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怪異さまナー☆TSU・CHI・NO・KO ~口裂け女さんですか?昨日も一緒にお茶しましたよ?~  作者: おどぅ~ん
パートせゔん 突発!カオスな大決戦

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そのヨンジュウニ ミヤちゃん

「バーカ、カーバ、ケバケバ女!悔しかったら降りてきなぁぁ!!」

「うっさいわぁーー!この下等怪異ィィィーーー!!」

 八ッ神恐子と口裂け女の応酬が、不毛なコントからさらにレベルダウンしてただの小学生級罵倒合戦に変わっていくのを横目で見ながら。

「ウーン……ワタシメリーサン、クビヲカシゲルオニンギョウ」

「ダメ?先生まだ電話に出てくれないの?」

「ウン、ツナガラナインダヨ、ヒトミチャン」

「どうしたのかな……?」

 メリーさんが実はずっと土屋家の黒電話に緊急念力コールしていた。だが誰も出ない。

「ダカラ、スマホモッテッテ、オネガイシタノニ……」

 今時の文筆家としてパソコンもネットも使いこなせる土屋先生。だが一方、茶道家として人に煩わされないゆったりとした時間を大切にする先生は、これまで携帯電話というものを持ったことがない。連絡手段はPCメールか、さもなくば玄関のあのレトロな黒電話のみ。

 しかし、八ッ神恐子たちのせいで異常事態が多発する今日この頃だ。メリーさんは先生に、万一に備えてスマホを持って欲しいと頼んでいた。だが土屋先生、やはりどうも気が進まなかったらしく、今度今度とはぐらかされていたのだった。

「ハジメカラ、オクサマニオネガイシタホウガ、ヨカッタカナ……?」

「やー、でもそれも無理だったよね。蛍子さんは機械すごく苦手だって聞いてたけど?」

「ソウナンダヨネ……『ラクチンホン』デモムズカシソウッテ、ウナッテタカラ」

 それにしても、今その蛍子も電話に出ないのは何故だろう?二人で出掛けてしまったのだろうか?困った顔を見合わせるメリーさんと仁美。

「こうなったら直に行ってもらうしかなさそうね。お願い、メリーさん!」

「ウンワカッタ。センセイニオシラセシタラ、スグモドルヨ。ヒトミチャン、ミンナニヨロシクネ」

 と、その場から掻き消えた呪いのお人形。まさか自分でも思っていなかった、()()()()()()()()()()()()()()()()()とは……

そして仁美は思う。

(あとツッチー、あいつめ!早苗連れてどこ行っちゃったんだろ?早苗が見つかればみんなで逃げられるのにさぁ……!)


「お前の母ちゃん、でーべーそー!!」

 現代怪異と呼ばれるものの、ルーツを1970年代末に持つ口裂け女、実は普段から言動がビミョーに古い。そして、

「ああお前ェェェ!おっ母ちゃんの悪口は許さないわよぉぉぉ!お前こそ!このいないいないばぁーーーーーーか!!」

 と、口先ではその相手をしながらも、実は八ッ神恐子はそれどころではない。今肝心なのは電話の方だ、だがこちらもやはり土屋先生には全く繋がらない。

(そうだ、こうなったら()()()()()()()()だけど、先にあの爺さんに電話して……)

 そして何を企むか、今度は鴻神神社の社務所にコール。

 しかし。

(着信拒否ィィィィィ?!さてはあの無能力神主!!)

 御名答、それは俊介の当然過ぎる防衛措置。ていうか、今さらどうして自分の電話を取ってもらえると思ってるんだろこの女。そして生憎、巌十郎も今時の御老人の中ではずば抜けて新しい物に疎く、ケータイの類を持ち合わせない主義。社務所の代表番号以外、彼に連絡出来る番号を恐子は知らない……

(あっ!そうだわ2号の携帯番号!)

 八ッ神恐子は思い出す。この間、高校からパクった名簿にそれが載っていたはず!

(孫のあの娘から伝えさせればどうかしら?今時のコは知らない番号からかかった電話は取らないものだけど……やるだけやってみるべきね!

 ええとこれだわ、『ピポパポ……)

 メモを片手に今度は早苗にコールし始めた、その時!

「と、突撃ゴッツンぱーーーーーーーーーーんち!」

「……プ』!ああ違う、『プ』じゃない『ぺ』よ!」

 ノッコが勢いよく宙に飛び上がり、ダブルパンチの構えで突っ込んでゴーンと円盤を揺らす!衝撃でスマホの上で恐子の指が違う番号に滑った。

(ととと、とにかくセンパイを逃すまでは!ケバケバさんはわたしが引きつけないと……見つかっちゃう!)

 そう、ノッコも焦っているのだ。そして焦ったノッコは気付いていない、頭の中から飛んでいる。早苗の居場所、自分が誰かに伝えなかったら、逃してもらうことも出来ないということに!

 そう、今やノッコはすっかりハイテンションにテンパって、円盤上の恐子に向かいカモンカモンとアピールしながら。

「さぁケバケバ女さん!ここはこのわたし、(スネーク)(リトル)(プリンセス)・ノッコが相手になりますよー!かかって、こぉぉぉい!!」

「ああもぅホンッッットにこの娘お邪魔!

 ていうか前から聞きたかったけどぉ?!あんたたちの言うその『ケバケバ女』って何ィ?!

 ……プリンセスぅ?自分だけカワイコぶるんじゃないわァァァァ!!」

 かくして。何もかも、誰のすることも歯車がビミョーに噛み合わないまま、遊園地の騒動は何となくヒートアップしていく。

 ……そしてまさに、今この時。


(ワ、ワタタタメメメメ、ウゴケナオニギョギョギョギョギョ……)

「ふむ?これも貴様の手下か、土蜘蛛よ?」

 巌十郎が手にガッシリと捕まえているのは、古ぼけた一体のフランス人形。そう、メリーさんだ。そして彼女はそのままピクリとも動かない、動けない。

「さては貴様の助太刀に来たか?なるほど、見た目に寄らずそこそこの妖力はあるようじゃが、この程度では!

 ……飛んで火に入るなんとやら、じゃ」

(むむむ……)

 土屋家の玄関前の坂をさらに登って、ここは丘の上にある公園。

(先代の力、これ程とは……)

 そこに巌十郎が張り巡らせていた結界に、土屋先生は閉じ込められている。糸で敵を雁字搦めに絡めとる大蜘蛛が、今やまるで立場が逆。そして先生を得意の追跡術で探して追ってきたメリーさんも、この場にうっかり飛び込んでしまったばかりに、同じ力に捉えられてしまったのだ。

(それにどうやらこの術は、この私のための特別な……?!)

 蛇神と土蜘蛛は、千年余の時を経て最後の最後、八百比丘尼寂桜の仲立ちで十五年前に和解を果たした。今や土蜘蛛=土屋先生は蛇神の最大の理解者であり、その秘密の守護者を自らに任じている。

 ……だが、過去累代の鴻神一族の神官たちが、彼らにとって遠い未来のその事の成り行きや、今日の土蜘蛛の改心を見通せていたはずもなく……逆だ、彼らはむしろ研ぎ澄ませてきたのだ。蛇神の仇敵、大妖怪・土蜘蛛が、万が一復活した時のために!それを封じ滅するための秘術を!

「これぞ『鴻神流蟲封之術(むしふうじのじゅつ)』、味はどうじゃ!

 代々の御先祖様が大切に、このわしまで受け継いで下さったこの術、じゃが使うのは今この時が、わしが最初で最後。

 ……覚悟せよ、土蜘蛛!」


「ニャア♪……あれが恭子ちゃんが術でこしらえた宇宙人ロボかぁ!やっぱりあの子はすごいねぇ、ていうか村にいた頃より、ずっと術が冴えてるよ。きっと修行も研究も頑張ったんだね。えらいよ恭子♪

 ……でも少年?何でカニ?」

「いやぁ、そこのところは僕には……」

 大騒動中の昴ヶ丘後楽園。怪異たちが客も職員も避難させ、入場口を締め切ったはずのその場所に、新たに入り込んだのは二匹の猫。言わずと知れた、それは珠雄とさつきだ。猫の姿の方が侵入するのに便利だったし、何より珠雄はまだ仲間たちと鉢合わせはしたくない。この姿ならこっそり活動するのにうってつけ。

 そして二匹は物陰から物陰へ伝い伝い、

「お、少年少年、コーヒーカップがあるぞ♪」

「いいですね、行きましょう」

 それは確かに、()()()()()()絶好の隠れ場所だ。しかし、二匹がサッと連れ立って飛び込んだそのカップには。

「猫?シッシッ、ここに来るでない!今な?某たちは取り込みちゅ……んん??この妖気、まさかお主は……」

「アババババ、違いますよ僕ただの猫です、珠雄なんかじゃありませ……」

「バ~カ、しゃべったらバレるって少年♪」

 早苗をかくまっている槌の輔と、カップの中で二匹が見事に鉢合わせ。いつも小癪な程に冷静な珠雄の狼狽える顔に、さつきはあからさまに喜びながら。

「クンクン、お、憑いてる憑いてる!蛇の匂いだ♪しかもツチノコだよ懐かしいね!ということはええと誰だっけ少年?これが確か……トトノスケ?」

「槌の輔である!というかそっちのお主は何者であるか?」

「あたしかい?あたしはね、猫又のさつき♪いづ……」

「わぁーーーっと!あのそのあのその!」

 出雲の()まで言わせず珠雄は慌てて遮る。

「こ、このひとは僕が普段からお世話になってる猫又さんでぇ!ちょっと力を貸してもらえることにぃ!」

「おお我らに助太刀であるか、かたじけない。なるほど其方そなた、見ればかなり位高き猫又にござるなぁ、頼もしい!」

「ニャハ、それほどでも()()けどな♪」

 と、一応自己紹介らしいものが終わったところで珠雄が。

「で、あの槌の輔さん?何でこんなところに?いえわかってますよ、早苗さんが今ダメだってことは。じゃなくて、何でこんな小さなコーヒーカップなんかに?」

「いや、ここなら姿を隠しながら敵の動きも良く見えようかと……()()()()()()()()()()()()……」

(それはさぁ、僕たち猫や、あなたの元々の姿のツチノコの体ならね。女子高生の早苗さん隠すには、ここじゃどうにも小さいでしょ……)

 今までの付き合いで、珠雄にも薄々わかってきた。このツチノコ、戦えば強いが他は頼りない、機転が利かなすぎる。

「巫女殿を逃がさねばならんのだが、ケバケバが上から見ている、下手に動けなくなってしまってな。小姫様にはお知らせしたものの、ケバケバの気をそらすのに夢中になられてしまい……こうなっては御伽衆に助けを求めるもままならず……タハハ」

 なるほど、と。半分呆れて頭を抱えながら、ならば自分たちはいいタイミングで現れたと珠雄は思う。

「さつきさん、槌の輔さんが憑いてるこの女の子を、安全なところに逃がしたいんです。八尺様さんにお願いしていただけませんか?」

 さつきを昴ヶ丘に連れてきた、出雲の八尺様。彼女は二匹が園に入る前に姿を消していた、「また呼んで」と一言残して。

「がってん、少年♪」

 するとさつきは後ろ足で体をカキカキ、あたりにふわっと散った毛を一本の尻尾でくるくると絡め取る。

「これをこうして♪……ミヤ!」

 呼び声一つ、毛玉が変化したのは、先ほどのあの折り紙の猫。そしてさつきに答えるようにニャアと一声、すぐにその場から消えた。

「今、()()()に八ちゃんを呼びに行かせたから。じきに来てくれるよ♪そうだねぇ、あと二、三分かな?」

(ああ、あれってそういう術……ミヤ子?名前あるんだ)

 まるで孫悟空、珠雄は感心しきり。やはりさつきの猫又レベルは相当なものだ。いやあるいは。

(八岐大蛇がくれた力なのかも。もしそうなら)

 カップの中から珠雄はカニ円盤を見上げる。

(悪いけど今のあなたには、その力はあげられないな。スミさんのためにもね……!)


「あれ?お留守かな?」

 土屋家の玄関の呼び鈴を鳴らすこと、すでに五回。ニコは怪訝な顔になる。いや実は、駅を降りてから彼女も、自分の訪問を告げるため土屋家に携帯で連絡を取ろうとしていたのである。だが電話には土屋も蛍子も出ない。かくなる上はアポ無しでもと、ここまで来てしまったニコであったが。

 あるいは、夫婦で園に向かったのかもしれない。土屋はもちろん、蛍子も位の高い妖怪だ。自分と違ってきっと役に立てる……

「うぅん……仕方ないな。ここでこのまま待とう」

 いつもの切ないため息をつきながら、そうつぶやいたがしかし、ニコの手は玄関の扉のノブに伸びていく。

(ちゃんと確かめよう。開いてなかったらお留守なんだから。あれ?)

 ノブは素直に回る、鍵はかかっていない。

「あのぉ、こんにち……ええ!?」

 おずおずとドアを開けて宅内に声をかけようとしたニコが驚きに目を見張る、玄関口に、蛍子が倒れている!さっとその場に踏み込んで駆け寄り、声をかける。

「ノッコちゃんのおかあさん!どうなさったんですか?しっかり!私ニコです、私の声が聞こえますか?」

 だが蛍子はぐったりと動かないまま。急病だろうか?重ねて声をかけながら、容態を確かめようとその肩に触ったニコ。するとその手のひらを伝わってニコの心に直に聞こえてきたのだ、蛍子の声なき声が。

〈助けて……大殿様が……〉

「……おかあさん?!」

〈ああ弐ノ口さん、お願い……みんなに知らせて……大殿様が、鴻神の先代様に……!〉

「ええ?!今なんて……大変!!」


「あーーーーーーーーーもぉ!!ムッカつく、恐子なにやってんだよ、遊んでンのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 そしてここに、そろそろ辛抱しきれなくなったプレイヤーがもう一人。

 そう、一向に進まない事態にじれきった、ヤスデである。

「早く()()()()()()()()のにーーー!!」

(続)

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