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調律師  作者: 小高まあな
第四章 あたしはあたしで一人でいきます
124/157

4−4−1

「うん、わかった。じゃあ待ってる、うん」

 一つため息をつき、円はケータイを閉じた。

「直と清がくるって」

 いいながら黙ったままの沙耶と龍一を見る。ソファーに腰掛けた龍一は窓の外を睨みつけ、対角線上に座った沙耶はうつむいたままだ。

「それじゃあ、円さん」

 龍一はゆっくりと立ち上がると、鞄を肩にかけた。

「俺、帰ります」

「え? 別にいてもいいのよ?」

「いえ、そうじゃなくて」

 円をまっすぐ見ると少しだけ口元を緩める。

「予備校なんで」

「あ、ああ、そっか」

 受験生だもんね、と小さく呟く。

「明日、事務所に行きます。平気ですか?」

「ええ」

「それじゃあ、沙耶」

 龍一は沙耶の方を向く。ゆっくりと沙耶が顔をあげる。赤い瞳を睨む様にして見ながら、

「また明日」

 早口で告げると、返事を待たずに玄関へ歩き出す。その後を慌てて円がついていく。

「大丈夫? 道とか時間とか……、送ろうか?」

「いいえ、平気です」

「そう? 気をつけてね」

「はい」

 玄関で繰り広げられている会話を、沙耶はぼーっと顔を上げたまま聞く。壁を見つめる。

 かちゃり、とドアがしまる音がした。

「沙耶」

 戻って来た円の言葉にゆっくりと視線をあげる。

「……台所、借りるわよ?」

 他に何をどういえばいいかわからなくて、とりあえずそう声をかけた。

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