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3. もう一つの部屋
3. もう一つの部屋
その晩、夢を見た。
俺の部屋とそっくりの、けれど“色のない”部屋。
壁も床も、全部グレーに塗り潰されていた。
そこに座っていたのは──
……不在票に書かれていた名前、「ササキ ミチル」。
いや、違う。
あれは**“俺”だった。**
色のない世界で、もう一人の俺が、誰かに向かって手招きしていた。
その口が動く。
> 「帰ってこい」
「帰ってこい」
「こっちが、本当の家だ」
朝、目が覚めると、ドアに貼り紙がされていた。
> 「転送完了。入れ替え完了。お疲れさまでした。」
ドアを開けた俺は、自分の部屋ではない──
色のない部屋の中に立っていた。
現実の俺は、もうあっち側にいる。
こっちに残された俺は、「ササキ ミチル」と名乗るしかない。
もう、帰れない。
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