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調律師  作者: 小高まあな
第一章 小さな町
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4−1−3

「ただいまー」

 龍一は玄関のドアを開け

「龍」

「……だからなんでいるんだよ」

 すぐの場所で仁王立ちしている姉にため息をつく。

「そんなにしょっちゅう帰ってくるなって。俺、勉強で忙しいんだけど」

「龍」

 遮られる。靴を脱ぎながら姉を見上げると

「お前、ふられたのか?」

「はぁ?」

 帰って来ていきなり、何を言ってるんだこの姉は。睨みつけるように見上げる。

「何言ってんだ?」

「さっき、巫女姫様が堂本君と歩いているの見かけたけど?」

 言いながら少しだけ雅が眉をひそめた。

「……堂本、賢治?」

 雅が頷く。

「……どこで?」

 脱ぎかけの靴をそのまま、足を床におろす。

「うちの方にあるスーパーの近く」

 買い物に行って沙耶の姿をみつけ、声をかけようとして隣にいる堂本賢治に気づいた、と雅は言った。

「……それを言いに来てくれたんだ?」

「ああ、まあ。龍?」

 珍しく、こちらを伺うような、気遣うような姉に、微笑みかける。

「わかった、ありがとう」

 言って、今度こそちゃんと靴を脱ぎ、二階の自室へ向かう。

「龍」

 呼び止められる。

「大丈夫?」

「……うん」

 振り返らないで答えた。

 姉の珍しく、心配するような視線を背中に感じる。

 それを振り切るように階段をかけあがった。

 勢いよく自室のドアをあけ、音を立てて閉める。

 ずるずるとドアに背中を預け、床に座り込む。

 自分が今、何を思っているのかがわからない。

 いつ、再会したんだろう? 最近、連絡がなかったのは再会したから? 俺が邪魔だから? やっぱりまだ好きなんだろうか? 堂本賢治には結局勝てない?

 ケータイを取り出し、沙耶のアドレスを呼び出し、そのままケータイを放り投げた。

 床を滑ったケータイが、ベッドの脚に当たり、にぶい音を立てる。

 連絡して何になる?

 ゆっくりを息を吐く。

 沙耶は、堂本賢治のことは、覚えていたのだろうか?

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