たり障りのない挨拶を交わしたあと、ジェイは滑らかに本題を切り出した。
「それにしても、迷信深いカトリックのように、悪霊だ何だと騒ぎたくはありませんが、まさか遺体が勝手に動き出すとは」
「敬虔な信徒、ドミニクの言葉を疑いたくはありませんが……」
悪魔祓いなど中世的で非合理的だと、懐疑の視線を向けるプロテスタントの牧師は、困った様子で口を濁す。
アンソニーの遺体に悪霊が取り憑いたのは、葬儀を行った彼の不手際だなどと、責められたくない気持ちもあるのだろう。
あくまで墓荒らしのせいにしたそうな空気を感じ取り、ジェイは巧みに方向を転換する。
「えぇ、遺体を掘り出した何者かが、黒い服でも着て背後から操り、それを見たドミニクさんはすっかり騙されてしまったのでしょう」
「まったく、悪戯にしても度を超えていますな」
「ジェイ、あれは魔――」
「本当に、けしからん奴らです」
空気の読めないイリムの口を手で塞ぎつつ、ジェイは何度も頷いた。
「それにしても、墓荒らしは何故アンソニーさんの遺体を狙ったのでしょうね。彼の後に亡くなられた方がいらっしゃると聞いていますが?」
黒犬の本部から得て、老警官に確認も取った情報によれば、ほんの二週間前にも一人の町民が埋葬されている。
「リチャードですね、八十九歳まで生きられた元気な方でした」
友人だったのか、懐かしむように頷いて牧師も肯定した。
それを受け、ジェイは疑問を口にする。
「失礼な話ですが、二ヶ月も前に亡くなられたアンソニーさんよりは、まだリチャードさんの方が掘り起こすのに抵抗はないですよね?」
「えぇ、もっともな話です」
二ヶ月経過して腐敗した遺体を、この目で見ている牧師は、思い出して顔をしかめながらも同意する。
ジェイはそこへ、確信となる質問を告げた。
「ですから犯人は、アンソニーさんに対して特別な恨みを抱いているのではないかと邪推したのですが……彼は恨まれるような人物だったのでしょうか?」
「そうだったのか?」
横で聞いていたイリムも首を傾げ、答えを求めると、牧師はまた困った表情を浮かべた。
「彼はシカゴの生まれとかで、田舎暮らしに慣れず苦労していたようですが、善い若者でしたよ」
「そうか」
最後の台詞が過剰なお世辞である事を、イリムは全く気付いた様子もなく頷く。
ジェイの方は正しくそれを理解した上で、穏やかに探りを入れる。
「シカゴ生まれのハンサムな警察官ですか、随分と女性に人気があったのでしょう?」
「えぇ、スザンヌとお付き合いを始めた時には、町の男達に随分と冷やかされたそうですよ」
「恋人がいらっしゃったのですか、それはお気の毒に……」
ジェイが顔を曇らせると、牧師も同様の表情を浮かべる。
「結婚の約束もされていたようで、可哀想な話です」
「本当ですな」
ジェイは頷き、さり気なく恋人の住所や何やらを聞き出した後、出来るだけ早くアンソニーを再び埋葬するよう、ドミニクに掛け合ってみると言って牧師に別れを告げた。
そうして教会を離れ、誰も見ていないのを確認してから、エセ牧師は盛大な溜息を吐いた。
「こいつで決まりだな、何とも浅い結末だこと」
「何がだ?」
まるで分かっていないらしく、首を傾げて尋ねてくるイリムに、ジェイは何とも言えない表情を向ける。
「死んだ恋人を生き返らせたい……魔術にのめりこむ理由として、これ以上分かり易いものはないだろ」
深い悲しみは時として狂気を呼び、狂気は常識を覆す力を生む。
その果てに待っているのは、さらなる悲劇でしかないというのに。
「西暦の以前から繰り返されてきた、つまらん三文芝居だ」
そう吐き捨てるジェイの顔が、言葉とはまるで逆の形に歪むのを、イリムの色違いの瞳だけが見詰めていた。
◇
目的の家に辿り着き、チャイムを押した彼らの前に現れたのは、眼鏡をかけた金髪の女性だった。
「すみません、私はジェイという旅の牧師ですが、貴方がスザンヌさんですか?」
そう言うと、現れた女性は少し表情を固くし、首を横に振った。
「いえ、私は妹のロレッタですが……」
「妹さんでしたか、失礼しました。私はシカゴでアンソニーさんと面識がありまして、遅くなりましたが彼の訃報を知り、足を運んでみたらおかしな噂を聞きまして、彼の恋人だったというスザンヌさんが、心を痛めていないかと心配し、お窺いさせて頂いたのですが」
「はぁ、そうでしたか」
追い返されないうちにと、ジェイが早口にそうまくし立てると、眼鏡の女性――ロレッタは少し不審そうにしながらも、子供を連れているから安心したのか、彼らをリビングへ通してくれた。
「コーヒーでいいですか?」
「美味しくないから嫌だ」
「こら、イリム!」
勧められたソファーに座り、正直に告げる修道女姿の少女に、ロレッタは微笑を浮かべ、オレンジジュースを出してくれる。
「オレンジの果汁か、甘いからこれは好きだ」
「そう、お口にあって良かったわ」
「リンゴの果汁はもっと好きだ」
「お前は遠慮という言葉を知らんのか?」
「じゃあ、お代わりはリンゴジュースにするわね」
つい素を出してしまったエセ牧師の横で、遠慮無くジュースを飲み干す少女の愛らしさに、ロレッタはまた目を細める。
そんなイリムの思わぬ手柄により、十分に警戒がほぐれた所で、ジェイは改めて用件を告げる。
「それで、スザンヌさんはいらっしゃらないのですか?」
何時までも呼びに行く様子がないのでそう問うと、妹はまた表情を固くした。
「いえ、姉は家に居ますが、あの事件の後、部屋から出てこなくなってしまったので……」
「そうだったんですか」
恋人の死がそれほどショックだったのだろう。
見た目は痛ましそうに頷き返しながら、ジェイは確信を深めていく。
(それだけの情念と、二ヶ月もの期間があれば、眠っていた才能が目覚めるには十分か)
死者の完全な蘇生という、神以外は成功していない奇跡はともかく、死体をただ動かす程度までなら、辿り着くのも不可能ではないだろう。
あとは確かな証拠、魔術の痕跡を掴むだけだが、生憎と普通の人間である彼は、不可視の力を見透かす術など持たない。
なので、色違いの目を持つ連れを伺うと、彼女はリビングの奥にあった本棚を凝視していた。
「うん? 本が気になるの」
すっかりイリムが気に入った様子のロレッタは、姉の話題を続けたくなかった事もあってか、ソファーから腰を上げ本棚へ歩み寄る。
「貴方が気に入るようなコミックじゃないわよ、ほら」
背表紙が厚く豪華な一冊を取り出し、パラパラとページを捲ってみせるが、小難しそうな単語が並ぶばかりで挿絵の一つもない。
「それは貴方が買い集めた物で?」
イリムの意を察し、ジェイが尋ねてみると、ロレッタは首を横に振った。
「いえ、これは亡くなった両親の物なんです。根っからのトウモロコシ農家だったのですが、二人揃って本を読むのが好きで、古書なら何でも集めていたんです」
「晴れた日は大地を耕し、雨の日は読書に勤しむ。健全な生き方ですね」
少なくとも人殺しよりはマシだろうと、心の中で自嘲するジェイに反し、ロレッタは首を大きく横に振った。
「それ以外の生き方を知らなかっただけですよ」
その声には、この町で生まれ、この町から出ず、広い外の世界を知る事もなく死んだ者に対する、侮蔑が含まれているように感じた。
だが、ジェイは気付かなかったふりをして世間話を続ける。
「ご両親も亡くなられていたのですか。では、もう畑はやっておられないので?」
「姉が頑張って跡を継いでいたのですが、この様子だと来年は……」
収穫を終え雪に埋もれた畑は、春が来ても耕される事はないのだろう。
それは流石に寂しく思うのか、ソファーに戻ったロレッタは暗い表情をしていたが、その手は白く綺麗で、農家のモノではなかった。
(畑を継がされた姉と、家を飛び出た妹ってところか)
恐らく、姉を心配して帰省しているだけで、本来は街の方にでも住んでいるのだろう。
そんな、仕事とは無関係な事柄が透けて見えてしまい、ジェイは内心で溜息を吐きつつ、当たり障りのない事を話してから、お暇を口にした。
「随分長居してしまいましたね、そろそろ失礼致します」
「ジュース、美味しかった」
「いえいえ、お気になさらず」
ロレッタは礼を告げるイリムの頭を撫で、玄関まで見送ってやる。
そこで思い出したように、ジェイは一言付け加えた。
「アンソニーさんの御遺体ですが、明日にも埋葬しなおす事になると思います。その時は顔を出して頂けるよう、お姉さんにお伝え下さい」
「はい、伝えてはおきます」
きっと、出てはこないだろうが。
その言葉は呑み込むロレッタに手を振り、二人は背を向けた。
「……本、ヤバイのが紛れていたか?」
いくらか離れてから、小声でそう呟いたジェイに、イリムは深く頷き返す。
「本棚のは弱い。だが、奥の方から強い力を感じた」
その方向に、引き籠もった姉の部屋があったのだろう。
「ジェイ、引き返して乗り込むか?」
「アホ、それじゃただの強盗だ」
迅速だが目立ちすぎる方法を提案する連れに、ジェイは軽く拳骨を見舞う。
「誘い出して叩くさ、既に餌は撒いた」
決着はおそらく、明日の夜には着くだろう。
だというのに、彼はまるで浮かない顔をして天を仰ぐ。
「本当に、救いようのない三文芝居だ」
「何がだ?」
魔術は見抜けても、人の心は見抜けぬ色違いの瞳に見上げられ、ジェイは何も答えず警察署に向けて歩き出した。
◇
怯える老警官の前で、悪魔祓いの真似事をして安心させたあと、蘇った死体は再び土の中へ埋められる事となった。
その場に参加した町の者は、牧師と警官二人、そして恋人の妹であるロレッタだけだった。
参列客が少ないのは、件の噂で気味が悪かったのか、元より町民達から好かれていなかったのか、それは余所者たるジェイ達には分からない。
ただ、粛々と二度目の埋葬は終わり、ジェイは関係者達に挨拶を告げ、車に乗って町から去っていった。
無論、それもただの演技にすぎず、密かに墓地へと戻っていたのだが。
「寒っ、今日は冷え込むな」
墓地の端にある木陰に隠れたジェイは、数日前の老警官と似た台詞を口走る。
その横に腰掛けたイリムは寒さを感じていないのか、目蓋を閉じ微動だにしない。
死体よりも静かなその顔が動いたのは、半月が真上を通り過ぎた頃だった。
「来た」
短く告げて立ち上がり、歩き出した少女の後を、ジェイも黙って追いかける。
向かった先は、昼間にも来た場所。
そこに、金髪の女が立っていた。
顔は一度見たものに似ていたが、眼鏡はかけておらず頬はやつれている。
そして手には、常人であるジェイですら肌が粟立つような、禍々しい空気をまとった本が握られていた。
一々確認するまでもなく、彼女がロレッタの姉であり、死んだ男の恋人だった。
「やめておけ、スザンヌさん」
背後から急に声をかけられて、金髪の女――スザンヌは勢いよく振り返り、血走った目をジェイ達に向けてくる。
「何よ、あんた達も私の邪魔をする気?」
「邪魔じゃない、忠告しに来たんだ」
「忠告ぅ?」
真面目なその台詞に、スザンヌはせせら笑うような表情を浮かべる。
だが構わず、ジェイは喋り続けた。
「そいつを捨てろ、でないと死ぬぞ」
指差したのは、彼女が持つ禍々しい書物。
魔導書――そう呼ばれる本の形をした魔術の遺物。
その用途は大きく二つに分けられる。
後進を育成するため、自らの秘術を書き残した物。
そして、面倒な詠唱や魔法陣を省くため、魔術の発動媒体としてまとめた物。
彼女が手にしているのは後者であり、より危険なのもそちらであった。
「そういう魔導書って物は、大して才能のない奴にも、魔術の奇跡を示してくれる凄い物らしいな。だがな、旨いだけの話なんてこの世には存在しない」
大きなリターンを得るために、相応のリスクが必要なのは、魔術の世界でも同じ。
魔導書は才能が足りない分の負債を、容赦なく血肉として取り立てる。
「そいつはあんたの命を削る。だが、死体を動かせるようになるだけで、死者が本当に生き返ったりはしない」
死者の蘇生、永遠の生命、究極の真理。
そんなお題目は、たとえ魔術なんて不可思議な力であろうとも、決して届きはしないのだから。
「あんたの恋人は、何をしようと戻っては来ない」
魔導書さえ捨てされば、大して魔術師の才能もなく、警官を脅かす事になっただけで、大きな罪を犯していない彼女は、まだ普通の生活に戻る事が許される。
「だから、諦めろ」
そして、死者への未練を捨て、明日を見ろ。
自分でもらしくない説教だと思いつつも、ジェイはそう真面目に言い切る。
なのに、それ聞いたスザンヌは、ケラケラと狂った笑い声を月夜に響かせた。
「何の勘違いをしてるの? 私がいつ、こんな男を生き返らせたいと言った!」
急に怒声を張り上げ、彼女は恋人の墓石を踏みにじる。
「……っ」
予想とまるで反するその姿に、流石のジェイも言葉を無くし、それを見たスザンヌは愉快そうに顔を歪めた。
「こいつはね、私を捨てたのよ? 散々愛していると囁いて、何度も何度も抱いて、『結婚したら警官を辞めて一緒に畑を耕すよ』なんて言っておいて、余所に女を作っていたのよっ!」
足の骨が折れるのではと心配になるくらい、墓石を蹴り続ける女の目は、憎しみの炎で焼き尽くされ、最早涙が流れはしない。
そんな相手に、事実なのか、証拠はあるのかと追求する意味はもうない。
「お笑いだわ、田舎娘が都会育ちの男に騙されるなんて、今時ドラマですら見やしないのに。ほら、あんた達も笑いなさいよ!」
「……笑えねえよ」
ジェイは職業的な人殺しではあっても、血を吐くような女を嘲笑える、心底の外道ではなかった。
だがスザンヌは、そんな同情こそが許せぬと、墓石に唾を吐き捨てる。
「あんたら男共はみんなそうよ。君に僕はふさわしくない? もっと素晴らしい人が待っている?……ふざけるなっ! こんなガラスの靴も似合わない田舎の芋娘を、何処の王子様が向かえに来るって言うのよ!」
彼こそが、この歳になってようやく出会えた、運命の王子様だと思っていたのに。
男は浮気をし、勘付かれて別れを切り出し、そして決着をつける前に事故で死んだ。
「勝手に口説いて、勝手に抱いて、勝手に捨てて、勝手に死んでっ!」
好き放題に彼女を玩んだ男は、もう手の届かない所に行ってしまった。
だが、彼女は見つけ出した。
両親が知らず残した魔導書という、死者を連れ戻すカボチャの馬車を。
「勝手に生きてきたんだもの、死んだ後くらい、私の勝手にしてもいいじゃないっ!」
理屈などとっくに捨て去ったスザンヌが、狂気の雄叫びを上げた瞬間、手にした魔導書が独りでに開き、ページから赤い血のような光が漏れ出す。
「くそっ!」
ジェイが舌打ちして拳銃を引き抜いた時には、墓所のいたる所から地響きが鳴り始めていた。
ドンドン、ザッザッ。
木の蓋を叩き、土を掻き分け、暗い地下の世界から戻ろうとする死者達の足音。
「あはははっ、まずはあいつの浮気相手よ。腐ったあいつに犯させながら、一緒に地面へ埋めてやるわ! その次は私を笑った町の奴ら全員、死ぬまで骨と踊らせてやろうかしら!」
牧師の様子を見る限り、町の人々が彼女達の破局に気付き、嘲笑っていた可能性は薄い。
だがもう、魔導書の毒に当てられた女には、被害妄想と現実の区別がついていなかった。
「……イリム、頼む」
諦め、感情を消した声で告げるジェイに、黙って見守っていた修道服の少女は頷き返す。
「分かった」
そして走り出したイリムの前で、埋めたばかりで柔らかかった土が弾け飛ぶ。
表れた全ての元凶、アンソニー・ハンプトンの死体に向け、後方からジェイの銃弾が飛ぶ。
十発以上の鉛玉を受け、元はハンサムだった顔が跡形もなく弾け飛ぶが、元より死んでいる体がその程度で倒れる事はない。
だが、元恋人の意識を逸らすには十分だった。
「アンソニーッ!」
愛情か憎しみか、判別のつかぬ叫びを上げるスザンヌの前に、イリムが死体の横をすり抜けて辿り着く。
そして、小手をまとった左腕で、彼女の手から魔導書をはじき飛ばした。
「あっ……」
毒気を抜かれた声が漏れるなか、宙を飛び地面に落ちる魔導書。
そこには、軌道を読んだジェイが先回りしていた。
素早く弾倉を代えていた彼は、何の躊躇いもなく貴重な魔術の書に鉛玉の雨を降らせる。
「あああぁぁぁ―――っ!」
上がった悲鳴は持ち主のものだったのか、それとも魔導書のものだったのか。
無数の穴を空けられたうえ、ご丁寧にジッポライターで火を点けられた魔導書は灰になり、降り始めてきた粉雪に混じって消えた。
地の中から這い出そうとしていた音も絶え、残ったのは頭を失った死体と、それに縋り付く哀れな女。
「あぁ、あ~っ!」
半開きの口から涎を垂らし、腐った元恋人の死体を叩くスザンヌの顔は、怒りも憎しみもなく、そして己すら無くなった純粋無垢な笑みを浮かべていた。
「精神を喰われたか……」
才能がない者が代償として取り立てられたのか、魔導書が持ち主を道連れにしたのか、それとも、これだけが残された幸福への道だと、彼女の狂気が導き出したのか。
答えはもう、誰にも分からない。
「イリム、こいつを車の中で見張ってろ。俺は死体を埋め直す」
「分かった」
「あ~、あぁ~っ!」
嫌々とぐずる赤子のようなスザンヌを、墓地の外に停めていた車に押し込んだ後、ジェイは軍用の折りたたみスコップを手に墓所へ戻る。
「死んでまで迷惑をかけるんじゃねえよ、クソ野郎」
大人しく寝ていた死体を切り刻み、野良犬にでも食わせたい気分だったが、動物虐待は趣味じゃないので、彼は大人しく土を掘り返し始めた。
◇
三度目の埋葬が終わったのは、空が白み始めた頃だった。
住人達が起きぬようにと、静かに町の中へ車を走らせたジェイ達は、再び姉妹の住んでいた家を訪れる。
「はい、何でしょう」
起きていたのか、しっかりした声で表れたロレッタに、ジェイは壊れた姉を押し付ける。
「あんたの姉さん、浮気していた恋人に復讐しようとして、魔術に手を出して壊れたから」
「壊れたって……」
前にあった時とはまるで違う、粗野な言葉遣いと意味不明な説明に、ロレッタは最初困惑したものの、抱き付いてきた姉の無邪気な笑顔を見て、全て察したように頷いた。
「そうですか……」
「なぁ、一つ言わせて貰っていいか?」
物わかりが良いその態度で、改めて確信したジェイは、抑えられず口を開く。
「あの男が浮気していた相手、あんただろ?」
「…………」
驚きのない沈黙は、何より雄弁に肯定を示していた。
「あんた、農作業をしている手じゃない、街で事務職でもしていたんだろ。家はリンカーンか?」
浮気者が交通事故に遭うほど、休みの度に通っていた場所。
そこに身内の妹が住んでいれば、関係を疑わない方がおかしい。
「あの男、元は大都会のシカゴ育ちなんだってな。そんな奴がこんな田舎に飛ばされるなんて、何をやらかしたか分かったものじゃない」
犯罪者と不正取引でもしていたか、上司の妻にでも手を出したか。
調べれば、ろくでない事情がボロボロと出てくる事だろう。
「悪い男から愛する姉を守る気だったのか? それとも、ろくでもない男でも、憎い姉から恋人を奪うのが楽しかったのか?」
「…………」
問われた妹はただ黙り、凍り付いた表情からは何も窺えない。
「眼鏡が本好きなんて決めつける気はないが、あんた、姉の持っていた本がヤバイ事くらい勘付いていただろう?」
「…………」
この問いにも無言。もう答えは何も得られないのだろう。
そして、真実が分かったところで、誰も得などしないのだ。
事件の首謀者であり被害者でもある女は、もう何も分からなくなってしまったのだから。
「そいつの世話、あんたがしろよ」
「…………」
「あ、あぁ~」
言い捨て背を向けたジェイに返ってきたのは、変わらぬ妹の無言と、壊れた姉の無邪気な声だけだった。
そうして彼らは車に乗り、今度こそ町を去る。
何も言わずにいたイリムが、ようやく口を開いたのは、町の姿が地平線に消えた後だった。
「ロレッタはジュースをくれたのに、悪い奴だったのか?」
「お前が人さらいに遭わないか、俺は心配だよ」
間の抜けた発言に、ジェイは固くなっていた顔をようやく緩め、前を見たまま喋りだす。
「人間ってのは色々な側面を持っていて、簡単に悪だ何だと決めつけられやしないさ」
勇敢な老警官が、動く死体を見れば神に縋り付き。
穏やかな牧師が、人の言葉を迷信と決めつけ。
一人で畑を切り盛りしていたしっかり者の女が、あっさり悪い男に騙され。
子供に優しい妹が、姉の恋人を奪い取る。
「お前には善い奴だったが、他の人間には悪い奴だった。それだけの事だ」
「むぅ……」
あっさりと告げられたジェイの言葉に、イリムは珍しく表情を動かし、頭を左右に捻る。
「人間とは複雑な生き物だ、という事か?」
「正解だ」
悩み答えを導き出した連れの頭を、ジェイは軽く撫でてやりながら、雪に埋もれた畑だけが続く道を、車で走りすぎていった。
後日、ある町の姉妹が突如として姿を消した。
彼女達がどこへ行ったのか、生きているのかどうか、それはまた別の物語。