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2−3−5
「おかえりなさーい」
二人が扉を開けると、円が軽い調子で言う。
沙耶の隣にいる翔に龍一は一瞬眉をひそめ、翔もやはり不機嫌そうな顔をした。
「ただいま。いらっしゃい、龍一」
そんな龍一に沙耶は笑いかけ、
「巽のおぼっちゃま、龍一君とクラスメイトなんですって?」
円は翔に話しかける。
「ええ」
「あんまり意地悪しちゃだめよ? なんたって、うちのお姫様のナイトなんだから」
ね? と邪気のない笑みを浮かべ、龍一の両肩を叩く。
「円さん」
「円姉」
あきれたような口ぶりに少しの照れを交えて、龍一と沙耶が突っ込む。
「あら、息ぴったり」
さらにおどける円に、二人はため息をつき、
「え、沙耶さん?」
翔が一人で変な声をあげる。
「ん? どうした?」
円に、なんでもないですと首をふり、翔は龍一と円と沙耶をそれぞれ見比べる。そんな翔を見て、龍一はなんとなく何かを理解した。
「あー、巽、ちょっと話が」
「奇遇だな、僕もだ」
初対面のときにようににらみ合う訳にもいかず、二人で変な顔をしながら頷き合った。