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42 作戦会議


 FPL内の会議室に場所を移し、逢坂たちは今後の作戦について話し合うことにした。テーブルを囲むのは、逢坂、久我、穂浪、毛利室長、そして、ミッシュとニーナだ。


「まず確認したいことは、お前とニーナの関係だ」


 話を切り出したのはやはり久我だった。逢坂は久我と穂浪の間に着席しながら、向かいのミッシュを見た。隣にいるニーナは、不安そうにミッシュの手を握っている。


「ニーナはワタクシの妹です」


「妹?」


 穂浪が聞き返すと、ミッシュは「はい」と頷いた。


「もう隠し事は致しません。ワタクシが知っていること、ニーナが知っていること、全てお話しします」


 それからミッシュは、人間と仲良くなりたいという自分を支持してくれた親族と広報活動をしていたことや、それによって親族全員が反逆罪に問われたこと、広報活動の代表であるミッシュに死刑が下されたこと、不当な死刑を逃れるため地球に逃げてきたことを話した。それを聞きながらニーナは、ずっと俯いていた。悲しそうな悔しそうな顔で、瞳に涙を浮かべながら。


「逢坂サマが誘拐されたと聞き、ワタクシの追手が来たのだと思いました。しかし、ニーナの話によると、逢坂サマを誘拐したのはワタクシの親族たちです。ワタクシを救出するため地球に来たものの居場所が分からず、ワタクシの名前を話題に挙げていた逢坂サマを頼ったとのことです」


 そこまで言うと、ミッシュは深々と頭を下げた。


「申し訳ございません。ワタクシのせいで、逢坂サマを危険な目に遭わせてしまいました」


 深刻なミッシュの態度に、逢坂は慌てて両手を横に振った。


「いやいや、全然危険じゃなかったよ。ただ臨海公園に連れて行かれたってだけで、私、ほとんど寝てたし。ね? ニーナ?」


 重苦しい空気をなんとかしようと、逢坂はニーナに明るく笑いかけた。ニーナは顔を上げ、逢坂と目が合うと小さくはにかんだ。少しでも緊張が解れたように見え、ほっとした。


「……どこが危険じゃなかったんだ?」


 しかし、せっかく逢坂が和ませた空気を、隣の席で不機嫌そうに頬杖を突いている男がぶち壊した。


「立てなくて地面に転がってたのはどこのどいつだ?」


「あれはちょっと三半規管と脳神経をやられただけで……」


「何がちょっとだ。お前は危機感がなさ過ぎる」


「でも、こうして元気にしてるんだから……」


「それは、俺と穂浪さんが助けたからだ。もし俺たちが間に合っていなかったら殺されていたかもしれないんだぞ」


「あの……ちょっといいですか?」


 これから逢坂と久我の言い合いがヒートアップしそうなタイミングで、穂浪が恐る恐る挙手をした。またいつもの空気読まない発言かと思われたが、そうではなかった。


「逢坂さんを誘拐したのはミッシュの仲間だから、逢坂さんに危害を加えることはないよね?」


「はい」


 穂浪が確認するように尋ねると、ミッシュは頷いた。すると、穂浪は腕組みをして、いつになく難しい顔で「うーん……」と唸った。そして、顎に手を当てながら、ポツリと呟いた。


「じゃぁ、逢坂さんを攻撃した地球外生命体は、何者?」


 穂浪の呟きに、全員が俯き、黙り込んだ。逢坂は思い出していた。角が5本の地球外生命体の言動や、ニーナの言動を。


「お前は何か知っているんじゃないか?」


 沈黙を破った久我の声に、全員が顔を上げた。久我に睨まれ、ニーナは体を強張らせる。


「遠くから何となく見えただけだが、攻撃される前、お前と逢坂は木に登っていた。あれは、敵から見つからないように隠れていたんじゃないか? そんなこと、追手がいると分かっていなきゃやらないよな?」


「ニーナ、そうなの?」


 逢坂が穏やかに問いかけると、ニーナは口をキュッと結んだ。そして、地球外生命体の言語でミッシュに話し始めた。ミッシュは時折頷きながら、黙って聞いている。ニーナが話し終わると、ミッシュは逢坂たちの方を向いた。


「ニーナが言うには、ニーナたちがワタクシを追って故郷を発つとき、ポロム連合にバレてしまったそうです」


「ポロム連合?」


 聞き慣れない単語に、穂浪が首を傾げる。


「『地球外生命体』という言葉は、地球人によって作られた言葉です。そして、地球外生命体と一口に言っても、多くの種がおります。ワタクシの故郷に住む地球外生命体はポロムと呼ばれる種です。そして、ポロム連合とは、我々の故郷の秩序を保つために取締を行っている団体です。ワタクシは人間と仲良くするという秩序に欠けた思想を広げようとしたとして、ポロム連合から危険人物として囚われました」


「逢坂さん、情報過多で頭パンクしそうなのって俺だけ?」


「安心してください。私もです」


 地球外生命体に多くの種族がある上に、地球人が把握していた地球外生命体はそのうちの一種だけだったなんて、逢坂も想像していなかった。地球外における知識を、人間は一握りどころか一つまみほどしか所持していなかったのだ。


「逢坂、あとで議事録まとめてくれ……」


 ため息交じりに言いながら、久我は後頭部をガシガシと掻いた。情報過多で頭が追い付かないのは、さすがの久我も同じようだ。


「了解」


 いつもなら「面倒事を押し付けるな」と反発するところだが、今回ばかりは逢坂も大人しく引き受けてやることにした。




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