136/157
4−5−7
「沙耶ならきっと、大丈夫だよ」
龍一は小さく笑うと、もう一度問題集に視線を戻した。
「沙耶は一人でも生きて行く、とあの時言っていた。だから、大丈夫だよ。もし、だめでも」
そうして翔の方を見ると、笑いかける。
「沙耶には円さんも直純さんもいるから大丈夫だろう」
そうしてもう何も言わずに問題に集中し始めた。
翔は黙って、一瞬泣きそうな顔をした親友の顔を見つめた。
「榊原も、いるだろ?」
小さな小さな声で、呟かれたその言葉を、龍一は聞こえないふりをした。