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気がついたら年が明けていた。
沙耶の自宅謹慎もとけ、一海に戻った円たちの手伝いをしていた。年末年始は、特に忙しく、龍一に連絡はとっていない。
もっとも、それは言い訳に他ならず、賢治のことがあってから一度だって連絡していない。メールなんて、すぐに打てるのに。
ため息。
久しぶりに時間が出来たので、本屋で新刊をチェックする。この時間があれば、メールだって電話だって出来るのに。
でも、多分龍一君いま受験直前で忙しいし、と自分に言い訳しながら、そんな思い切りのつかない自分にもう一度ため息。
すると、
「あなた……」
かけられた声に振り返る。髪を肩の辺りで切りそろえた女の子が、目を細めてこちらをみていた。
「あの?」
「以前一度お会いしましたよね。榊原と一緒のところを、遊園地で」
一度記憶をたどっても思い出せない。それでもなんとか、微笑む。
「ごめんなさい、物覚え、悪くって……」
「いいえ。少しだけだったので。でもよかった、私、あなたと一度話してみたかったんです。少し、お時間いいですか?」