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調律師  作者: 小高まあな
第二章 一海家の一族
41/157

2−2−2

「直次叔父様!」

 廊下の隅で数人と話し込んでいる直次に声をかける。二人に気づくと、一海直次は軽く左手を挙げた。

 話し合いが済み、各々がそれぞれの場所に散って行くのを見計らって、二人は直次の元へ駆け寄って行く。

「父さん、今のは?」

「龍が現れたらしい」

「龍?」

「ああ、場所はそこにあるだろ、付属小。あそこら辺らしい」

 円は脳内に地図を思い浮かべ、

「じゃあ、場所的には巽の管轄?」

 姪の言葉に直次は一度頷くと、

「ああ。だが、まだ事態がよくわからん。二人ともとりあえず動けるようにはしておいてくれ」

「はい」

「わかりました」

 二人は頷くと、一度自室に戻ろうと歩き出し、

「円」

 かけられた声に振り返る。

「兄さんは、義姉さんのところか?」

「はい」

 そうか、と直次は呟き、

「しょうがない、兄さんが帰ってくるまでは仕切るか」

 心底面倒そうに呟くと、部屋の中に入って行く。

 その後ろ姿を見届けると、円は隣の従弟に

「直次叔父様は、なんであんなにリーダーシップをとるの嫌がるのかしら?」

「俺は厭だからわかるけどなー」

「何言っているの、次期宗主」

「いや、それは円だろ」

「あのね」

 暢気なことを言う従弟に、宗主の愛娘は左手の人差し指を突きつけた。

「女が宗主になるなんて、爺様達が許す訳ないじゃない」

 保守的な老人衆の事を思い浮かべ、ふんっと不満そうに鼻を鳴らすと、円は歩き出した。そんな従姉の後ろ姿を見つめ、ふぅと直純はため息をついた。

 どう考えても、リーダーシップをとる適正は自分よりも従姉の方にあるし、人望だって彼女の方に分がある。

「性別とか、くだらないの」

 彼にしては珍しく、冷たい声で吐き捨てると従姉の後を追った。


「円、直純」

 着替えて広間にあつまった二人を一海の宗主、直一が呼んだのは、事態が起きてから二時間近くたってからだった。

「ちょっといいか?」

 一海の宗主の言葉に、直純はすくっと立ち上がる。怠惰な猫のように寝転がっていた円も、すぐに立ち上がった。

 広間を出て、廊下を歩く。

「悪いが、二人とも一緒に巽まで付いてきて欲しい」

「巽に?」

「ああ」

「なんで」

「ちょっと、厄介なことになった」

 苦々しく呟く宗主に、背後で二人は顔を見合わせた。

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