見た目九割の真実
一年以上のブランク、本当に申し訳ありません。
これからぽつぽつ再開していこうと思います。
あー、えっと…。
まぁ見た目からアジア人ではないし、普通日本語は話さないだろうけど、
でも、ここはご都合主義的に翻訳機能のなんらかを併せ持っている道具なり、通訳魔法的なもの発動させる誰かがいてもよくないですか?
一言で言っちゃうと、気まずっっ…。
この沈黙は一体…
わたしの回答待ちなの?
さっきとは逆の立場になって内心焦っているのが美形さんにも伝わったのか、返答しないことに余り頓着せずにサイドテーブルに置いてあったプレートをベッドに腰掛けているわたしに差し出す。
つい受け取ってしまったけど、プレートの上にのっているブツは…ワケの分からないものだったわけで。
緑のグチャグチャ…ペースト状のモノがのっている帯状の布数枚、その横には透明の液体が入っている小さい木製のコップ。
そして、トマトスープっぽい液体の中に米より小さく黒っぽい粒々した何かが入ったものがこれまた木製のスープ皿に注がれている。冷めているためかニオイはあんまりしない、故にやたら黒っぽく何かの卵にしか見えない粒々もといブツブツは見た目だけで急速に食欲を減退させてしまう一品だった。
きっと食べ物だよね、匙らしきものも横に添えてあるし。
………ううう。そんな期待する眼差しで見ないでください、美形さんっ!
無理なものは無理です。空腹が何よりのスパイスだ!なんて悟りを開くほど私、(胃袋が)強い子じゃないんです!!
一向に食べ物に手をつけず冷や汗ダラダラなわたしを見かねたのかなんなのか、先に動いたのは美形さんだった。
プレート上の匙を手に取るとあのトマトと黒いブツブツスープを掬った。
わたしは無理に食べさせられるのかと身構えたけど、美形さんは匙を持ってスタスタと部屋の中のこれまた木製の小窓まで歩いていき開け放し、それから匙の中味を窓の外にまいた。
当然わたしはその行動を理解出来ずに呆気にとられた訳だけど、美形さんはしてやったぜ、さあ食いねえ、な笑顔で匙をわたしに差し出す。
わたしは更に困惑するばかりで、とうとう匙受け取りをスルーした。
みるみるうちに差し出された手は元気なく下がっていく。
まるで飼い主に捨てられた犬のようにしょんぼりした様子に、善意を無碍にしてしまった罪悪感からつい目を背けてしまう。
美形さん、ごめんなさい。
でも、でも、人間も食べ物も見た目が九割だと思うのよ。
嗚呼、何でこんな攻防に発展してしまったんだろう。
食わず嫌いの自分をここまで嘆いたことはない。
諦めたかと思いきや、俺は負けない的な目の輝きを取り戻しつつ、強引にスプーンを私に近づけてくるこの美形に私も力の限り抵抗した。
こんなに強引に食べさせようとするとか、逆に怪しいじゃん!
食え、食わんの攻防が続くことおよそ20分。とうとう私がおれましたとも。
押しに弱い日本人だけどよくここまで粘ったという心持ちで満たされて、私はとうとうそのスプーンを口に運んだわけで。
そしたら、まあ普通に美味しかったわけで。
言葉が通じたら謝れるのにな、と思いながら大人しくご飯を食べている私をしきりに首をウンウンとうなずかせながらどや顔で見ている美形さんは、なんか家族に料理を出した時のお母さんな感じがした。