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2−2−11
『円様』
どこにもいない、と毒づいた円は後ろからかけられた声に慌てて振り返る。
まるっこい鳥のような生き物が宙に浮いていた。生き物?
「あ、あんた、直の」
確か以前、見せてもらった。式神。式札を用いる、使い魔。最近では使う人が少なくなったそれを直純は習得していた。その方面の才があまりないのでよくわらかないけど。
「えっと、確かウーヤ」
確か語源は鴉。まるっこくて、色も黄土色に近くて、とても鴉には見えない、とからかった。
『はい。直純様からの伝言です。大道寺沙耶様の居場所について』
「続けて」
さすがだ、と思った。
闇雲に走りだした自分とは違って、きちんと調べたらしい。冷静で、羨ましい。
それでも、私は一刻でも早く彼女の元に行きたいのだ。そして、
「ありがとう」
伝言を聞くと再び走り出した。彼女に会って、そして