4−8−8
大道寺沙耶は、カレンダーを睨んだ。
大きく○を付けた日付を撫でる。
翔から聞いた、榊原龍一の最後の試験が終わる日。
そのまま手を動かす。この日から既に四日経った。
いい加減、覚悟を決めるべきだ。
悩んだ末に、この四日間ずっと行っていた動作をする。ケータイを開き、アドレス帳から榊原龍一の名を呼び出す。
それを見つめる。
あと一つ、ボタンを押せば繋がる状態でしばし悩み、大きく息を吸うと、吐き出す勢いで通話ボタンを押した。今日こそ。
『もしもし?』
コール音の後、しばらく聞いていなかった声が聞こえる。
「龍一君、ごめんなさい。受験、お疲れさま。今、平気?」
『うん。ありがとう』
「あのね、話があって」
『うん、俺も…』
意を決して切り出すと、向こうも同じように言った。
「電話だと、あれだから。明日とか、平気?」
『うん』
「……うちの場所、わかるよね?」
声が震える。
『大丈夫』
「それじゃあ、明日、来てもらってもいい?」
『うん』
相手は何一つ躊躇うことなく、返事した。
『それじゃあ、明日……』
「うん、待ってる」
言って通話を切る。
大きく息を吐き出す。緊張した。
ペンを持ってくると、カレンダーの翌日の日付に大きく○を付けた。
決戦は、明日だ。