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夢を見ていた。
優しい顔で微笑む人がいた。
見ていて安心出来る笑い方だった。
綺麗な星空の下、その人が何かを言った。
何を言っていたのだろう。
何かとっても、嬉しい事を言ってもらえたのに。
言葉も、優しい笑顔も、黒い影が飲み込んだ。
「沙耶!!」
眠っていた沙耶の目蓋がうっすらとひらく。
「まどか、ねえ……?」
かすれた声で呟かれた言葉に息をのむ。
「沙耶……」
覚えていて、くれた。
「……あれ?」
目を開けた沙耶が小さく視線を動かす。
「……あたし、どうしたんだっけ?」
呟く。
「龍が暴れたの」
出来るだけ冷静に、端的に答える。
沙耶の動きが止まる。沈黙。
円は、ただ黙っていた。
「……そう」
呟いた沙耶は諦めた様に頷いた。
「父様と直次叔父様が龍を封印し直した」
「……うん」
「誰も怪我とかしてないから、安心しなさい」
「……うん」
ゆっくりと、細く息を吐き出す。
「そっか」
もう一度呟いた。