都市伝説『掲示板』
人の願望は計り知れず。
その願望はいつしか欲望へと。
その者を、果ては他者すらも巻き込んで飲み込む。
『何でも叶える掲示板』
そんな都市伝説がインターネットに昔から書き込まれていた。
曰く、特殊なURLで、『呼ばれた』人間にしか届かないという。
「あ」
とある男子学生の元に一通のメール。
「本当に在ったんだ」
『何でも叶える掲示板』。
そのリンク先。
男子学生はワクワクした面持ちで迷いなくURLをタップし、ネットに潜った。
すでに幾つものコメントが書き込まれており、こうしたいああしたい、あれが欲しいそれが欲しいなどの願いと共に、他の者たちの悦びに満ちた会話が繰り広げられていた。
「……」
男子学生はその掲示板を凝視し。
「気持ち悪い」
そう一言呟いた。
何の変哲もないただの掲示板。
人々の願いや言葉が紡がれた、一般的に見るただの掲示板。
だが男子学生はその画面をそっと閉じ。
学校へ行く。
「あれ?」
一限目の休憩中。
ふと気になってメールを見る。
消えていた。
届いたはずのあのメール。
ゴミ箱にも迷惑フォルダにも。
忽然と。
「……」
男子学生はまたそっと画面を閉じた。
友達の元へと駆け寄り、ティックトックでの流行りのショート動画の話をした。
後日。
全国各地で不審死が相次ぐ。
その誰もがスマホやパソコンの画面をのぞき込んでおり。
ニヤニヤ笑って死んでいた。
——願いへの代償。
高すぎる望みは死をもって。
他者を慮る願いほど。
否。
そうした願いを持つ者ほど。
『掲示板』を見ることは無い。