1−5−5
円は黙って煙草を吸う。龍一も黙って、そんな円を見た。
「でも、知らなければ探しようがないじゃないですか」
「あの子と付き合っていく方法?」
円の問いに頷く。
「冴えたやり方が、例えたった一つ……」
言いかけた龍一は、ぎょっとしてそこで口をつぐんだ。
「龍一君?」
円は振り返り、その視線を追う。
「……ウーヤ?」
『直純様からの伝言です』
ふわり、ふわり、と宙に浮きながら、まるっこい鳥のような生き物は告げる。
「直からの?」
「ちょ、円さん、それ、なんなんですか?」
「何って直純の式神……」
言いかけて、円は振り返り、龍一を見つめる。ばん、勢いよくデスクについた手の振動で、灰皿の灰が跳ねた。
「ちょっとまって、龍一君。ウーヤが見えるのっ?」
「え、ええ。……え、もしかして、見えちゃいけないものなんですか?」
円はそれには答えずに、灰皿に煙草を押し付けた。
「ウーヤ、伝言」
『はい、予想外のアクシデントが発生しました。沙耶様の龍の恐れがあります』
円が舌打した。
「円さん」
眉をひそめて龍一は問いかける。意味がわからない。でも、沙耶が無事ではないことだけはわかった。
『場所は』
「桜のところね? わかった。ありがとう」
円が答えると、ウーヤはぺこりとおじぎして、消えた。
「今のは直の式神。直の支配下にある霊の連絡係だとでも思って」
円は立ち上がると事務所のカギを手にとった。
「いつの間にか見えるようになっていたのね」
少し、残念そうな顔をして円は呟く。
「君が知りたがっていたこと、もし、本当に知る勇気があるのならばついてきなさい。ただし、命の保証はしないわよ」
龍一は迷わず立ち上がった。