中央ギルド
中央ギルド前
俺は城の前で立ち往生していた。
「今の時間は、紹介状でもない限りここは通せません、また後日お越しください」
迂闊だったな、まさかこんな早くに閉まるとは思わなかった。出直すしかないか・・・そういえば困った事があればギルドに見せろと貰った物があったな、俺はシモーネに貰った緑色の宝石を出し衛兵に見せてみた。
「これで紹介状の代わりにならないですか?」
「これは!?失礼だが見せて頂いてよろしいですか?」
脈ありだな、俺は衛兵に宝石を渡す、衛兵は手の平サイズで長方形の鏡のような物を取り出し宝石に近づける ピッ 小気味良い音を立てる鏡を今度は俺の方に近づける ピピピピピ 連続して音を立てる
照合してるのかな?
「こちらに来て下さい」
衛兵が俺を城内に案内してくれるようだ、上手くいった!
「他に身分証はお持ちですか?」
「冒険者カードを持ってます。これです。」
「こちらはお預かりさせて頂きます・・・」
キール・ライトニング
冒険者ランク S
依頼達成数2
達成率100%
クエスト
無し
空間倉庫利用者
「キールさんは空間倉庫の利用者のようですね、一時的に空間倉庫を凍結しますが宜しかったですか?」
「はい」
「それではお手持ちの荷物を武器も含め全て倉庫にお願いします。」
「分かりました。」
俺は纏めて倉庫に入れた。中央ギルドは手続き面倒だな。
「では凍結します・・・・・凍結致しました。それではこちらの部屋で担当の者が来るのをお待ちください。」
「有難うございます。」
扉が閉まった後、ガシャンと音がした。鍵を掛けられた?急いで扉を開けるがすんなり開く・・・・思い過ごしか、目の前に新たに鉄格子が出現しただけだ・・・あれ?ここ牢屋じゃね?・・・おのれシモーネ!!謀ったな!!あいつの顔を思い出し怒りに震える俺・・・(にこー)でれー ・・・・まあいっか!
取り敢えず周囲を探る・・・目の前の鉄格子を手で曲げるのは・・可能だな、壁は石造りで窓も無い、何かあった時の為にフェントを呼んでおこう(フェント!)・・・反応がない、気合が足りないのか?・・・・・・・・・・(フェント!!!)ガラスが割れるように空間が裂け、フェントがひらりと地面に降り立つ、白いドレスを身に纏い金色の髪を靡かせ威風堂々と立っている、美しくも荘厳な顔が俺を圧倒する、だがそこがフェントらしい・・・・・あれ?
「ふむ・・・どうやらキールの並外れた魔力で人化したようじゃな・・・」
「お前・・・フェントか?人間だったのか!?」
驚きの新事実だなおい
「・・・・我は聖剣じゃ、それ以上でもそれ以下でもない、そんな事より[今のお主]が我を呼ぶという事は何か問題が起こっているのであろう、何があった?」
「ああ、牢に閉じ込められたんでな、[今]逃げるのは簡単なんだが暫く様子を見たい、力を貸して欲しかったんだが、剣じゃなくて人が現れるとはね、驚いたよ」
「ふんっ我の美貌に頭が空っぽになったのであろう?」
「ああ、思わず見蕩れたな、フェントらしいなって思ったよ」
「っ!・・・当然じゃ、剣にはすぐ戻れるから安心せい」(こやつ天然だな、フィズが勘違いするのも当然じゃ)
「さあ鬼が出るか蛇が出るか」(魔王ならもう出ておるがの、黙っとくのも優しさじゃろう)
コツコツと甲高い足音がする。誰か来たようだな
『高い魔力を感じる、油断するでないぞ』
「応」
剣に戻ったフェントを懐に忍ばせ、注意深く様子を伺う、相手は一人か、扉を開けて女性が入ってくる、流れるような長い黒髪・・・まさか!
「お待たせしました。久しぶりねキール君」
「シモーネ!?・・・雰囲気が違うんで一瞬分からなかった」
青のローブ・モンタントを身に着けたシモーネは、厳粛な雰囲気を醸し出していた。
「ふふふ、仕事柄切り替えが大事なの・・・所で部屋に掛かっていた魔法障壁が破られてるみたいだけど何かしたの?」
「?・・・・・気合だな!\(^o^)/」
((そんなわけないだろ!))
「・・・ちょっとやってみてもらえる?」
『その必要はない、障壁なら我が砕いた。それより先に説明するべき事があるのではないか?』
俺の懐からフェントが飛び出しシモーネの前で静止する
「あの時の魔剣か!?」
『聖剣じゃ戯け!』
「確かに先に言うべき言葉があったわね、御免なさい私のミスです、宝石とキール君の魔力の[質]が一致しなかったの、街ギルドに問い合わせて確認を取るのに時間が掛かってしまって」
「じゃあしょうがないな」
あっさり返す俺にフェントは呆れた声を出す。
『器がでかいのか、ただの馬鹿なのか・・・』
「ふっそんなの考えるまでもないだろ?」(キリッ)
((馬鹿だな))
まあ其処が可愛いんだけどねと図らずも二人は同じことを思っていた。
「それでは本題に入りましょう、本日の用件は何かしら?」
「婆ちゃんが居ないからポークに攫われたんだ。それでここに来た」
(・・・・・・言葉の使い方を教えるべきかしら)
「詳しく教えて」
「話は分かりました。現時点で分かる事が幾つかあるわ」
シモーネは話をしながら、コツコツと歩き出し、ピタッと静止し、指で1の字を作りこちらに突き出す。
「一つ、ポークはお婆さんを攫ってない!キール君の思い込みね」
「なん・・だと・・事件はギルドで起こってるんじゃない、現場で起こっているんだ!その場に居なかったシモーネに何が分かる!」
「現場検証もろくにしていない貴方に現場を語る資格はないのよ!」
「異議あり!!」
『異議を認めません』
なん・・だと・・・フェント、お前もか!
「理由は簡単、私はキール君に指輪の話を聞いた時から、ポークの内務調査を行なっていたの、彼らの脱税行為から帰宅時間までバイエルンに関係するものは全て把握している、お婆さんは攫われていない!・・・QED証明終了」
「・・・」
「二つ、妹さんは痴呆ではない!これもキール君の思い込みね」
「な・・・に・・もしそうなら俺も嬉しい・・・だが!悲しいけど妹は痴呆なのよね!これは俺自身が聞いた紛れもない事実だ!」
「異議あり!」
『異議を認めます』
「いい?キール君、[お婆さんの事]だけ過去に渡って忘れてしまうなんて痴呆はないのよ、だから安心していいの」
「っ・・・そうか・・・良かった・・俺は胸を張って妹に会えるんだ・・こんなに嬉しい事はない・・・」
『・・・生き残れればいいがの』
「?」
「3つ、これが一番重要よ[我が家にお婆さんがいない]、この発言は異常なの、人は年を取れば必ずお爺さん、お婆さんになる・・・記憶を消されてもそんな発言出てくる筈がない」
「・・・!・・婆ちゃんはフィズの頭の中にいた!」
「キール君ちょっと黙ってて」
(´・ω・)
「魔法を使っても記憶は消せる、但しその場合お婆ちゃんの事を覚えていないになる、そこから導かれる答えは・・・人知を超えた存在が関わっているって事、今分かるのはここまで・・・後は詳しく調べてみるからもう少し時間を貰えるかしら」
「よろしく頼む」
俺は深く頭を下げた。
宿に着いた俺は今までで最大の危機に襲われる
お父さん、そこに魔王がいるよ




