クリス
補足回です。
少し性的イメージを引き起こす表現があります。
僕は合理主義者だ、人の事なんてこれっぽっちも信じちゃいない
僕は実の両親に身売りされた。お金に困った様子は無かったのでその為に育てていたんだろう、しょうがないんだと涙ながらに言ってくる両親、そうだね、お金が欲しくてしょうがないんだろう、抵抗しても無駄なのは分かっている、大人しく商人についていった。
村を出て街に向かう途中、野盗に襲われた。嬲るのを楽しんでいるのだろう、行く先々に回り込み絶望を演出してる、玩具が欲しくてたまらないのだ。それなら自ら玩具になればいい、僕は何でもします皆さんの奴隷にさせてくださいと願い出た。結果僕以外はみんな死んだ。
僕は肉体を進んで差し出し、相手が喜ぶ行動を選んだ。
加減を知らない莫迦ばかりなので行動がエスカレートしないよう思考を誘導する、いずれ限界は来る早めに逃げ出す必要があるだろう。
新しく奴隷の女の子が連れられてきた、僕はこの子が[壊れない]ように上手く[補助]していく、[莫迦]が喜ぶように[この子]が信頼するように。
その日は宴会で盛り上がってた。異様に興奮しているのが分かる、莫迦が最も増長する日だ。酒宴を開く日は奴隷を牢屋に入れておく、莫迦のくせに抜け目がない。
騒ぎが突然収まった、何だ?
僕達の前に男が来た。牢を事も無げに開け、首輪と足枷を壊し男は言った。
「君たちは自由だ」
目の前の男は底抜けの善人に見える、ティーナを見る[女]も上手く使えば例え悪人でも対処出来るだろう、そう判断し僕は口を開いた。
「僕達の親は殺されました。頼る人もおらず、とても二人では生きていけそうにありません、どうか僕達を貴方の奴隷にしてもらえないでしょうか?」
男はそれは困ったなと口にする、全く困っているように見えない、間違いなく奴隷になるだろう、そう考えた僕は次の言葉に耳を疑った。
「じゃあ俺達は今日から家族になろう」(キリッ)
何だろうこの気持ち・・・妙な顔で妙な事を言う男に僕は大きな反発を抱いた・・・何だこの感情は合理的じゃない。
馬鹿はキール・ライトニングと名乗り、僕達二人はライトニングの名を継いだ。父ちゃんと呼べと言われたが呼ぶ気になれない・・・合理的ではない。
リンクすると言いリディアの手の平に口を当てた時、ああやはり[肉体]が目的かと言い知れぬ感情が僕の中を巡る・・・合理的ではない。
リンクとは魔法的繋がりのようだ。僕は安心している自分に気付く・・・合理的ではない。
「いいか、俺は旅の途中だ、クリスとティーナにはここにいた野盗を一人で全滅出来るぐらいになって貰う、異論は認めない、いいな」
「はい」
これは非常に大きなメリットだ。精々利用させてもらおう。
どんどん自分が強くなっているのが分かる、何をしても負ける気がしない・・・そう思っていたらキールに殺されかけた。生まれて初めて恐怖を感じた。キールは手加減を知らない、気をつけよう。
俺は一人で生きていく力を手に入れた。後は逃げるだけだが、その前に聞いておきたいことがあった。
「・・何で俺達にここまでしてくれるの?」
とても優しい顔で話し始める、その内容もとても優しい・・・だけどそんなの・・
「何より俺達は家族だ、何一つ遠慮する事はない・・・今まで頑張ったな」
優しく胸に引き寄せられる・・・だけどこんなの!
「嘘だ!」
信じられないとティーナも言う、当然だ!今まで俺が、俺達が何をされてきた!全ての人間が俺を[道具]として扱ってきた!こんな暖かさ信じれる筈が無い!激しい怒りが溢れかえる、強く胸の中にしがみつく・・・
{ぼ~~~え~~~}
何を思ったのか突然歌いだす、だがそれは歌というより音波攻撃だ。
俺達は本気で悲鳴を上げて逃げ出した。
本当に理解できない!はははっ何て非常識!全てが馬鹿らしい!合理的じゃないにも程がある!こいつはただの馬鹿だ。
「なあ父さん、このよぎり草とアロイの葉を擦り下ろしたら毒消し草になるの?」
父ちゃんなんて呼ぶつもりは無い、とことん利用してやる、うん、合理的だ。




