表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/66

56 友


 ミッシュが装填する。ニーナが振り返る。だけど、光線もシールドも間に合わない。


 アドマが穂浪の背中に向けて、光線を放つ。逢坂は穂浪の腕を掴んで、引っ張った。穂浪の体が、逢坂の体にぶつかるように倒れる。よろけた逢坂を、後ろから久我が支える。久我の両腕が、逢坂と穂浪をいっぺんに抱え込む。


 ドーンッ!!


 地響きとともに、大きな衝突音が鳴り響いた。


 いつの間にかきつく閉じていた目を開くと、そこには包帯でぐるぐる巻きにされた穂浪の肩があった。消毒液の匂いに交じって、血の匂いがする。


「う゛ぅ……」


 苦しそうな穂浪のうめき声に、逢坂は青ざめた。


「穂浪さん! 大丈夫ですか!?」


「む、むねが、いたい……」


「胸? 胸が痛いんですか?」


「う、うん……」


 一先ひとまず傷を診ようと、逢坂に寄りかかる穂波の体を引き剥がし、地面に寝かせた。そして、シャツをめくって胸元を開いたとき、驚いた。


「……え?」


 痛いと言っていた穂浪の胸には、それらしき外傷がない。しかし、胸が痛いと感じるだけで、実は他のところに傷があるという場合だってある。逢坂は穂浪の体を念入りに見回した。


「穂浪さん、本当に胸が痛いんですか?」


 体のどこを見ても外傷が見当たらず、逢坂が尋ねると、


「うん。ドキドキで胸が痛い」


 と言いながら、穂浪は恥ずかしそうに両手で顔を隠した。指の隙間から見える頬は紅潮している。


「……は?」


「逢坂さんが俺を庇ってくれたことにときめいちゃって……ヤダッ恥ずかしいッ!」


 胸が痛いって、そういう意味……?


「この状況で紛らわしいこと言うのやめてくれません? ぶん殴りますよ?」


「逢坂さんの口から『ぶん殴る』なんて……やめて! ギャップで余計にドキドキしちゃいます!」


 本当にぶん殴ってやろうかと振りかざした逢坂の拳を、久我が後ろから握りしめて止めた。


「逢坂、気持ちは分かるが落ち着け。気持ちは分かるが」


「落ち着いてるわよ。だから穂浪さんは殴られずに済んでる」


「そうかそうか。落ち着いてるなら、周りの状況もよく見ような?」


 そう言うと、久我は逢坂の頭を両手で挟み、顔を上げさせた。その瞬間、逢坂は目を疑った。逢坂たち3人の周りが、小さなドームのようなシールドで囲まれていた。そして、そのシールドを作っているのは、ニーナではなかった。ラシェを始めとしたミッシュの親戚たちだった。


「そんなくだらない漫才ができるなら、3人とも無事のようだな」


 両手でシールドを作ったまま、ラシェがこちらを振り返った。逢坂と目が合うと、ふっと優しく微笑んだ。


「お前がオウサカサンだな?」


「どうして守ってくれたの?」


「ただの罪滅ぼしだ。お前を誘拐したことと、私の勘違いで光線を撃ってしまったことへのな」


「でも、私たちは人間よ?」


 逢坂の言葉に、ラシェはチラリと穂浪を見た。


「そこの馬鹿が、ミッシュを友と言った。ミッシュもそいつのことを友と言った。助ける理由なんて、それだけで十分だろう」


 そう言うと、ラシェは両手を下ろした。それを合図に、他の親戚たちも両手を下ろす。すると、シールドは盾の形を崩し、小さなシャボン玉となって風に飛ばされていった。


「さて、私たちにできることはここまでだ。後のことは、あの方にお任せする」


 と、ラシェは空を見上げた。


「『あの方』?」


 逢坂が首を傾げたとき、空に何かキラリと光るものが見えた。一瞬で消えてしまったから見間違いかと思ったが、そうではないとすぐに分かった。


「ミッシュとニーナが時間稼ぎをしてくれている間に、お呼びしたんだ」


「誰を?」


 キラリ、また空で何かが光った。そして、それはみるみるこちらに近付いてくる。


「我が故郷の長老様だ」


 ラシェの紹介とともに、杖を突いた小さなポロムが地上に舞い降りた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ