精霊信仰の村
俺は少し肩透かしを食った思いで村を見ていた。
ガウッ サッ
精霊信仰の村と言うからどんな大層な村かと思いきや
ガウッ ヒラリ
平々凡々な至って普通の農家を中心に暮らしてる村といった印象か・・・
ガウッ パシッ
・・・・
ガウッ バチン 「キャインッ」
隙を見ては、わんこが俺の喉元目掛けて飛びかかって来るんだが、なんだろねぇ?
「ティーナ、わんこが寂しいってよ、構ってやれ」
「うん、ゴメンねわんこ」
「くぅーん」
ティーナに両手で抱え込まれ大人しくなったわんこを見て俺は一つ提案する。
「一緒に村を遊んで回ってきたらどうだ?」
「うん、遊んでくるね!行こ、わんこ!」
「ガウッ」
踊るように駆けていく一人と一匹を見届け伸びをする、ほんじゃ俺は情報収集といきますか!早速近くを歩くお年寄りを見つけた。精霊について聞いてみよう。
「すいま・・・ば・・婆ちゃん!?」
「キー坊、よー来たの・・・立派になって!」
ええええええええええええ!?
「なんで婆ちゃんがここに!?」
「精霊様と契約したらこの村に住む事になるんじゃよ、キー坊ならここまで来てくれると信じとったぞ!」
「そおか・・・無事だったんか・・・良かった・・婆ちゃん!」
「おうおうキー坊はまだまだ泣き虫じゃのう」
婆ちゃんが俺の頭を撫でる
「ヴ・・スン・・・泣いてねえよ、俺は強い冒険者になった。もう婆ちゃんに心配させねえ!」
「ほ、ほ、嬉しい事言うてくれる、婆ちゃんに強い所を見せてくれるかの?」
「勿論!」
「それじゃ婆ちゃんの試験を受けてくれるか?」
「OK!」
「ついておいで」
俺は婆ちゃんの後ろを追って洞窟の中に来た。
「この奥にいる魔物を倒しておいで」
「余裕!」
俺は元気良く頷き奥へ進む、洞窟内は明るく、奥に行くほどその明るさは増していく、一番奥にたどり着いた時には、ここ本当に洞窟か?と目を疑ったね、洞窟の外に出たような気分だ。足元には沢山の砕けた骨で溢れかえっている。
其処に魔物はおらず、圧倒的な存在感を放つ[女]が仁王立ちしていた。
燃えるような赤い髪を後ろで束ね
輝く金色の瞳は力強く
白く輝く鎧を身に纏い
両手に白く輝く剣を持っている
「これが・・・・魔物?」
『私は魔物ではない』
おおぅっ!返事が帰ってきたよ、驚いた!!
「いやぁ、この洞窟に魔物がいるって聞いたんだけど・・・知らない?」
『この洞窟に私以外はおらんよ』
「実は魔物として試験してるとか・・・ない?」
『無いな』
「骨が転がってるけど何?」
『私はこの場所の守護者だ、襲いかかってくる者を対処していたに過ぎぬ』
「・・・そうなんだ場違いだね俺、帰るよ」
「ああ」
・・・・魔物いねえじゃん!?どうなってんだこりゃ?ともかく引き返すか・・・
戻ってくると婆ちゃんはおらず、1匹の魔物が居て俺に襲いかかってきたので、一刀のもとに切り捨てた。魔物ってこれか?婆ちゃんは無事か!?
「キー坊」
「婆ちゃん!無事だったのか、良かった・・・」
「ほ、ほ、心配せんでも大丈夫じゃ、では次の試験に行くぞ」
「どんと来い!」
俺は村の外れにある池に連れて来られた。
「この池の真ん中の底にある玉を取ってくるんじゃ」
「OK!」
潜水は自信ある!川は子供の頃よく潜ってたからな、5分は潜っていられる、余裕だな!池に入水し、玉の所まで歩いていく、泳がないのかって言われそうだが、川は浅いから泳ぐというより潜るなんだよな・・・つまり泳げない!剣の重みで重心は安定してるし歩きで十分だ!ガッチリ固定された台座に玉が置かれているな、ほいっとゲットだぜ!・・・おお!?玉を取った瞬間、何処からか現れた魔物が池を濁しながら襲いかかってくる、殆ど視界が塞がったな・・・!・・俺は斬馬刀を突き出し自分を軸に激しく回転する、一定以上回ると俺の頭上に渦ができ、徐々に足元まで渦は伸びていく、俺は周囲から水の圧力が消えた瞬間前方に一文字切りを放ち、引き裂かれていく池の隙間を駆け抜けた!
「婆ちゃん取ったよ!」
「ほ、ほ、キー坊頼もしくなったのう、次が最後の試験じゃ」
「婆ちゃんにそう言って貰えると嬉しいよ!最後もビシッと決めるね!」
俺が最後に連れて来られたのは、今までとは打って変わって異質な空間・・・嫌な感じがするな、まるで竜人を相手にしていた時のように・・・むしろあの時より・・・
「婆ちゃん、ここは?・・・婆ちゃん!?」
「すまんキー坊・・・油断した」
おいおい何で婆ちゃんが魔物に捕らえられてんだ!?しかも何だこの数!?気配感じなかったぞ?どうなってる!?
「キール・ライトニング、この[人間]を殺されたくなければ大人しく殺させろ」
どうする どうする? どうする!?
殺されてやるのは論外婆ちゃんの安全の確保が出来ない相手の魔物を殺すのも論外逆上して婆ちゃんが殺される可能性があるともかく今は防御と避けに徹するしかないが数が多過ぎる・・・多過ぎる!?
俺は襲いかかってくる魔物の攻撃をひたすら受けて避けて周りをわざと囲ませる
魔物の影から婆ちゃんを捕らえてる魔物にナイフを全速の投擲
同時に正面の敵をなぎ払い婆ちゃんのいる場所へ跳躍、ナイフは綺麗に頭へ的中!
俺は婆ちゃんを後ろに庇う・・・後は!
あ?あれ?何で俺の腹から剣が突き出てんだ?・・・・
血が・・・大量に・・・回復が・・追っつかねえ・・・俺が倒れたら婆ちゃんが
・・・・婆・・・




