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調律師  作者: 小高まあな
第八章 僕はおもてで呼んでいる
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4−8−6

 一海円のお見合いの相手は、どこぞの陰陽師の傍系の次男らしい。なるほど、一海の次期宗主の結婚相手としては、そこそこいいだろう。

 沙耶から聞いた情報を頭の中で反芻する。

 だから、なんだというのだ?

 お見合いの場所は、近くの料亭。巽の集まりでもよく利用する、この世界御用達のお店だ。

「あら、巽様」

「失礼します」

 微笑む女将に、一度だけ頭を下げると、そのまま上がり込む。

「巽様っ?」

 後ろからの制止の声は無視する。

 どこの部屋で行われているのかも、調べを付けた。そこら辺にいる霊に何かを尋ねたのは初めてだったが、意外にも彼らは快く教えてくれた。だから今回は、祓うの大目に見てやる。

 こんなことをしたら一海と巽の関係が悪くなる? 知るか。多分、父なら笑って許してくれるだろう。その前にみっちり怒られるだろうけど、最後は笑って許してくれる。

 父は喰えない狸だ。そして、自分はその狸の息子だ。

 もう一度自分の思いを確認する。目的の部屋の前にたつ。一つ深呼吸。

 礼儀も何もなく、それでも一応失礼しますと声をかけて襖を開け放つ。

「巽のおぼっちゃまっ!?」

 誰かと思うぐらい、きちんと正装した円が流石に驚いたような声をあげる。切れ長の目が見開かれる。

 いつも驚かされて来たんだ、たまにはこっちが驚かしてやる。

「君は巽の……」

 見合い相手らしき男が言う。

「失礼します」

 言いながら頭を下げて中に入ると、円の腕を掴む。

「ちょっと、巽のおぼっちゃまっ!?」

「好きな人を攫いに来ました」

 告げると、彼女の目がますます大きく見開かれる。そんな顔することないじゃないか。気づいていなかったとは、言わせない。

 そのまま黙って腕を引っ張って部屋をでる。

 誰も止めない。あっけにとられたように、誰もがこちらをただ見ているだけだ。

 円も黙って引きずられる様にしながらついて来た。

 その態度に腹が立つ。物わかりがいいんじゃない。子どもが何をしているのだろう、仕方がないから様子をみてやろう、と思っているのが手に取るように分かる。バカにするな。

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