1−1−1
夕暮れ時の教室。女子高生四人が机を囲んで座っている。他には誰もいない。
小声で声を揃え、唱える。
「こっくりさん、こっくりさん、鳥居を潜ってお越しください」
こっくりさんだって占いの一種。四人で結託してなんとなくやってみることになった。半信半疑で指先の十円玉を見つめる。
遠くの方、グラウンドで野球部が練習している声がする。
こつこつと、静かな廊下に足音が響く。廊下を歩いていた男子生徒は、二の四とプレートがある教室の前で足を止めた。課題があるというのにノートを忘れた自分のうかつさを悔やみ、半ば呪いながら、いつも通り扉を開ける。
八つの瞳がいっせいに彼に向けられた。
「えっと? ごめん、もしかして、……入っちゃダメだった?」
扉を開けた男子生徒は困惑を顔に浮かべ、ドアをあけた体勢のまま、女子四人をみる。
「榊原君……。そういうわけではないけど」
一人の子がそういって、やはり困ったように笑おうとして、
「え?」
男子生徒から視線を手元の十円玉に移す。
「うごいて、る?」
かたかた、と音を立てて十円玉が揺れている。
押さえていた人差し指に軽い圧力を感じて、彼女は思わず手を離した。同じようにして、他の三人も手を離し、怖いものを見るかのように十円玉を見つめる。
ゆっくりと、それは宙に浮かび始めた。
「もしもーし」
廊下のほうからでは、窓際にいる彼女達の様子がよく見えず、男子生徒は幾分砕けた調子で声をかける。
「忘れ物とりに来ただけだから、すぐ帰るから」
そういって、一歩教室に足を踏み入れたとき、その十円玉は狙いたがわず彼にめがけて飛んでいった。
「榊原君っ!」
「っ!」
事態が理解できないながらも、反射的に彼は両腕を顔の前で庇うように組み、
そして……。