選択
ハッと目が覚める。
布団の中には既に誰も居らず、少し寂しい気持ちになる。
シャワーを浴び、気怠げに服を着る。
昨日は凄かった・・・これでは立場が逆ではないかと苦笑する。
机の上には図ったように温かな食事とコーヒーが湯気を立てている。
コーヒーを一口飲んで、私は呟いた。
「本当いい男」
「おっちゃん!これ凄かったよ、お蔭でドラゴン討伐出来た。」
「おう!あんたなら出来ると思ってたよ、大したもんだ!」
俺はおっちゃんにお金を払う
「お?こりゃ60万あるぞ、多すぎだ!」
「ああ、連れの護身用にショートソード系の武器を見繕って欲しい、残ったお金は情報料として受け取ってくれ」
今回全てが上手く運んだのは、おっちゃんの御蔭だからな!
おっちゃんはガッハッハと豪快に笑いながら俺に右手を差し出す。
「俺の名はガンド・ロンド」
「俺の名はキール・ライトニング」
俺は差し出された右手を固く握る。
「早速だが連れの二人は一昨日一緒にいた子供たちの事か?」
「ああ」
「なら坊主の方はこれが良いだろう、50cmと25cmのショートソードだ。腰と背中に付けるといい、嬢ちゃんにはこれが良いな、クナイって言うんだが15cmのが二つに8cmが4つだ。」
「有難う!」
一目見ただけで、ここまで二人に合った物を選べるとは、流石ガンドだな!
「ところで・・・包んで貰える?ファンシーな感じで」
「キール・・・ここは武器屋だぞ!?」 ですよねー
呆れながらも律儀なガンドは包みに工夫を凝らして一寸ファンシーに仕上げてくれた・・・・荒縄のリボン・・・シュールだ。
俺はガンドに別れを告げ、クリスとティーナがいる宿屋に戻った。
今回クエストを受けたのはこの為と言っていいだろう。
「二人に大事なお話があります。」
「「はい」」
神妙な俺の態度に畏まる二人
「俺が二人を鍛えていたのは、自衛出来る様にするためで冒険者にするためじゃない、ここまではいいか?」
頷く二人
俺はクリスに問いかける
「クリスは料理学校に行きたくないか?」
「行きたいけど・・・それは」
「ここに30万ある、この手紙を持ってクラフトの街に行けば、俺の妹が入学手続きをしてくれる。どの道を行くかはクリスの自由だ、どうする?」
「・・・・行きたいです。」
「よし!じゃあ早速今日の馬車で出発するといい、定期的に様子を見に来るからその時は俺に上達した腕を見せてくれ!これは俺からの選別だ、クリスに合った武器が入ってる、自衛に役立ててくれ!」
俺は今度はティーナに向き直
「お父さんといる!」
「いや俺としては学校」
「お父さんといる!」
「ティー」
「お父さんといる!」
これは説得不可能だな・・・いや、ここは心を鬼にして!
「ティーナ!!!」
「駄目?」
「駄目じゃねえし!好きな道を選べばいい!」
クリスが呆れた目で俺を見ている・・・娘ってのもあるが、どうも俺は年関係無く女に弱いな・・・因みにティーナはファンシーな包みとクナイを非常に気に入ってくれた。
俺は馬車の時間迄二人に街を自由に回って見ろとお金を渡した。見知らぬ街での経験は何かしらプラスになるもんだ。俺は街を出る前にパリスの家に寄ることにした。
「御免ください!」
「はーい!」
元気な声がと共にドアが開く、パエッタだ。軽くトラウマが蘇るが、既に俺はスポーツ刈りにシフトチェンジしている、恐れるものなど何もない!
「あ!いらっしゃい お兄ちゃん!」 Σ(゜д゜)
何間空けてんの?その空白めっちゃ気になるんだけど!?・・・どうやらパリスではなくパエッタこそが俺の終生のライバルだったようだな!!
「 パエッタ元気そうだな!」 クククッ気になるだろう?
「お陰様で!お兄ちゃんの御蔭だね!!」
普通に返されると俺恥ずかしいんだけど・・・(赤面)
「パリスは留守かい?」
「一度帰ってきたけど出かけちゃったよ?」
なんだかんだパエッタの治療費やらでお金が必要だったんだろうな、クエスト中か・・・
「今日はな、パリスがクエストで俺と稼いだお金を持って来た。少し多めに入れといたから、その分今度遊びに来た時、飯をご馳走して貰うと言っといてくれ」
ティーナは俺に付いてくるみたいだし全額置いてって問題ないだろ、俺はお金を渡して、その場を後にした。
門の入口に俺達は集う
クリスとの別れであり
新たな旅立ちでもある
言葉は特に無く、只馬車の時間を待つ
馬車に乗る前にクリスに告げる
過ごした時は短く、刻んだ絆は深く、万感の思いを込め
「「行ってらっしゃい!」」
クリスは小さく肩を震わし、90度に腰を曲げ俺達に応える
「行ってきます、ティーナ・・・・父ちゃん!!」
俺達は馬車が見えなくなるまで見送った。
さて俺たちも、街を出るか・・・何だ?剣戟の音?
「ティーナ!」
「うん、側面!」
俺達はぐるりと街を囲む城壁の側面に回り込む、そこには全身鎧で固めた男が複数の男に襲われていた。
「一文字切り!」
俺は縦の衝撃刃を鎧男と男達の境界に放つ、地面を大きく抉る攻撃に恐れをなし男たちは逃げていった。
「大丈夫か?」
尋ねる俺に男は応えず、喋りだす。
「お願いします!俺の代わりに闘技場に出てくださいませんか!?」
街を出るのはまだ先になりそうだ。




