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怪異さまナー☆TSU・CHI・NO・KO ~口裂け女さんですか?昨日も一緒にお茶しましたよ?~  作者: おどぅ~ん
パートふぁいゔ ゲロっとグロゲロ・バリっとヤスデ

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そのサンジュウサン 鴻神巌十郎

「ビミョーに気はすすまないけど……これ作戦だもンね。恐子もスタンバってるはずだし。よっし!」

 ヤスデは自分の頬を両掌でペシャっと叩いて気合を入れる。

「フラフラ君、準備は?オッケイだね?」「フラー!」

 プチサイズ独特のやや甲高い声で、威勢よく返事をする宇宙人。見ればなんと、その全身鈴なりに取り付けられているのは、いくつものあの「圧縮カプセル」だ。

「んじゃ、とっとと()()()()()()()!作戦開始ィ!!」

「フラララー!!」

 シュバッとお互いに敬礼ポーズを交わすと、宇宙人はヤスデを抱きかかえ、そして空に飛び立った。時はまだ、日の出にも大分ある早朝三時前。目指すは……?


「むむむ?何たることじゃ?!」

 その日。朝行を共に終え下社から出て来た厳十郎と早苗の耳に聞こえた、なにやらただならぬ騒ぎ。顔を見合わせた二人、正面参道を抜けて境内から出ると。

「すごい数!」

 あちらにもこちらにも、石を投げれば当たると言いたいほどに、道々に群なす黒い怪物たち!


 八ッ神恐子がヤスデに授けた「作戦」。

「鴻神神社を中心に、半径百メートル。その円上の地点になるべく満遍なくカプセルをばら撒きなさい。カプセルは私が遠隔操作で一斉に開けるから、貴女は次々設置するだけでいい。簡単でしょう?

 ただしあまり神社に近づき過ぎないように……あの爺さんに勘付かれるといけないから。決行時間は明日の早朝三時、私がカプセルを開けるのは四時半としましょう。時間には十分余裕があるから、くどいようだけど隠密行動優先で。慌てないでね。

 今回の作戦で使うのはカプセル十本。つまり……三百匹の小グロゲロが一度に街に……どうヤスデ、ちょっと見ものだと思わないこと?」

 もちろんヤスデはおおいに怖気を振るったのだったが、八ッ神恐子はここはシレッとした顔で。

「そう、カプセルを開けたら、小グロゲロが街に溢れる……もちろんあいつらを一匹一匹コントロールなんて私にも出来ない。でも本能的にじわっと神社に集まるはず。小グロゲロには自分たちを倒せるエネルギーを求める習性があるのよ。T()D()Q()()()()()()()()()()()()()()()わ。

 つまり。あの爺さんが朝行を終えた頃には、いい感じに神社に押し寄せてくれているのではないかしら」

 相変わらず、八ッ神恐子の言葉はどこか他人事。自分で造った怪物のはずなのに、「記事に書いてあったから」とはどういうことか?しかしこの際、ヤスデはそれどころではない。

「で、あの?恐子ぉ、あたしはカプセル撒くだけでいいんだよね?全部置いたらさ、もうそこにいなくても……?」

「え?うふふ……ええ、もちろん」女妖術師は苦笑気味。

「設置が終わったら、今回の貴女の任務はお終い。プチと一緒にどっかで遊んでなさい。敵に見つからなければ、どこで何をしていてもいいわよ」

 そういうことなら。ヤスデの顔はたちまち、ゲンキンに明るくなったのだった。そしてどうやら、彼女は首尾よく自分の仕事をやり遂げたらしい。


「如何致しましょう、お師匠?」「うむ、お前も頼む」

 と、即答してすぐ悩ましい顔になる巌十郎。彼は早苗の師だが、祖父だ。今の早苗の実力をもってすれば黒い怪物は雑魚同然、危険とは思わなかったが、しかしこれほどの数では。

「じゃが済まん早苗、学校に遅れてしまうのう……」

「いいのおじいちゃん、これ、ただごとじゃないから!」

 師弟関係と肉親の情、早苗は綺麗に汲み取り切り分ける。頼もしい孫娘にもう一度うむと頷いて。

「早苗はそちらから、わしは向こうを。じゃが深入りするな、もし何かあったらすぐに御社に戻れ。おそらく彼奴らは御社には入れぬ」

 蛇神を閉じ込めながらも堅く守る社の結界。力の弱い雑霊には破ることは叶うまい。

「わかりましたお師匠、では!」

 早苗は厳十郎の指図どおりの方向に、だっと走る。若鮎のように溌剌とした孫娘の姿。

「早苗……」

 だが巌十郎の見送る視線は悩ましかった。


「よし、ここらでいいわね」

 早苗の周りには今、右も左もグロゲロたちがわんさかと。だが早苗は慌てない。小グロゲロたちはいつも、向こうから襲ってくることはない、「攻撃待ち」が常。

 早苗は後ろを振り返る。祖父の姿はすでに見えない、お互いだいぶ離れた。

「ちょっと不安だけど……ここならバレないよね……よし!」

 早苗はまたもやスマホをサッと取り出す。このところ、オカルト的な意味ですっかり便利グッズになったそれ。片手で額に押しいただき、

「アブラカタブラ……お願い八尺様、えぃ!」

 気合いと共に、一体の黒い怪物の足元にもう片手で指をさすと、そこからたちまち噴き上がる黒いモヤの小さな竜巻。怪物を巻き込んで、その姿が忽然と消える。

 決して攻撃してはならないという、黒い怪物・小グロゲロ。その対策として、早苗は怪異たちの力を借りることにした。八尺様の神隠し能力を、メリーさんの力でスマホにアプリインストール!

「これこそめっちゃ()()だけど……」

 早苗は普段から、巌十郎にきつく言われている。

「これからはお前は、祝詞は元より、例えば仏事の真言・念仏・題目のような言葉も、うかうかと発してはならぬぞ。今のお前の霊力では、それらの本来は清き力溢れる言葉が、ふとした雑念で曲がった働きをしてしまうやもしれぬ。多くの外道外法と呼ばれるものは、かつてそうして編み出されてきたのだ。

 仏に祈るならば仏に、キリストに祈るならばキリストに。しかと正しき敬いの思いを込めて唱えるならば、およそ間違いはなかろうがな」

 早苗が今用いた神隠しの術。呪文はありあわせの適当、しかと思いは寄せているけれど、祈る相手は怪異の八尺様だ。これを外法と言わずして何を外法と言うのか。いやはや、とても祖父の前では使えない。

「おじいちゃんの方から手分けしようって言ってくれて助かったわ。一緒に周れって言われたら、どうしようかと……」


「ふむ、大分早苗も離れたな……かぁっ!」

 気合一つで、巌十郎の近くにいた怪物が二、三体、一度に影も形もなく消滅する。

 すると。

「お見事。流石は先代様……はっ!」

 早苗を遠く向こう側に、反対側から現れて、同じく怪物を数体消し去ったのは。

「やはりな。来ると思っておったぞ」

 謎の女・八掴今日子、すなわち読者諸氏にはいわずと知れた八ッ神恐子だ。そして巌十郎はどうやら、彼女の出現を予感していたらしい。

(早苗には、この女とわしが話すところは聞かせたくなかった。()()()()()()()()()()わい)

 すべては思惑通り。

「じゃがお主、大分厚い面の皮よの。京都の御本社から来たなど、まったくのデタラメ……倅が確認を取ってくれたわ」

 ピクリと片眉を上げる八ッ神恐子。いや、彼女の方も巌十郎のその反応は想定通り。軽く傾げた小首に唇にはうっすらと笑み、余裕綽々だ。黙って彼の次の言葉を待つ。

「何を企んでおる?」

「土蜘蛛退治」

「大蛇信者のお主が、か?邪魔なのはこのわしのほうではないのか?」

「ええ、とっても。鴻神厳十郎、貴方は私にとっては目の上のタンコブ、長年のね」

 その正体素性を喝破されても、女妖術師はなおも平然としている。

「私たちはいつか、必ず貴方たち鴻神一族を滅ぼして、大蛇様の力を手に入れる。ただ……それを成し遂げるのはこの私でなくてもいい。後に続いてくれる者は他にもまだいるわ。私たちは何年も、太古の昔から待ったのだもの!今更焦ったりはしない。

 でもね?土蜘蛛は蛇神の宿敵、大蛇様にも間違いなく仇となる存在。そして土蜘蛛は、この千年で大きく力を蓄えた……また蛇神に挑もうとしているのよ、貴方を倒して、蛇神をこの世に呼び出して!

 ……ご覧なさいな、この薄汚い怪物たち。これはね、土蜘蛛の仕業よ。こんなカスみたいな雑魚だけれど、でもこんなにたくさん!多分これは小手調べ。土蜘蛛が貴方の、鴻神一族の長の力を測ろうとしているのよ」

 虚々実々。真実も織り交ぜつつ、肝心なところは全て偽り。八ッ神恐子の舌はなおも滑らかに回る。

「さぁ私はこの際、どうしたらいいのかしら?鴻神厳十郎、土蜘蛛に貴方を倒してもらう?でもその後どうしたらいいの?そんな化け物を今度は私が一人で相手にするの?まっぴらよ!むしろここは……敵である貴方と手を組んででも、土蜘蛛を片付けた方が……()()()のためよ」

「後の世か!ふん、お主らの望む『後の世』など、決して来させてなるものか!じゃが、一理はある」

「でしょう?ねえ貴方、私はこうして貴方に正体を晒してしまったわ。つまりもう貴方を狙うことは出来ない。土蜘蛛を首尾よく倒せたら、少なくともこの私は貴方や鴻神神社から手を引く……また後の世の者に使命は任せるつもり。だから今は私に!」

「手を貸せ、とな?」

「ええ、そうよ!」

「断る」

 にべもなく言い捨てる厳十郎、ぐっと息を呑む八ッ神恐子。彼女の今回の作戦は肉を切らせて骨を断つ戦法。嘘とないまぜとは言え、自分の手の内をかなりのところまで晒してしまったのだ。これで彼が乗ってこないとなったら……

「わしは断じてお前などとは手は組まぬ。手は組まぬが……利用させてもらう」

「?」

「土蜘蛛……土蜘蛛め!女、お前の企みなどわしは知らぬ、知ったことか!だが……土蜘蛛め、彼奴だけは断じて許さぬ、この老骨の命に代えても、彼奴だけは絶対に滅ぼす!」

「??」

 話の風向きが変わってきた。この反応は予想外、呆気に取られる八ッ神恐子。そして。

「女!わしは……わしはなぁ、悔しいんじゃあぁぁぁ!うぉぉぉぉぉぉん!」

「え?あの?」

 それはまさかの、突然の()()()()。拳を上下にブンブンと、足はドタドタと地団駄。まるで駄々をこねる子供だ。

「ええと……困ったわね……あの?ちょっと落ち着いて?ね?」

 こういうのはちょっと慣れてない。つられてうろたえる女妖術師。

「これが落ち着いておられるか、おーいおいおい……」

「わ、私がお話は聞いてあげる!聞いてあげるから!」

「早苗、早苗ぇぇぇぇぇーー!」

「さ?さな?何?誰?」

「わしの可愛い早苗……わしの孫が……よくもよくも土蜘蛛めぇぇぇぇ!!」

 厳十郎は着物の袖でグイと自分の顔を拭う。涙と鼻水でべしょべしょだ。そしておもむろに懐にその手を突っ込んで、取り出し八ッ神恐子に突きつけたのは。

「わしの早苗が妖怪に!唇を奪われたんじゃぁぁぁぁ!おのれ許さん土蜘蛛ぉぉぉぉぉ〜!」

 彼が自ら墨で写したあの念写。黒い毛皮に黒い鎧の男が、少女にのしかかってその唇を……

「え?いや?はいぃ〜?……あのその、早苗さん?貴方のお孫さんって、まさか……その?」

 愕然と鳩豆顔の八ッ神恐子、あの「お邪魔娘2号」が?……だから言っただろ、命を狙ってるターゲットの家族関係ぐらい洗っとけって。

「早苗よ、急に霊力が上がってどうしたことかと思っていたが、まさか妖怪に誑かされ魅入られてしまったとは……そして下僕に……さ、さてはまさか、まさかぁ!」

「て、()()までは!厳十郎さん大丈夫、大丈夫……()()()()()!」

 いやいや、その一言はこの際火に油だぞ。

「うぉぉぉぉぉん早苗ぇぇぇぇぇぇ〜!」

「厳十郎さんお願い落ち着いてぇぇぇぇぇぇ〜!」


(はぅ!)

 そして。早苗の背筋に走るのは、変な寒気。何かとてつもなくまずいことが起こっているような……ご明察、いいカンだね早苗くん。


(これは一体……)

 そしてそして。この所傷心のノッコをどうにか励まし登校を促して、今日は鴻神神社にやや遅い日参に現れた土屋は、神社の異変に目を剥いていた……

(続)

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