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リアルチートがVRMMOを始めたら  作者: 唯宵海月
クランとイベント
98/175

一回戦:ロータスVSローズ①

『試合終了!勝者ヴェント!』


 最後まで立っていたのはヴェントだった。とはいえ、そのHPも残りわずか。ギリギリの勝負だったと言えるでしょう。

「最初はもっと一方的になるかと思ったんだけどねぇ」

「安全策を取っていればそうなっていたでしょうね。でも、ヴェントはそれを選ばなかったし、ハヤトもそう予想したうえで策を立てていたわ」

「つまり、ヴェントさんはまだ本気ではないという事ですか?」

「あれが全てではないのは事実ね」

 正面から叩き伏せるというのは余裕があるからできる事。格上相手にまでそれを貫きはしないでしょうね。

「次はいよいよロータス君の番だねぇ」

「ようやくですね。相手の人は強いんですか?」

「……私の個人的な見解だけれど、トップにロータス。その下にヴェント、ジークフリート、ミナスの三人が並んで、さらにその下にシグルズ、ヨシアキ、ハヤトの三人がいるわ」

 相性の関係でミナスはジークフリートにあっさり負けたけれど、相手がヴェントだったら逆に完勝していたかもしれない。

 だからといってヴェントとジークフリートが戦えば互角の戦いになるはず。

 そういう相性を抜きにして実力だけで見ればこんな感じね。

「では、ローズさんというのはそのさらに下ですか?」

「なんとも言えないわね。彼女は今大会唯一の純粋な魔法使い。相性の悪いミナスを除けば全員に勝つ可能性もあるし、負ける可能性もある」

「それは、ロータスさんでもですか?」

「ローズは火力特化魔法使いよ。MIDの低いロータスだと一撃で負けかねない。今回、ロータスが一番負ける可能性が高いのは彼女でしょうね」

 だとしても、ロータスが負けるところなんて想像できないけれど。




 ◇◆◇◆◇◆




「流石はヴェントさんだな。欲を言えばもっとあいつの顔をボコボコにしてほしかったけど」

「ヨシアキはハヤトと仲がいいのか?」

「あん?別によくねぇよ。ただの腐れ縁だ。付き合いばっか長くなったせいで今さら離れるに離れられないし。こんな事ならもっと昔に離れておくんだった」

 そう言うヨシアキだが、言う程嫌っている様子はない。嘘は言っていないのだろうが、それ以上に情があるのだろう。

「てか、気安く話しかけんな!イケメンは全部敵なんだよ!」

「別に俺はイケメンじゃないと思うけど」

「そういうのいいから。こっちはハヤト一人で間に合っているんだよ」

「ふむ?」

 まあ、俺がイケメンかどうかなどはどうでもいい話か。

「そういう割にヴェントとは仲よさそうだな。ヴェントだって顔はいいと思うんだが?」

「あー……ヴェントさんはなんていうか枠が違うっていうか……。ぶっちゃけ、イケメン枠じゃなくていじられ枠なんだよな、あの人」

 たしかに、試合前も声援という野次ばかり飛んでいたな。

「誰がいじられ枠だって?」

 と、その時ドアが開き、ヴェントが入ってきた。

「げ、ヴェントさん!聞いてたんすか!」

「最後だけな。たく、人がいないからって好き勝手言いやがって」

「いや、あれはこいつが変な事聞くから!」

「む?」

「なに、不思議そうな顔してんだよ!いてっ」

 コツンとヴェントは呆れた顔をしてヨシアキの頭を小突いた。

「次からは気をつけろよ」

「はい……」

「わかればよし!」

 ニッと笑顔を浮かべ、ヴェントはガシガシとヨシアキの頭を撫でた。

「次はお前の番だな」

 そこでヴェントはヨシアキから視線を俺へと移した。

「俺としちゃお前と戦いたくねぇから是非とも負けてもらいたいところだぜ」

「ふむ、期待に応えられるかはわからないが、負ける予定で試合に臨んだ事はないな」

「言ってみただけだ。ま、せいぜい頑張れよ。応援はローズの方をするけどな」

 そう言ってヴェントは悪戯っぽく笑った。

「オレも応援するなら断然薔薇姫だな。イケメンと可愛い女の子なら当然女の子に決まってるし。ていうか、お前なんか負けちまえ」

 ローズか。たしか、前に一度会った事があったな。

 その後にマーネに聞いたのだが、ローズはかなり人気のあるプレイヤーらしい。

「二人もファンなのか?」

「別にああいうのが好みって訳ではないな。ただ、見る分には最高だろ。特にあの胸!」

「そう!小柄なのに胸だけ大きくてさ!このゲーム体型とかいじらないからリアルでもあれなんだぜ!反則だよな!」

「魔女王派と薔薇姫派に分かれているけど、俺は薔薇姫だな」

「オレも!魔女王も顔はいいんだけど、胸がないしな。薔薇姫が山なら魔女王は平地だよ、平地」

「はっはっは!たしかに!」

 ……この会話はマーネには聞かせられないな。控え室が地獄に早変わりだ。

 胸の話題で盛り上がる二人を残し、そっと控え室を後にした。




 ◇◆◇◆◇◆




「くしゅっ」

「おや、風邪かい?」

「ゲームの中で風邪をひく訳ないでしょ。誰か噂でもしているのかしら?」

「ゲームの中なのにですか?」

「都市伝説だけれど、噂をされるとくしゃみをする機能があるらしいのよ」

 まあ、流石にただの噂でしょうけれど。

「あ、出てきましたね。あれがロータスさんの対戦相手ですか」

 こういう舞台には不釣り合いな真っ赤なドレスに身を包み、ニコニコと作り物めいた笑顔を顔に貼り付けて手を振りながら歩く少女。

 なかでも目を引くドレスを押し上げる双丘に男達の視線が集まる。

 身長はユーカよりも低いのに胸はユーナと変わらないくらい。少なくともEカップはあるでしょうね。

「忌々しい……」

「どうかしましたか?」

「……なんでもないわ」


『さあ!一回戦も残すところあと一戦!その選手がやってきました!クラン、ガーデンの紅一点にしてクランマスター!今大会純粋な魔法使いとしては唯一の決勝トーナメント進出者!男性プレイヤーからの圧倒的な人気を誇る最強の魔法使いの一人!燃え盛る炎で敵を焼き尽くす!薔薇姫・ローズゥゥゥゥゥ!!』

『彼女の職業は魔法使い系特殊職の炎術師ッスね。火属性魔法だけに特化した職業ッス。メインに一つの属性を置いてそれ以外にいくつかの属性を取るのが主流ッスけど、彼女は火属性以外に取っていないッス。対応力は低いッスけど、瞬間火力に限れば全プレイヤーの中でもNo. 1ッスね』


「ウオォォォォォ、ローズゥゥゥゥゥ!!」

「俺がついてるぞぉぉぉぉぉ!!」

「ローズ様ぁぁぁぁぁ!!」

「「「「「ローズ!ローズ!ローズ!」」」」」

 ローズの登場に野太い歓声があがる。

 その中でも観客席の一画を占めている真っ赤な法被(はっぴ)を着た集団。

「なんですか、あれ」

「ガーデンのクランメンバーであるローズの親衛隊よ」

 キングダムとは正反対の逆ハーレムクラン、ガーデン。

 私はどうでもいい男にチヤホヤされたいとは思わないし、彼女の事は色々と気に入らない。それでも、実力だけは認めているわ。

「ロータス君も出てきたねぇ」


『次いでやって来たのは今大会唯一の本サービス組!ここまで上がってきたのは運か実力か!無名の剣士・ロータスゥゥゥゥゥ!!』

『職業は戦士系特殊職の狂戦士ッス。本サービスで新しく見つかった職業ッスね。防御面が低い代わりにSTRとAGIはかなり高いッス。お互い攻撃力が高く、防御力が低い組み合わせッスから勝負の鍵を握るのはどちらが先に攻撃を当てるかッスね。下手したら一撃で決着が着くッス。ちなみに、個人的に一押しの選手ッス』


「ねぇねぇ、結構格好よくない?」

「たしかに!」

「頑張ってぇ!」

 腰に刀を差し、悠然と歩くロータスに黄色い声援が送られる。

「モテモテだねぇ」

「そうね。ローズの方が同性から反感を買いやすいのもあるでしょうけど」

「昔を思い出すねぇ。ロータス君が怪我をする前、大会を見に行くといつもこんな感じだったよ。ねぇ、ユーカ?」

「何故私に振るんですか」

「よく一人で応援に行っていたじゃないか」

「…………」

 そういえば、ユーナと最初に話したのはロータスの応援をしに行った時だったわね。


『それでは始めましょう!一回戦第四試合、始め!』

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