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怪異さまナー☆TSU・CHI・NO・KO ~口裂け女さんですか?昨日も一緒にお茶しましたよ?~  作者: おどぅ~ん
パートふぁいゔ ゲロっとグロゲロ・バリっとヤスデ

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そのサンジュウ 大グロゲロ

「あのぉ……B組の左波島くん、でしたよね?」

「……えっ?」

 昼休み。母手作りのツナサンド弁当に合わせ、購買で牛乳を買おうと教室を出た珠雄を呼び止めたのは、ニコ。

「急にごめんなさい、ちょっと聞きたいことが……ノッコちゃんのことで」

「ややっ!その……何の話かなぁ?」

 一瞬ギクリとした珠雄は、すぐに平静な顔に戻ったつもり。だが文学少女ニコの繊細な観察眼は、その動揺を見逃さない。

「やっぱり!何かあったんですね?」

 そしてじっと自分の面を覗き込むその眼にたぎろう妖気に、珠雄はおもわずたじたじとなる。急にこのコ妖怪じみてきた……いや元から妖怪なんだけども!

「あー、いや、えーと……」

 なおも悪あがき、なんとかごまかせないかと思って約三秒、結局そこでギブアップ。これは隠せないや。

「いいよ、だけど簡単な話じゃない、他人ひとに聞かれてもまずいし。学校じゃ無理、いい場所あるから、放課後にね!」

 言い捨ててそそくさと去っていく珠雄、ニコの頷きが見えていたのか?どうやら今日のランチ、せっかくのツナサンドも、大分味がわからなくなりそうだ。


「ここ、ここ!」

(あら?このお店って、前みんなで来た……)

 珠雄がニコをいざなったのは、あの「若葉」だった。入口のドアを押し開けると呼び鈴がカラン、相変わらず暇そうに新聞を眺めていたマスターがその音に気づいて。

「いらっしゃぁい……おや珠雄くん?お久しぶり〜」

「こんにちはマスターさん」

 珠雄もこの店は馴染み。何を隠そう、「若葉」のマスターも珠雄と同じあの妖怪マンションの住人。母・身衣子ともども昔からの知人なのだ。

 そして。

「そっちのお嬢さんも!この間はどうもね……フフフ、二口ふたくち同士、よろしく」

 と、エプロンの前ポケットから取り出したあのウエハースを、マスターはサクサクと《《うなじで》》齧りだした。

「キミこの間はさ、人間のお友達と一緒だったから、声はかけなかったんだよ。珠雄くんとなら大丈夫……ここは()()()()()だから。ゆっくりしてってね」

 目を丸くして口を押さえているニコに、珠雄もちょっと意外そうな顔。だがすぐに、彼一流の調子で如才なく。

「弍ノ口さん、このお店来たことあるんだ?へぇ……ま、そういうこと!ここでならお互い、いろいろ遠慮なく話せるよ」


「ノッコちゃんが……神の御子?育てのお父さんが妖総大将?鴻神さんの神社には蛇神が?宇宙人ロボット?邪神の信徒に狙われて?」

 とても消化しきれない情報量。目を白黒させながら、ニコはうなじに次々と安菓子を運んでいく。サクサクという音はひっきりなしだ。常連用の裏メニュー、大皿山盛りウエハースがみるみる消えていく。

「ハイおかわり……サービスサービス、この分のお代は無しだよ珠雄くん。

 いや〜わかるわかる、僕もね、夢中になるとつい食べちゃうんだよねぇ」

 空の菓子皿とおかわりをスイと入れ替え、ひょうひょうとカウンターに戻っていくマスター。なんだか嬉しそう。

 その背中をチラリと見送り距離を測って、珠雄は続ける。

「三人が君に黙っていたのは、君を危険に巻き込みたくなかったからだと想う。とくに早苗さんがね、そういう人だから。現にここまで知ってる僕も、()()()()()()じゃハブられちゃった。

 ……この間、大変なことがあったんだよ」


「とりゃぁぁぁぁぁぁぁ……おおっと!」

 トンカラトンの振るう日本刀が鋭くひらめく。なるほど、流石は口裂け女が認める「昴ヶ丘現代怪異一の強者」、本気さえ出せれば、その剣の腕はスーパーコーデ・ヤスデともどうにか渡り合えるようだ。ただし、敵には零距離電撃がある。回避の方により力をそがれ、決定的には斬り込めないが。

「それっ!」そこで口裂け女の鞭がうなる。回避したトンカラトンが追い打ちを受けないよう、絶妙のタイミングと間合いで援護。実はこの二人、息ピッタリだ。

「てけてけ、わしらもいくぞい!」「キキキ!」

 ピョイと(足が無いのに)飛び上がったてけてけの体を、ターボばばぁがはっしと抱きとめる。そして猛スピードで敵に駆け寄ると、すれ違いざまにてけてけのパンチがうなる。ヒット&アウェイ、これならヤスデの反撃も受けにくい。俊足のターボばばぁ、剛腕のてけてけ、こちらも息のあった合体攻撃。

 そして。

「ワタシメリーサン、コノスキニ、ミンナヲニガス、オニンギョウ!」「ぽぽ!」

 非戦闘員コンビも動き出す。倒れている早苗、寄り添って座るノッコ、二人の側にさっと駆け寄ると。

「サァ、ニゲヨウ!」「ぽぽぽ!」

「わたしは行けません!逃げるならみんなと一緒に!まず早苗センパイを!」

「むむ左様」小姓役として槌の輔は本来、あくまでノッコが最優先だ。だがこれまでの主従の付き合いでわかる、今それを言っても小姫様は聞くまい。ならば。

「今度は小姫様に某が憑く。小姫様の御神力をお加えいただければ、あんな輩におさおさ劣る某ではない。だが巫女殿は大分痛めつけられた……逃さねば!」

 早苗の胸の辺りから槌の輔はサッと飛び出して、そのままノッコの体に飛び込む。ガクリと脱力する早苗の体。

「すみませんみなさん、ノッコ……お願いします」

 早苗は素直に従う。自分はもうここまで、足手纏いになってはならない。あくまで謙虚で冷静だ。ただし。

「でも仁美は……?」

「……エ?」「ぽ?」「むむ、そう言えば?!」

 いつの間にか、この場に仁美の姿が無い!

「仁美センパイ?!」


 時間をちょっぴりさかのぼり、怪異たちがヤスデと戦い始めた、その頃。

「ヘイヘイヘ〜イ、ダメだぜ仁美ィ?」「あっと……くねくねさん?」

 戦いの場から消えた仁美、その姿があったのはなんと、ヤスデが飛び出して来たプラントの中。そして階段を駆け上がる彼女の前に立ちはだかったのは、くねくね。

「お前がこの建物に飛び込むの、ギリ見えてたんだ。どっちみち俺っちはケンカの役には立たないし、だったらお前をとっ捕まえなきゃってね、先回り先回り♪

 ……どこに何しに行くつもりだ?いやそりゃぁどーでもいっか、ヘーイ!」

 目にも止まらぬ速さでたちまち伸びるくねくねの腕、二メートル程先にいた仁美の体にぐるぐると巻き付く!

「八尺ちゃんほど上手くはないけど、人一人なら俺っちにだってさらえるよん♪んじゃお先に一名、闇までご案内……」

 相変わらずいつものふざけた調子、と思いきや、今日のくねくねは顔が真剣。彼も今の状況の厳しさはしっかり認識しているようだ。言い聞かせるような視線に、仁美もはっと顔色を改めて。

「待って!!お願いくねくねさん、もう少し、もう少しだけ!!」

 ジタバタもがくその勢い、その表情の一途さ。くねくねは思わず引き込まれる。

「んん?何だ、どした?」

「あたし、グレーターグロゲロが見たいんだよ、どうしても!一目でいいから!お願いくねくねさん!!」

「う〜ん、そうなぁ……そう言われると、俺っちも見たいかも。それに……」

 そうだ、今あの敵は仲間たちに気を取られている、これはチャンス。

「その大グロゲロってのもぶんどれれば……俺っち大手柄じゃん♪

 よっしゃ仁美、ちょっとだけな!でもヤバかったらすぐずらかるゼ?」

「ありがとう!確かもう二階上のはずだよ、あいつが窓から飛び出したのは!」

「んじゃ二階分だけ拐っちゃう、ホイとな♪」

 気楽そうな掛け声一つ、くねくねは腕でぐるぐる巻きにした仁美をグイと胸元に引き寄せて、たちまちもろともにその場から消える。一瞬暗転、再び明るくなった仁美の視界に飛び込んできたもの。

「ゴあゴあ〜」

 フロアの中央で呻き鳴いている、生きた黒いドーム。

「大グロゲロ!大グロゲロだ!!ホントに……ホントにいた……」

「……仁美ィ??」

 こりゃスゲェ、と、怪異であるはずのくねくねもその怪異なる生物(物体?)の姿に驚く。だがそれはつかの間だった。仁美の様子がどうもおかしい。

「すごいよ……すごい、ホントに()()()!」

 胸の前で祈るように組んだ両手、うっとりした顔つき、そろそろと怪物に歩み寄る、雲を踏むような足取り。くねくねは何かにピンと来る。

「いやそれ、アイドルとかそういうのじゃねぇと思うけどぉ?」

 そう、仁美のその様子はまさに、()()()()()()()に出会った者のする姿。どうなってんだ、と思いつつ、くねくねは彼自身の目的も忘れない。

「まぁいっか、よーするに仁美もアレも連れ帰っちまえば!」

 あいつも怪異の闇で安全に思う存分アレを拝める、自分もお手柄でハッピー。彼もつかつかと仁美の後を追う、ここはとっとと仕事に限る♪

 ……だがその時!

「あと三十秒!ワープはエネルギー消費がきつくて短距離しか出来ないけど、連続飛び石ワープでなんとか間に合ったわ。早くグロゲロとヤスデを回収して……んんん?何アレ??」

 工場内の高い天井、その空間に突如、宇宙人円盤がワープアウト。八ッ神恐子だ!そして彼女も驚く、大グロゲロの側に侵入者!

「……ソーサーウッズ!お前は回収、急いで!」

 ロボット円盤に司令一声、そして女妖術師はコクピットを開き、一人フロアに降り立つ。

「やっぱりいたのね、お邪魔虫ども!」

「やっべ!ずらかるぞ仁美ィ!!」

「心眼縛魔!!」

 くねくねが腕をビュンと伸ばし、仁美の体を引き寄せる。そこに八ッ神恐子が放った怪光線は、角度とタイミングが災いし、くねくねではなく仁美の体に命中!

「うわまぶしっ!!……で、何ソレ?」

「「……え??」」

 なんと、仁美には何の効果もない。撃った八ッ神恐子以上に、くねくねの方がびっくり仰天。妖術師のその術のことは、口裂け女からさんさん聞かされていた。あの「姐さん」ですら縛るその術が?

「……いや考えてる場合じゃねぇ!ハイ、クワバーラー!!」

 一瞬呆然、だが術の副作用で目がくらんでしまった恐子より、正気に返るのはくねくねが一瞬早かった。妙な掛け声一つ、仁美とともにきわどくその場から脱出!

「……いいえ、考えてる場合じゃないわ!」

 そう、八ッ神恐子にも事態を咀嚼する暇はない。すでに大グロゲロはソーサー内部に圧縮回収されていた。ならば!

「あと十五秒!!ヤスデ!!」

(続)

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