一話
なんというか、捻った学園モノを書こうとしたらこうなりました。久留野凉です。
こちらラノベみたいな感じで書いていこうと思います。タイトルは一応暫定という形で、進行によって変わるかもしれません。
留年にも様々な理由があります。成績不振、出席日数不足…またはその両方。光輝はどんな理由で留年してしまったのか。また、彼の記憶に関する糸口は見つかるのだろうか。そんなことを考えながら、彼が歩むスクールライフや周りの子達との青春描写を読んでいって欲しいです。
ぽっと、蛍光灯の電気が点く。
そんな目覚めへの誘いから逃げるように布団に包まるが、そんな俺の行動を見透かしたようにジリリリとけたたましくベルが鳴り始める。
そんな今日の自分を苦しめる昨晩の自分に舌打ちをしながら─まぁ過去の自分に恨み言を言っても仕方ないだろう─目覚まし時計を止め、いつ何時も変わり映えのない朝の始まりに身を投じるのが学生の本分だ。
学校指定のカッターシャツに袖を通し、きっちりボタンを上から閉じていく、鏡に映った自分の姿はいつにも増して大人びた印象がある。
なにせ、今日から華の高校生活が始まるのだ。
入学式前から引っ越していたとはいえ、この高校に通うためにこの家を親から借りてもらった。
素行自体には問題がなくとも推薦枠を貰い損ね、自力で掴み取った一般入試の合格。
暗澹たる中学時代と未来を切り離し、ただ1人を追っかけることを目的として入学を決めた高校。
そう言ってしまうとストーカーみがあるが、そんなつもりはない。犯罪者は皆そう言うが、俺は犯罪者にはならない。こんな所で未来を潰してたまるか。
冗談はさておき、周りの協力と己の努力で切り開いた未来が、どうして灰色であろうか。
啓発本も伝記も読まないアニメ一辺倒の俺がひたすら妄想の中で思い描いていた高校生活が、ついに始まろうとしている。
それだけで胸が高鳴り、空から美少女が降ってこないものか、はたまた道端でパンを咥えた少女とぶつからないかと登校する前から浮き足立ってるオタク─皆川光輝ではあるが、肝心なことを忘れていた。
否、記憶から抹消されていた。
この光景も、この感覚も、彼は既に1度体験しているという事を。