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怪異さまナー☆TSU・CHI・NO・KO ~口裂け女さんですか?昨日も一緒にお茶しましたよ?~  作者: おどぅ~ん
パートふぁいゔ ゲロっとグロゲロ・バリっとヤスデ

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そのサンジュウヨン 土屋さんと巌十郎さんと恐子さん

「ぽぽぽ……まぁ早苗さんったら!一度コーチしてあげただけなのに、神隠しとっても上手ね♪ほらメリーちゃん、どんどん来るわ!」

「ワタシメリーサン、コンカイノ『デジタルオフダ』、カイシンノサクダトオモウ、オニンギョウ♪」

「待て待てお前たち、何がどうなってるって?」

 今日も今日とて、増える一方のグロゲロたちの様子を見に隠れ里にやって来た口裂け女は、仲間たちの賑やかな様子に割り込む。

ぽぽぽぽぽぽぽぽ(かくかくしかじか)

「早苗に?お前たち二人で神隠しの術を授けた?いやいいよ、早苗ならね。いい思いつきは別にあたしに断らなくてもいいが……すると何かい?今ここにコイツらを送り込んでるのは……おいおい次から次、こりゃ大変な数じゃないか!早苗のとこで何が起こってるんだ?」

「あらそう言えばそうね?ぽぽぽぽぽ……」

 呑気な調子であの「画面」を作り始める八尺様。

「何だいこりゃあ!」そして、映った光景を見て目を剥く口裂け女。

「とんでもない数だよ……ケバケバのヤツ!でもどうしたもんかねぇ?鴻神神社の周りってことは、あの爺さんもいるはず。あたしらは出ていけないし」

「ぽぽぽ、そうねもう一枚……ほら口裂けさん、お爺さんはこっちに……あら?」

 早速「画面」をもう一枚、マルチモニターだ。そちらに映ったのは厳十郎、それは予想通りだが、しかし。

「一緒に女の人がもう一人?」

「……おい待ちな八尺!!もしかしてこりゃケバケバじゃないかい?!顔だ、顔!もっと拡大してくれ!メリー、お前はどう思う?」

「ムニャムニャ……メイクデ、パットミ、ベツジンダケド、ガッコウデタタカッタトキニ、コッソリトッタカオジャシント、デジタルショウゴウ……コッカクノトクチョウカライッテ……キュウジュウハチパーセントイジョウノタシカサデ、イッチ!

 マチガイナイヨ、コレ、ケバケバ!!」

「やっぱり!」


「えいえい!やっ!……あ〜もぅ!こんなのきりがないわ!遅れちゃうっていうか、今日は学校あきらめね……仁美に連絡しとこうかな【トゥルルルル】きゃっ?!」

 額に押しいただいていたスマホ、早苗が電話をかけようと目の前に下ろしたところで急に着信音。思わずビックリ、そして相手を見て二度ビックリ。

「え?口裂けさん?一体なになに?……もしもし?」

「早苗!まずい、お前の爺さんが今……いやそっちの様子はわかってる、怪物が溢れてるんだろ?八尺に見せてもらってる!んでな、お前の爺さんだけど!」

「……ええっ?!おじいちゃんとケバケバ女が、今?!」

「何か話してるみたいなんだが……八尺の術は声が聞こえない。何が起こってるのかよくわからないんだよ。あたしらがそっちに行けたらよかったんだけどさ」

 ()()()()の余計な働きのおかげで、巌十郎の前には怪異たちは当分姿を現すわけにはいかない。それは早苗も聞いている。

「わかりました!神隠しは中断して、私が様子を見にいきます!」

「気をつけるんだよ早苗!……メリー、お前は念のため先生に!」

「ソレガ……クチサケチャン、センセイナラモウ……」

 メリーさんと八尺様が二人揃って指をさす、その画面の中に映るのは紛れもない、土屋のシルエット。

「……はぁぁぁぁ?」

 呆気に取られた口裂け女の裂けた口の顎が、マスクの下の縁を越えて下に落ちる。


「やや先代様、今朝は大変だ。どうしたことでしょうね……むむ?!」

 辺りの異変に驚くような顔で、厳十郎にうっかり声をかけに近づいた土屋先生。ところがまさかの人物の存在に本当に驚く。そして大いにうろたえる!

「あっ……と、先代様、お、お話し中でしたかなぁ?」

 口裂け女たちは「画面」のややぼんやり映像から判別に手間がかかったようだが、近間で直に会えば一目でわかる。巌十郎が話しているのはあの女妖術師ではないか。

 もちろん土屋先生すなわち土蜘蛛が、彼女に恐れをなしたわけでは無い、しかし。

(いやいかん、これはいかん、今はいかんよ!)

 巌十郎には、自分の正体を知られるわけにはいかない!

 無論いつかは、と思ってはいた。だが自分は妖怪、それも鴻神一族が大切に奉じる蛇神の、伝説上での宿敵だった者。ついつい今まで彼には名乗り出ることが出来ずにいた。そして先日、図らずも彼の孫娘早苗に先に真実を打ち明けてしまった。ならばいっそ、このまま彼には内緒のままで、陰ながら見守り力を貸していくのもよいのでは、と。考えていたところだった矢先に!

 いくら何でも今この場では……どう説明しようと理解も納得もしてもらえる自信が無い、そもそも自分の心の準備がなさ過ぎる。だが、このままあの女に暴露されれば一巻の終わりだ!

「ひゃっ!ややこれは……つ、土屋さん、い、いいお天気ですのお!」

 一方巌十郎。慌てて着物の袖で泣き顔を拭うと、こちらもだいぶトンチンカンにうろたえる。お天気どころの場合ではない。

 土屋という人物。巌十郎にとってはもともと気を許せない存在だ。悪質な者ではない、だが、彼は蛇神の秘密を探っているのでは?聡明な息子俊介からそうサジェストされているではないか。

 その土屋に、今この怪しい大蛇信者の女と立ち話の様子を見られたとは……何を勘付かれるものかわからないし、第一今日の彼のこの登場は不意打ちが過ぎる!

「あ?!えと、あのぉ、は、はじめましてぇぇ?!」

 さらに一方八ッ神恐子、こちらも裏返った声でトンチンカン挨拶。

(えっ?!はぁ?!どどど、どうしよう?!)

 変装コンタクトレンズの裏で、驚きの眼がでんぐり返し。現れた男の顔、よく覚えている、どう見てもあの土蜘蛛だ!これ、もしかして大チャンス?けど、まさか今ここで二人を戦わせるの?いやそれはちょっと……まだいろいろ準備というものが……何より私、まだ心の準備が全然できてないわ!

 それにどうやら、この二人は顔見知りのようだ(それを知らなかったのも君の調査不足だけどね、毎朝神社にお詣りしてた男だよ?)。そうと思えば、やおらムラムラと湧く疑心暗鬼の心。もしやとっくにお互い正体を知っていて、大蛇信者の自分を罠にかけるつもりなのかも、と……この女、相変わらず余計な頭はよく回るのである。

 かくてその場に出来上がったのは、奇妙な三すくみ。引きつった作り笑いのトライアングル。それを取り囲むのは、なんだか野次馬のようにじわっと集まるグロゲロたち。「自分たちを倒せるエネルギーを求め」ているのだろう。いつも通り、ただ無意味に蠢くばかりだが。

 総じて、実にシュールな光景。前衛芸術映画もかくや。そして闇では、その様子を無音で見ている口裂け女、何が何やらちっともだ。いやどうせなら、一戦持ち上がってくれれば自分たちも動けるのに、これでは……じれったいやら焦るやら。

「こうなったら……もうお前だけが頼りだよ早苗、どうにかしておくれよ!」

 いや、とんでもない無茶振り。メリーさんは見上げて思う。

(マタ、クチサケチャンノ、ワルイクセ……)


【トゥルルルル】

「あれ、俊パパだ?【ポチリ】おはよパパさん、どしたの?」

 さてまたこちらは、駅から校門までのあの坂を登っていた、通学途中の仁美。電話口から聞こえてきたのは、俊介のいつもと変わらぬジェントルな声だ。

「やあ仁美ちゃん、おはよう。実はね、早苗がちょっと学校に遅れるんだよ……ああいやいや、別に大したことじゃないんだけどね。

 ()()()()()()()()()()()()と思うんだ。訳は本人から、ひとまず遅れることだけ、先生方に伝えておいてくれないかな?僕が承知してることだからって」

「わっかりましたぁ!」「よろしくね」「んじゃ!」

 電話を前にシュバっと敬礼ポーズ、おどけた返事で仁美は電話を切る。真面目な早苗が遅刻とは珍しい、チラリと妙な気もしたが、今の俊介の穏やかな声の調子を思い出しすぐケロッと安心して。

「あれかな〜?また修行頑張り過ぎちゃった、とか?」

 小首をひとつ傾げただけで、仁美はすぐにズンズンと坂を登っていく。そう、彼女は気が付かない、それならば父兄が直接学校に電話すればよいということに。

()()()()()()()()()()()()()()()けど、始業前までに一報だけは入れとかないとね。任せたよ仁美ちゃん。さて、それじゃ……僕も一仕事と行こうか」

 そう、今から俊介にはやる事がある……


(いやいやいや、何これ、どんな状況?こんなの無理ムリ!誰になんて声かけたらいいの??)

 四つ角の物陰からそっと顔だけ出しながら、早苗は頭を抱える。厳十郎と八ッ神恐子、それに加えて何と土屋まで!この三人がまとめてボーっと突っ立っている今のこの状況、不自然過ぎる。自分が下手に動けば一触即発だ。

(せめて槌の輔様がいてくれれば……あ、ダメそれダメダメ)

 すぐに思い直す早苗。彼は何かと頭の融通が利かな過ぎる。こんなところに呼んだら間違いなくトラブルしか起こさない。

 窮した早苗が繰り出したのは。

「CQ、CQ!もしもし口裂けさん?こちら早苗、現地に到着いたしました。

 ……()()()()()()()()()()()!」

 これぞ必殺・依頼丸投げ返し。

「だっ……いや何言ってんだよ早苗、今そこはお前がさぁ!」

「や、ちょっと口裂けさんそれズルくないですか?だって、こんなのどうしたらいいっていうんですかぁ?!ご指示ご指示ぃぃぃぃ!……()()()()()()()!!」

 おやおや、壁に張り付き電話にかじりついている早苗のそばも、数体のグロゲロがまとわりついてきた。特に何をされるわけではないが、眼の前で触手がごちゃごちゃしているだけで相当うざったいのである。

「シッシッ!今大切な話してるんだから!あなたたち邪魔ったら邪魔!!口避けさん指示ーーーー!!

 ……あ」

 電話に夢中になり過ぎて、そしてグロゲロに気をとられ過ぎて。早苗はついつい大声に、体は物陰からはみだして。

 気が付けば、あの三人が向こうから自分をガン見している。

(あれはまさか早苗君んん?)(さ、早苗ぇぇぇ?)(お、お邪魔娘2号〜〜!)

(見、見つかっちゃったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)

 ボー然トライアングルが四角形になった、その時、突如!

「「「「!!」」」」

 土屋、源十郎、八ッ神恐子、早苗。いずれも優れた霊能力の持ち主たちが、全身でズドンと感じたその()()

 それは忽然と、社から迸った強大な霊的波動だった。

 そして見よ、その瞬間。鴻神神社周辺を埋め尽くすがごとく徘徊していたグロゲロの群れが、全て跡形もなく何処にか消滅したではないか!


「うん、()()()()()()()()()()()()ようだ。これで早苗を学校に行かせてやれるね」

 社の本殿で、神主の装束に御幣を胸に抱えて。俊介が満足そうに頷いていた……

(続)

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