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怪異さまナー☆TSU・CHI・NO・KO ~口裂け女さんですか?昨日も一緒にお茶しましたよ?~  作者: おどぅ~ん
パートふぁいゔ ゲロっとグロゲロ・バリっとヤスデ

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そのニジュウキュウ 八千腕

「てぃてぃてぃてぃ、てぇい!キャハハ、どーだどーだぁ♪」

 宇宙人を鎧のように着込み、一心同体となったヤスデが、鍵爪の長い腕をビュンビュンと振り回してお邪魔娘2号・槌の早苗を攻め立てる。

 まるで子供がただじゃれているようなその動き、だが。

「むむむ……くっ、おのれ!」

 腕の回転の速さ、一撃の重さ、詰め寄る踏み込み(いや敵は浮遊しているのだが)、どれも二人のそれを上回っている!反撃も回避も出来ず、ただ手にする光の御幣で亀のように守りを固めるのみ。

(何たる妖力!いったいこれは……いや、さては?!)

 神の遣いたる槌の輔が、早苗の中で冷や汗をかく。

(大百足の娘ヤスデ、千年蓄えた妖力……ケバケバ女め、それを()()使()()術か!)

 槌の輔は土屋から、すでにヤスデの出自を聞いていた。「剛力無双、武において並ぶ者なき妖総大将一の配下、大妖怪大百足」、ヤスデはその娘。そして、山の廃棄物投棄場と昴ヶ丘高校で、槌の輔は彼女と二度の邂逅を果たしている。ただしどちらの時も槌の輔は、ヤスデの存在を問題としなかった。古く齢を重ねてはいるが、目立った力を持たない無害な妖であると。

 だがようやく思い至る。ヤスデはどうやら、己の内に込められた妖力を外に出す術を持たないだけ。その小さな体の中に、父・大百足譲りの莫大な妖気を長きに渡ってひたすら溜め込んできたのだ……もし、それを取り出す術があれば!

(からくり宇宙人の鎧にその妖力を吸わせて、使わせる……おのれ、あの女!)

【フララララ!一分経過!一分経過!】

「ええ、もう?面白いとこだったのにぃ〜!」

 一方、ヤスデが兜のように被っている宇宙人の頭部パーツ、その耳元に警報が響く。もちろんそれは八ッ神恐子がセットしていたもの。

 不満の鼻を鳴らしながら、それでもヤスデは。

「んでも急ごっかな、もう一人いるもんね♪まず一人目、トドメのサンダー!」

 打ちかかりながらのゼロ距離電撃攻撃、防御不能!たまらず弾け飛ぶ槌の早苗の体、そしてそれは倒れたままぐったりと動かない……

「センパイ、先に逃げて!」「……ノッコ!!」

 仁美の体をドンと一つ突き飛ばすと、ノッコはヤスデと早苗の体の間に割り込んだ。一蹴りで数メートルを飛ぶその速さ、仁美には止める間もない。

「キャハハ♪来たね1号、お前もこうだぁ!」

「こうしてこうして……アミアミ・バリヤー!!」

 からくもヤスデの攻撃を弾いたのは、ノッコが即座に編み上げた蜘蛛の巣状の妖力の盾。これもまたあの休学中に身につけた、養父土蜘蛛直伝の術だ。

 すると。急にヤスデの動きが止まる。キャハキャハと楽しそうに嘲笑う声も()()とやんで、ゆらりと棒立ちに浮遊しながら……

「お前、それ、さぁ……あいつの術だよね?」

 悪鬼のようにしわがれ、大波の唸りのように重く轟く。

 齢千年有余の大妖怪、父が付けた名は「八千腕ヤスデ」、それがその真の声。

「お前……あいつの……土蜘蛛のなんなんだ!それにその顔……!」

 2号を助けて空から一緒に落ちてきた1号のその姿。学校の大騒動の時は、ヤスデはてけてけが自分から離れても身を隠すのがせいいっぱい、そのほの白いシルエットを遠くからほんの一瞬ながめただけ。今、目前で初めて鮮明に見るその顔。

「恐子は言ってる、お前たちの力は『大蛇様』の力なんだって……違うよ、覚えてる……忘れるもんか!……その白い顔、蛇神そっくりだ!

 ……お前、一体蛇神の、なんなんだよ?!」

 早苗と槌の輔を守るため、無我夢中で飛び込んだノッコ。だが愛する養父と、未だ自分は相まみえたことのない実の母と、その関係を問われてノッコは思わずはっと我に返ったように。

「わたしは……わたしは!」

「……いけません小姫様、言ってはなりませぬ!!」

 ダメージで動かせない倒れた早苗の体の中から、槌の輔がかろうじて叫び制止する。

 そう、ヤスデの身分生い立ちを、槌の輔は確かに土屋から聞いている……ただし、ノッコにはくれぐれも内密の話として。

 なぜヤスデは八ッ神恐子に加担しているのか?賢明な土屋=土蜘蛛には、一つだけ見当がついていた。ヤスデは力を欲しているのだろう、と。

「槌の輔殿。ヤスデはわしを恨み憎んでおるのでしょう。無謀な戦に己が父を駆り出して討ち死にさせた、わしはヤスデにとっては親の仇です。そして、となれば……」

 ヤスデの父、大百足に直に手を下したのは蛇神。土蜘蛛の養女となったノッコはすなわち、二重の意味でヤスデの「親の仇の娘」!

「ですがそれは、元はと言えば全てわしの咎なれば……祝子には断じて、一片たりとも負わせるわけには参りません。あの子は知らない方が良いのです、何も!」

 今もし、ノッコが自分の身の上を明かしてしまったら。ヤスデは間違いなく蛇神と土蜘蛛の罪を言い募るに違いない、小姫祝子の小姓たる槌の輔は、それだけは絶対に防がねばならないのだ。

 目前には、怒りを陽炎のように立ち揺らめかせるヤスデ。背後には、傷つき倒れながらも必死に自分を止めようとする槌の輔。

「でも……でもでも、どうしたら?!」

 ノッコが困惑の小さな悲鳴を漏らした、その時。

「早苗!」

 辺りにたちまち巻き起こる闇のモヤの奔流。現れたのはすなわち、口裂け女と怪異の仲間たち。

「やっぱり何かあったんだね!まだ無事かい?!」

「口裂け女殿!なぜここに?——槌の輔様……黙っていて申し訳ありません……!」

 同じ早苗の口が、問いと答えを発する。早苗は万一を考え皆に内緒で、すでに今日の計画を口裂け女たちに打ち明けておいたのだ。そしてノッコがこじ開けた「入り口」から廃工場の敷地内に入り込んだ時、早苗はこっそりとメリーさんにメールを送っていた。

「『五分経ってもう一度メールが無かったら、地図の場所にみんなで助けに来て下さい。緊急事態です』だって?ふぅん、なるほどね……またコイツ()か!」

 宇宙人を着込んだヤスデ。一つの姿だが、口裂け女は妖気でそれが二人と感知している。そしてその危険度も。

「……トンカラトン!!」「おう!!」

 普段あれだけ邪険にしているトンカラトンに、口裂け女は全力を許す。彼もまたガラリと表情を改める。共に肌で感じるのだ、それだけの強敵!

【フララララ!フララララ!二分経過!二分経過!()()()()まであと一分!】

「うるさぁぁぁぁぁぁぁぁぁいぃぃ!!もういいよ、お前らみんなやっつける!!」

 そしてヤスデは、鳴り響く警報に激昂する。もう容赦はない!

(続)

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