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40 第六感


 局に到着しても、FPLのラボに着くまで、久我は透明化を解くように指示しなかった。ミッシュとニーナの姿を見られてはいけないのは分かるが、局員である自分たちまで透明化させ続ける理由はなんだろう、と、逢坂は考えた。


「……まさか、私がいない間に何かやらかしました?」


 廊下に誰もいないタイミングで質問したが、穂浪は答えなかった。久我も答えなかった。


「図星?」


「るっせぇ黙ってろ」


「首謀者はどっちですか?」


「逢坂さん、なんで俺の方向いて言うの?」


「ふぅん、首謀者は久我なのね」


「なんで分かるんですか!?」


「反応で大体分かります」


 もし首謀者が穂浪だった場合、正直に事のあらましを話すはずだ。


「穂浪さん、声抑えてください」


「ハッ! スミマセン!」


「久我、何やらかしたか後で聞かせてもらうわよ」


「うん、まぁ、一番のやらかしポイントは……総司令室のドアぶっ壊したところだな」


「……は?」


 FPLのラボに到着した後、久我はミッシュに透明化を解くように言った。突然、姿を現した久我を見て、研究員たちはどよめいた。ニーナもそれに続いて透明化を解こうとしたが、逢坂に止められた。今、逢坂は穂浪にお姫様抱っこされている。そんな姿をラボのみんなに見られるなんて、恥ずかしいどころじゃ済まない。


「ほ、穂浪さん、あの……このままベッドに連れて行ってくれませんか?」


「へっ!?」


 逢坂が耳打ちすると、穂浪は素っ頓狂な声を出した。逢坂を抱えている両腕に、ぎゅっと力が入る。


「透明化 マダ? 疲レタ」


「ごめんニーナ、もうちょっと待って。穂浪さん、早く……」


「え、いや、そんな突然……俺、まだ心の準備が……」


「今すぐ透明化解除しろ。面白いから」


「だめ!」


 隣にいた久我が口を挟んだため、逢坂は慌てて声を上げた。


「おや? 逢坂くんもいるのかね?」


 どこからか聞こえてきた逢坂の声に、毛利室長が辺りをキョロキョロと見回す。


「いますよ、ここに。見えないだけで。今、穂浪さんにお姫様抱っ……」


「説明しなくていいから!」


「おーおー元気だねぇ。そんなに元気なら自分で立って歩いて、仮眠室行けるんじゃないですか? お姫様?」


 久我の言葉に、逢坂は我に返った。あくまでも追手から素早く逃げるために、穂浪は逢坂を抱えて走った。ここまで当然のように運んでもらったから忘れていたが、今は頭痛も治まったし、速く走る必要もない。ならば、50m先の仮眠室まで行くなんて簡単だ。


「え? 仮眠室?」


「えぇ。仮眠室にあるんで、ベッド」


「あ、そういう……」


 久我から説明されて、穂浪はガッカリしたようにため息を吐いた。穂浪が逢坂を降ろした後、ニーナは透明化を解いた。そして、逢坂以外全員の視線が、ニーナに注がれた。その場に、恐怖心やら警戒心やら、様々な感情が混ざり合った空気が漂う。


「おい、逢坂。説明しろ」


 静かなラボに、久我の低い声が響く。ニーナは慌てて逢坂の後ろに隠れ、脚に縋りついた。


「殺気出すのやめて。怯えてるじゃない」


「こっちだって怯えてる」


「どんな顔して言ってんのよ」


 久我は威圧的にニーナを睨んでいた。どう見たって、怯えている顔ではない。


「逢坂がコイツは危険じゃないって言うから、拘束せずに連れて来たんだ。なぜ危険でないと判断したのか、俺が納得できるように説明しろ」


「ニーナたちが私を誘拐したのは、ミッシュを助けるためだったのよ」


「どういうことだ?」


「私は最初、ニーナたちの目的は、ミッシュの死刑執行だと思っていた。だけど、違うよね?」


 逢坂はニーナを見下ろした。ニーナは俯いて、肯定も否定もしない。


「これは私の想像だけど……ニーナたちの本当の目的は、ミッシュの死刑執行を阻止することだと思う」


 正直、ニーナが本当のことを話してくれないから、確かではない。だけど、ニーナの表情を見ていれば分かる。


「その根拠は?」


「女の勘」


「はぁ?」


「私の第六感がそう言ってる」


「テメェこの期に及んでふざけてんのか?」


 久我の声は、さっきよりも一層低い。空気が一瞬にしてピリつく。皮膚の表面がヒリヒリと痛む。


「だから殺気出すなって言ってんでしょ!」


「出したくて出してんじゃんねぇよ! ふざけたこと言いやがって!」


「ふざけてなんかない!」


「地球の未来がかかってんだぞ!?」


「分かってるわよ! だから穏便に事を進めようとしてるんじゃない! まずはその殺気を鎮めて、攻撃的な態度をやめて!」


「ちょ、ちょっと、二人とも落ち着い……」


「「穂浪さんは黙っててください!」」


「えぇー……」




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