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怪異さまナー☆TSU・CHI・NO・KO ~口裂け女さんですか?昨日も一緒にお茶しましたよ?~  作者: おどぅ~ん
パートふぁいゔ ゲロっとグロゲロ・バリっとヤスデ

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そのニジュウハチ 俊介

「ふむぅ……『土蜘蛛』とな?」

「先代様もおそらくこの名を聞いたことはおありでしょう。ただし御伽話として。土蜘蛛、千年前の妖総大将、蛇神様の宿敵と……」

 今日の町の怪物清掃をひとまず終えて、厳十郎は社に戻って来た。俊介は父に不審な客・矢掴今日子をやむなく紹介する。そして女が早速切り出したのが、その奇怪な言葉だった。仁美に続いてまたもや胡乱なことを言う女が現れたものだと、厳十郎が小首を傾げる。

 そしてそのやり取りを伺っている俊介は、実に意外そうな顔。

 俊介の目から見て、この女はすでに明らかに怪しい。だがもし何かを悪巧みをし人を騙すためというなら、逆にもう少し信憑性のある話をするだろう。この切り出し方はいくら何でも荒唐無稽過ぎて、意図が読めない。

 さらに。

「いかがでしょう?もし私が、その土蜘蛛が今現在、この昴ヶ丘に存在していると申し上げたら?私を大ボラ吹きだと思いますか?でなけれは気が触れている?」

「む……」

 己の心中を先取りするような女の問いに対して、厳十郎が返答に困る。確かに馬鹿げた話、だが目の前の女は一応、京都の貴船総本社から派遣された人物だという触れ込みだ。厳十郎も仁美のように戯言と一喝して追い払うわけにはいかないのだろう。

 その困惑を確かめた上で、女は。

「まずこちらをご覧下さい」

 女が持参した書類鞄から取り出したのはかなり大版の、今時珍しい白黒写真数枚。

「これも先にお断りしておきます。これはカメラでその場を直に撮った写真ではございません。念写です」

(念写……?)

 いよいよ怪しい、いや怪しいにも程がある。俊介は父の顔色を覗き込む。だが、さぞや父も怪しんでいるだろうと思いきや。

「むむ、これは……!」

 なんと厳十郎はと言えば、たちまちその写真に喰らいつくような視線だ。

「……いかがですか?」

「同じじゃ……この姿……あの日、御神鏡で遠見して見えたあの妖怪どもと!」

(何だって?父さん??)

 俊介はかろうじて顔色を保つ。心の中でその眉は、限界まで激しく吊り上がっていたのだが。


「「「「小っさ!」」」」

「あああああウッサイわねー!!」

「フラララララー!」

 さて一方その頃。オカルト研トリオとオマケの一匹は、怪少女ヤスデとお供の宇宙人ロボットと対峙中だ。

「さてはあのケバケバ女、黒い怪物どもを生み出すのに忙しかったか、力を使い過ぎたか……今度のあのカラクリ宇宙人、大分貧弱な造りであるな。これならいっそ逃げるよりもここで倒した方が」

「……いけません!」

 槌の輔の甘い見込みに早苗は断固首を振る。

「ここは敵のアジトでテリトリーです。何か罠があるかも!ひとまず退いて、戦うなら口裂けさん達を呼んでから!」

「だーかーらー!そんなことさせないって言ってるでしょ!フラフラ君!」

「フラララララー!!」

 途端に、早苗を狙って宙を猛突進する宇宙人。

 ……速い!!これまでの宇宙人も決して鈍重ではなかったが、こんな挙動は初めて。

「さては!」

 サッと早苗に飛び込む槌の輔。またもや手中から光の御幣を伸ばし、激突寸前に宇宙人を打ち払う。

「小さい分、小回りを利かせた造りか!」

 ガシンと大きな衝撃音、弾き飛ばされる宇宙人。だが。

「へへーん♪当たってるけどハズレだよ!今度のフラフラ君は、スピードだけじゃないんだから!」

 なるほど、槌の早苗の御幣の一撃を受けて、確かに宇宙人ははねのいた。しかし見れば、そのボディにはどこにもかすり傷一つない。

「サンショはコツブでピリッとね!恐子が言ってたよ、『ショボいのは大きさだけ、パワー!スピード!防御力!全部今までより断!然!上!』だって!

 ……新兵器だって付いてるし!フラフラ君、スパークサンダー!!」

 宇宙人は腕を伸ばす、その先端の鉤爪から放たれた電撃!槌の早苗はかわしきれない。

「きゃぁぁぁぁ!」

 その口からほとばしったのは、早苗の声の悲鳴だった。


「……あら?ちょ、ちょっと失礼いたします!」

 写真を取っ替え引っ替え、食い入るように眺め回している厳十郎をおいて、恐子はショルダーバックからスマホを取り出す。何かを知らせるバイブレーションに気付いたのだ。

(どうかしたのヤスデ?フラットウッズ・プチの活動レベルゲージが戦闘レンジに入ってる?)

 どうやら遠隔モニター機能があるらしい。

(何かあったのかしら……?まさか?)

 アジトに土蜘蛛一味の襲撃だろうか?

(土蜘蛛本人でなければいいけど……)

 他の者ならともかく、それだけはまずい。プチは恐子の自信作だが、流石に土蜘蛛の相手までは無理だ。誰もいなければそのままヤスデに連絡して確かめるところだが。

(……いや何なのこの男?!)

 恐子の面前で、俊介はもはや厳しい警戒の色を隠していなかった。その刺すように露骨な猜疑の視線。そう、かたや俊介はと言えば。

(僕は油断していたな。この女、どうやら霊能力者であることだけは本当らしいね。だったら余計にまずい。父さんは一流の霊能力者だけど)

 頑固で一本気で、機転や融通は利かない。つまりペテンには弱い性分。

(この女が持って来た妖怪の話が本当なら……いや父さんのこの様子だとそこはきっと本当なんだ、だからこそ!)

 父と鴻神流の力を、この怪しい女のいいように使わせるわけにはいかない。

「どうしました?何か大変なことでも?」

 スマホを手にした女の動揺した様子を見て、俊介は強引に決めつける。

「お話は大体お伺い致しました。ですが他に急用が出来たようですね?どうぞご遠慮なく、あらためてまた!!」

(や、この男、私を追い返すつもり?!)

(そうさ、そう言っているんだよ!さぁ帰ってくれ!!)

 二人の間に散る視線の火花。


「早苗!」「センパイ、ツッチー!」

 こちらに駆け寄ろうとする二人を、倒れた早苗は止める。

「来ちゃダメ!私は大丈夫、ちょっとビリっとしたけど槌の輔様が守ってくれたから——しかし巫女よ、かろうじてだ!あのいかづちはかわせぬぞ!」

 どうやら今回は早苗の意識も眠ってはいない、同じ口を二人で代わるがわる使っている。そして。

「「強い」」

 二人重なるその一言。

「ノッコ、あなたは仁美を連れて逃げて——小姫様ここは某たちで!」

「ヘヘーンだ!そんなん出来るわけないじゃん、でもだったら順繰りにやっつけてやるよ。まず2号、お前から……いくよフラフラ君、()()()()()()とっておきで!

 せーの、『プチ・アンド・ヤスデ、クロス・デコレーション』!!」

「「「「ええええ?!」」」」

 ヤスデの掛け声一つ、起こった事態に目を剥く三人と一匹。フラットウッズが突然バラバラのパーツに分離分裂、ヤスデの体にウンカのように纏わりついて!

「デコ合身!じゃじゃんと完成、ヤスデ・スーパーコーデ!!」

「「「「宇宙人を()()したぁぁぁ?!」」」」


(うそ、スーパーコーデを使ったの??ヤスデ、何が起こったのか知らないけどそれはダメよ!!)

 俊介の視線に撃たれながらもそれまで、頑なに席を立とうとしなかった八ッ神恐子。だがスマホの警戒振動が頂点に達したことを感じ、とうとうダッと座布団から立ち上がる。

「あの、その……ええと!も、申し訳ありませんワタクシちょっと大分めっちゃ急用で!キョキョキョ、今日はこれで失礼しますぅぅぅ!!」

 大慌ての一言を残して、あっという間にその場を立ち去った。鴻神神社の敷地を急ぎ離れると。

「ソーサーウッズ!!」

 懐から掴み出したのは金のリモコン、サッと天にかざして呼べば、現れたのは旧フラットウッズの頭部円盤。自分用にそれは残しておいたのだ。

「急ぐわよ、あれは……ヤスデのスーパーコーデは()()()()()()()()()の!!」

 円盤は八ッ神恐子を吸引光線で空中に吸い上げ、共にたちまち飛び去った。

 一方。応接間を去っていく女の後をほんの束の間、しかし険しく睨みつけた俊介は、やおら父に向き直り。

「父さん?父さんもわかってると思うけど、一応僕もハッキリ言っておくよ。僕には妖怪や霊のことはわからないけどこれだけはわかる、あの女は怪しいよ!御本社から来たなんて絶対嘘だ。何を企んでるか知らないけど……言いなりになっちゃいけない!」

 あたふたと去って行った女に目もくれず、相変わらず写真に齧り付いている厳十郎に、俊介はズバリと釘を刺す。

 すると。

「……うむ、それはわかっておる。心配するな俊介」

 ゆっくりと顔をこちらに向けた父は、思いの外落ち着いているようだ。俊介は胸を一つ撫で下ろす。

「僕から一応御本社に問い合わせておきます。父さんは当分身の回りに気をつけて下さい」

「そうじゃな、わかった。それは頼む。わしはちと勤行で頭を冷やすとしよう」

 女の残した写真をガサガサとひとまとめにして小脇に抱え、社務所を後に末社に向かう父、厳十郎。俊介はほっとため息を一つ吐いた。普段頑固な父の物分かりのよさにこの時、一抹の違和感を抱きながら。


(すまんな俊介よ、わしもあの女の言いなりになるつもりはない。じゃがこれだけは見逃せぬ、あの女の企みが何じゃろうと、この妖怪は放ってはおけぬ!

 ()()()……)

 末社の社殿に、薄暗い蝋燭の灯明だけを灯して。厳十郎はまたも写真を睨む。

 あの日、そう、それは八ッ神恐子と土蜘蛛が昴ヶ丘高校で激突した日。突然巻き起こったただならぬ巨大な妖気を遠く感じ取った厳十郎は、末社の神鏡と秘術を使ってその正体を見極めようとしたのだ。

(いや、ずっと以前からわしは気付いていた、知ってはいたのじゃ。この昴ヶ丘には何かが、大きな力を持った妖怪変化の類が潜んでいると。ただあれの気配は度々現れるが、いつもすぐに消えてしまう。だから今まではまるで取り留めがなかったのじゃが……)

 ついに見た、鏡の中に現れたあの妖怪たち。そして今、彼の手元にある写真にも。

(あの時の妖気の()()……間違いない、わしが今までずっと捕まえきれなかったあの妖気じゃった……土蜘蛛……此奴がそうだったのか……じゃが()()()!)

 パラパラと写真をめくる厳十郎は、やがてそのうちの一枚で手を止め、怒りの形相でその画像を睨みつける。それは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……念写のぼんやりした画像でも厳十郎にはわかる、ああそれは、その娘は!

(……早苗!)

 八ッ神恐子。彼女はいつも狡猾で、人の裏をかくことに長けている。ところが一面、誰もが気づくようなことを致命的に見落とすのだ。大体迂闊過ぎるではないか、数年間ずっと厳十郎をターゲットにしながら、その家族関係を全く洗っていないとは。

 そう、恐子は知らなかった、「お邪魔娘2号」が厳十郎の孫・早苗であることを。それさえわかっていればもっと別のアプローチ方法もあったはず。そして実際のところ、彼女の今回の工作は失敗だった。俊介の炯眼に素性をすっかり見抜かれていたのだから……この()()さえなかったら!

(おのれ土蜘蛛、よくも早苗に、わしの孫に!あの女が何を考えていようとそんなことは関係ない、言うことをそのまま聞いてやるつもりもない……じゃが良いことを教えてくれた!

 土蜘蛛め!わしは此奴だけは断じて許さぬわ!!)

 どうやら俊介の目配りも心遣いも、これから全て無駄になってしまうようだ……

(続)

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