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大結界

真っ暗な闇の中、俺と婆ちゃんだけが其処に立っていた


意識は覚醒と虚ろの合間を行き交っている


なんとなく婆ちゃんに再会できた喜びの感情が俺を満たす


「キー坊や」


「何婆ちゃん?」


やっと会えた・・・これからは俺が守るよ!何でも言ってくれ!


「死んでくれ」


「え、あ?」


俺は婆ちゃんの為なら・・・俺に死んで欲しいの?


「頼むから・・・死んでくれ」


「分かった」


婆ちゃんが望むなら俺は死


「駄目だ!」


強い光が俺を満たし


赤い輝きが婆ちゃんを貫く


「そんな事許さない!」


「何処までも・・・儂の邪魔を・・されると言うのか!」


婆ちゃんはその姿を変え若い男の姿へ変化する


ああ・・・そうだ・・俺の婆ちゃんが、そんな事望む訳がねえ!


体中から光が溢れ暗闇を塗り潰していく


白くなる意識の中で、断末魔の叫びを聞いた気がした・・・




「お父さん!」


「はいよっ!」


目を覚ますと目の前にティーナがいた。傍にわんこが控えている。


記憶は少し錯乱気味だが、婆ちゃんが偽物だった事だけはハッキリ分かる、クソッ!

周囲は沢山の魔物の死骸がある。リザードマンやスケルトンにレッドベア等全く統一性がない・・・何だったんだコイツ等は?


「ティーナが助けてくれたのか?」


「ううん、来た時には皆死んでた」


「そっか・・・でも有難うな」


「うん!」


よく分からんが婆ちゃんとティーナに助けられた気がしたしな・・・さてどうするかな?


「村の様子は分かるか?」


「全員魔物だよ、私達を殺す気みたい、逃げ切るのは難しいかも」


俺の傷は治ってはいるが、血を失いすぎた。少し休む必要があるか・・・


「ティーナこっちだ」


「うん」


俺達は光る洞窟に向かった・・・多分あそこなら


「うわぁ~、凄いね!」


感嘆の声を上げキョロキョロするティーナとその後ろをトコトコ付いて行くわんこ


何事もなく美人のお姉さんがいる場所までたどり着いた。


『まだ何か用か』


「ちょっと怪我しちゃってね、少し休ませて貰おうと思って」


恐らく魔物は此処に入ってこれない筈だ、休む前に散らばる骨を纏めて倉庫に入れていく、恐らく俺みたいに騙されてここに来て闘いを選択し死んでいったのだろう、早とちりの人ばっかだったんだな・・・後で埋葬して供養しよう。

ティーナとわんこがじゃれ合ってるのを横目に俺はお姉さんに名乗った。


「俺はキールあれが娘のティーナに飼い犬のわんこだ。お姉さんは名前あんの?」


『私はレアだ』


「色々聞きたい事があるんだけどいいかな?」


『・・・・・』


何かじーっと見られてるんだけど・・・なんだろ?恐ろしく[強い]事は分かるんだけど怖くないんだよね・・・。


『すまんな、どこかで会った気がしての・・・特に隠す事もない、好きな事を聞くが良い』


「じゃ遠慮なく、ここで何を守ってるの?」


『大結界を守ってる』


大結界・・・竜人がそんな事言ってたな。


「大結界ってなんなの?どれがそうなの?何でそんなのがあんの?」


レアが少し考える素振りをして答えた・・・どうでもいいが仕草の一つ一つに華があるな


『大結界とは物ではない、私がこの場所にいる事で発動している世界をずらす装置みたいなものだな、極論を言えば私自身が大結界と言ってもいいかもしれんな』


・・・・よく分からん事は分かったな。


『何でそんなのが在るのか、か・・・それは世界の歴史を紐解くのが良いだろうな・・・』


レアは語りだす。世界の形、その原初を・・・謡うように・・・嘆くように。



世界には人以外の種族が存在した



最強の肉体と力を持つ竜人種


不老の肉体と多くの眷属を抱える吸血種


森と共に生き森の中では絶大な力と魔力を誇る森の妖精種 


山と共に生き鍛冶と練成の妙技を持つ山の妖精種


自らの種以外全てを死か家畜へと追いやる全ての種族の敵対者の魔種


世界そのものである精霊種



大きな戦争があった。



その時代、世界は魔王率いる魔種に侵略されていた。


全ての種族の敵である魔王を倒すため全ての種族が協力し大規模な迎撃戦が行われた。


その力は絶大で徐々に情勢は引っ繰り返り、遂には魔王を倒すに至った。


魔王を失った魔種は力を失い、魔種は殲滅されていった。



世界は平和になると殆どの種は考えた、しかしそこに疑問を抱いた種族の王がいた。



それが人間の王、彼は他の種に比べ[人間]の余りの脆弱さに恐怖を覚えた。


ステータスの限界が他種に比べ圧倒的に低い

技術も他種族に比べ余りに低い

あるのは繁殖力だけ


このままでは人間は家畜となってしまう、そう考えた王は密かに人間以外の種を排斥する方法を調べ始めた・・・そして見つけたのが精霊契約


王は精霊契約に生命を捧げられる人間の育成を始めた。


それが精霊信仰の村、村人の生命全てを奪い精霊契約は完成した。


世界は二つに分たれた。


人種と、それ以外の種の世界へと


『私は契約によりここを離れる事は出来ない、私はここで私自身を守護していると言っても良いかもな』


「その契約はどうやって解約するの?この場所を破壊すれば良いとか?」


『それは不可能だ、私はここの地脈と繋がっている、故にこの地は私自身とも言える。破壊は出来ない』


「解約方法はあるの?」


『私が死ぬか、私の契約を強制的に解約するかだな』


「強制的な解約の方法は?」


『私と解約の契約を交わしても自分を無くさず、且つ死なぬ事だ』


なら覚悟は決まった。


「じゃあ俺と解約の契約を交わそう」


『何故?』


「こんな所に縛り付けられて面白くないでしょ?辛そうじゃん」


『キールは怖くないのか?貴方の行動で世界が大きく変わるかもしれないのに』


「俺はね、レアの事が好きになった。好きな人が無理やり閉じ込められてたら助けるよね?そこに気付かないふりして放っておくほうがずっと怖い」


『正しく理解してるのか?世界中の人間の平和と私一人を秤をかけているのだぞ』


「ん?精霊は世界そのものなんだろ?レアの方が重いじゃん」


『――――――』


「大体さ、世界中の人間と大事な人達どちらかしか救えなかったら」





俺は大事な人達を選ぶ





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