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1-00 救うべきもの・倒すべきもの/不可視
暗く、狭く、息苦しい。
身動きの一つも取れない。
そんな場所に、彼女はいる。
幸いなのは、彼女には意識がないことだろうか。
もし意識があったのなら、何も見えず、何も聞こえず、動けず、誰も助けに来る兆しもないそんな状況下で、きっと気をおかしくしていたはずだ。
そして、そんな行方のしれない彼女を──否、『娘』を母は探した。
探して、探して、探した。けれど、見つからない。
探しても、探しても、見つからない。見つからない。
母は哀しみ、苦しみ、焦り、そして怒り狂った。当然の感情だった。
目に映る物全てが信用ならない。
そうして次第に手段を選ばなくなっていく。
多くの生物を殺した。
それが娘を見付ける手掛かりにならなかったとしても、だが躊躇うことはなかった。
娘を攫われて、落ち着いていられるわけがなかった。
だがそれでも。
どれだけ怒り狂おうとも。
手段を選ばずとも。
見つからない。
焦りは時と共に過ぎ去り、不安に駆られる日々が母を襲った。
娘が忽然と姿を消してから、三か月が経過していた。
今だ、手掛かりの一つも見つけられず。




