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調律師  作者: 小高まあな
第二章 いやなんです
78/157

3−2−3

「榊原。そういう顔を、こういうところでするな。と僕に言われるようでどうする」

 不愉快さを隠しもせずフードコートの椅子に座ってコーラのストローを何度も弾いていた龍一が顔あげると、そこにはアイスコーヒーを片手にもった巽翔が、呆れたような顔をして立っていた。

「意外だな、巽がいるなんて」

 クラス会に来るようなキャラじゃないと思っていた。

「……円さんが、」

「ああ、押し切ったんだ」

「もっと子どもらしいことをしなさい、と。まったく、人の気も知らないで」

 その気持ちは分かる気がした。相手に子ども扱いされたくなくて、相手に釣り合う人間になりたくて、必死にあがいているのに、なのに向こうはこちらの気も知らないで、容易に子ども扱いする。

「こどもじゃない、か」

 先ほどの言葉を思い出し、小さく呟く。

「痛いな、お互い」

 翔がいたわるように微笑む。

「だけど、君がそんなんでどうするんだ?」

「わかってる。沙耶には悪気はないんだろうし。……だから、困るだろうが」

 机の上に肘をつき、額に手をあてる。

 こどもじゃない、と言った瞬間、一瞬だけ、彼女の表情が歪んだ。多分、自分でも何を言っているかわかったのだろう。気持ちを察するのは敏感な人だから。

「悪い」

 素直に翔は謝った。

「いや」

 龍一は額に手を当てたまま首を横に振った。

「巽が悪いんじゃない」

 じゃあ、誰が悪いのか? 沙耶は悪くない。じゃあ、自分が悪いのか? でも、今高校生なのは決して龍一のせいでもない。

「誰も悪くないって最悪だな」

 小さく呟くと、向かいの席に腰掛けた翔が頷いた。

 こんなところで、こんな風に、遊んでいる場合ではないのに。早くはやく、追いつかなくちゃ。

 でも、どうやったら追いつくのか、彼女と釣り合うのかがわからない。

「榊原くーん」

 杏子の甲高い声と足音が、近寄ってくるのを背中で感じた。

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