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1. 不在通知
午後8時過ぎ。
残業を終えた俺は、くたくたの身体を引きずって帰宅した。
マンションのポストに、不在票が入っていた。
──「17時12分頃、お届けに伺いました」──
差出人には、見慣れない名前が記されている。
《来訪者:ササキ ミチル》
(誰だ、それ……)
心当たりはなかった。通販も頼んでないし、知り合いにもいない名前だ。
裏面にはこう記されていた。
> 「再配達のご希望は、玄関を開けてください」
……ゾクリとした。
冗談か?
それとも、何かの間違いか?
ポストから不在票を取り出すと、その紙はじわりと湿っていた。
雨は降っていない。けれど、紙の端がどこか……濡れていた。