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リアルチートがVRMMOを始めたら  作者: 唯宵海月
クランとイベント
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一回戦:ヴェントVSハヤト②

「久しぶりだな、ハヤト」

「お久しぶりです、ヴェントさん」

 試合が始まっても二人はすぐに動かず、旧交を温めるように言葉を交わす。

「どれだけ成長したか見せてもらうぜ」

「あの頃とは違うというところを見せてあげますよ」

 互いに笑みを浮かべ、動き出す。

 先に動いたのは当然ヴェント。素早い動きで瞬く間に距離を詰めていく。それに対してハヤトは盾と剣を構え、待ちの姿勢を取る。

 シグルズもそうだったように騎士の試合はどうしてもこういう形になってくる。

「フッ!」

 駆け寄る勢いそのままにヴェントは拳を突き出す。勢いのついた拳をハヤトが盾で受ければガンッと素手で殴ったとは思えない激しい音を立てる。

 それでもハヤトはしっかりと受け切り、微動だにしない。

「やるじゃねぇか」

 それにヴェントは楽しそうな余裕の笑みを浮かべる。

 最初の一撃は防いだとしても武闘家は手数の多さこそが武器。

 ヴェントは間髪いれずに軽快なステップで盾を掻い潜り、側面に回る。

 ハヤトはそれになんとか追いすがり、盾を間に入れてヴェントの攻撃を防ぐ。

 ハヤトの周りを回りながら速さで翻弄して次々と拳を繰り出していくヴェント。それになんとか対応するハヤトだけれど、激しい連打にわずかに対応が遅れてしまう。

「ここからよ。ヴェントの強さがわかるのは」

 ハヤトの体をヴェントの拳が捉える。連打の中の一つ。決して強い一撃ではないけれど、それによってハヤトの体勢がほんのわずかに崩れる。

 ヴェントはその隙を決して見逃しはしない。

 二発目、三発目と次々と攻撃を着弾し始め、ダメージ以上にハヤトの顔に苦しい色が宿る。

「おや?突然イケメン君の動きが悪くなってきたねぇ」

「攻撃にフェイントを混じえ始めたのよ」

 生半可なフェイントならハヤトは見極められるでしょう。でも、相手はヴェント。その本気のフェイントは本物と見分けがつかない程でしょう。

「段々威力が上がってきてませんか?」

「それは武闘家の固有のスキル、コンボの効果よ。攻撃が繋がる程威力が増していくの」

 一度飲まれたら抜け出せない、疾風怒濤の連撃。それがヴェントの戦闘スタイル。そして、もう一つ。

 状況を変えようとハヤトは激しくなる連撃の中でなんとか反撃のために剣を振るう。

 だけれど、そんな苦し紛れの反撃はヴェントにとっては格好の的。

 流れの中で剣を躱し、逆にカウンターで下から突き上げるようにハヤトの腹部に手を当てる。

「発勁!」

「かはっ」

 鎧を突き抜ける衝撃にハヤトは苦悶の表情を浮かべる。

 その衝撃にハヤトの体はわずかに浮き上がり、動きが止まったところに容赦のない回し蹴りが脇腹を捉え、蹴り飛ばした。

「発勁は武闘家固有のアーツで防御力を無視してダメージを与えるわ。威力は然程ないけれど、ノックバック効果が高いの」

 騎士みたいな防御力の高い職業にはかなり有効なアーツね。

「リーチが短いからこそ一度懐に入ってしまえば対処は困難。その回転力で相手を飲み込み叩き伏せる。そのうえ、ヴェントは流れの中から的確にカウンターを決められる。苦し紛れの反撃は自らを追い詰めるだけよ」

 だから、彼を相手にするならミナスように遠距離から距離を詰めさせず一方的に攻撃するべきね。

「なら、何故ヴェントさんはハヤトさんを蹴り飛ばしたのでしょうか?」

「そうだねぇ。あれでは自ら距離を取らせる事になってしまうよ」

「何かを感じたのでしょうね。ヴェントも直前までコンボを続けるつもりだったわ。だけれど、ギリギリで蹴りに切り替えていたの」

「よくわかりましたね」

「それくらいできないとロータスには合わせられないもの」

 それにしても、ハヤトは一体何を狙っていたのかしら?

 コンボからは抜け出せたとはいえ、HPは三割を切っている。シグルズみたいに反逆の意志を狙うにしても、ヴェント相手に通用するとは思えない。……もしかして。

「ヴェントさん、勝負はここからですよ」

「そいつは楽しみだ、な!」

 何か狙いがあるとわかっていてもヴェントは怯む事なく前に出る。

 迎え撃つハヤトはヴェントの拳が届く直前、自ら盾を手放し──。

「不動の誓い!」

 その身でヴェントの拳を受ける。

 それでもハヤトは一切怯む事なく耐え切り、躊躇なく反撃の剣を振るう。

 いくらカウンターを得意とするヴェントであっても攻撃中にはどうしても隙ができる。

「やるじゃねぇか」

 流石に躱す事はできず、振るわれた剣は初めてヴェントを捉えた。

「この展開をハヤトは初めから読んでいたのでしょうね」

 強化系のアーツで自身の防御力を高め、最後は逆境のスキルでステータスを強化する。

 一見追い詰められているようだけれど、ヴェントはコンボを繋げられず、カウンターもできない。一撃の威力が高くない武闘家の初撃だけを受けながら反撃を叩き込む。

「実力差を理解したうえでこれしかないという策ね」

 それを成り立たせているのはアーツ不動の誓い。これはその場から動けなくなるアーツ。

 デメリットも大きいけれど、体勢が崩れずに反撃できるというメリットがある。

「マーネはこの後どうなると思うんだい?」

「決まっているわ。ヴェントの性格上、攻めるだけよ。どちらかのHPがなくなるまでね」

 相手の狙いがわかっていてもヴェントに迷いはない。反撃に怯む事なく次々と攻撃を繰り出していく。

 攻撃を受けるとコンボは途切れ、カウンターも狙えない。それでもダメージを増やすなら手数を増やす。

 カウンターを意識から外した事でヴェントの攻撃はさらに勢いを増し、残りわずかなハヤトのHPを削っていく。

 それに対し、ハヤトも盾を捨てて剣一本で立ち向かう。

 ノーガードの殴り合い。一撃の重さならハヤトが上。手数ならヴェントが圧倒的に上。

 ハヤトのHPは徐々に。ヴェントのHPはみるみる内に減っていき、そして……。

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