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リアルチートがVRMMOを始めたら  作者: 唯宵海月
クランとイベント
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一回戦:ヴェントVSハヤト①

「おー、勇者君が勝ったねぇ」

「そうね」

「僕には押されているように見えたんだけどねぇ」

「相性は騎士の方が上よ。勝敗を分けたのは経験の差ね」

「経験?」

「キングダムのリーダーはシグルズと同じ騎士よ。何度も相手をしていたでしょうし、手の内もわかっていたはずよ。似た実力でどちらも王道的な騎士だから差もほとんどないでしょうし。逆に効率重視のニーベルンゲンには魔法剣士はいないわ。魔法剣士相手の経験はなかなか積めなかったでしょうね」

ソロならともかく、パーティには近接戦も魔法も中途半端な魔法剣士はあまり歓迎されない。魔法剣士を入れるならそれぞれの専門を一人ずつ用意した方がいい。

それでも、単純に格好いいからと人気のある職業ではあるのだけれど。ニーベルンゲンとは対照的に浮雲には結構な人数が所属しているはず。

「実力が拮抗しているからこそ、そういうちょっとした要素で勝敗が決まってしまうんですね」

「そうね。ただ、今回の場合はそれプラス隠し持っていた切り札の差ね」

ヨシアキが最後に使ったスキル。私も知らない初見のスキルだった。

強化系のスキルの一種なのでしょうけど、あれだけ残っていたHPを一撃で削り切るなど普通の強化スキルでは不可能。

シグルズの攻撃を躱した時の速度と最後に攻撃した時で差があった事を考えると任意のステータスを大幅に上げるものかしら?

上昇率を考えると他にも何かありそうね。

可能性としては特定のステータスを他のステータスに割り振るとかかしら。

「なるほどねぇ。それで、次は勇者君のお友達の試合だったけねぇ」

「ええ。でも、今回は相手が悪いかもしれないわね」




◇◆◇◆◇◆




「はは、ヨシアキの奴勝ちやがったか!」

試合の結果にヴェントは嬉しそうに喝采をあげた。

「上手く魔法と組み合わせて戦っていたな」

「その辺あいつは器用なんだよな」

荒削りで拙い部分もあったが、それを補うセンスがあった。もし、戦う事になれば苦戦してしまうだろうな。

と、その時、ガチャッと音を立てて控え室の扉が開き、ヨシアキが戻ってきた。

「よ、お疲れさん。やるじゃねぇか」

「あんなイケメン野郎にオレは負けないっすから」

「相変わらずだな、お前も」

息巻くヨシアキにヴェントは苦笑を浮かべた。

「次は俺の番だな。相手はハヤトの奴だからどれだけ成長したか楽しみだぜ」

「あんな奴ボコボコにしてやってください!顔を重点的に!」

「あー……一応言っておくが、顔を殴ったところでゲームだから形が変わったりしねぇぞ」

「例えそうだとしても、それが全ての男の望みです!」

「一応お前のダチだろうに」

「ただの腐れ縁ですよ」

ケッとヨシアキは吐き捨てるように呟いた。

ふむ……。

「気になっていたんだが、ヴェントはヨシアキと随分親しげだけど、前からの知り合いなのか?」

「お前にヨシアキって呼ばれる筋合いはねぇ!」

「なら、なんと呼べばいいんだ?」

「ヨシアキ様だ!」

「ふむ。なら、言い直そう。ヴェントはヨシアキ様と随分親しげだけど、前から知り合いなのか?」

「本当に呼んでるんじゃねぇよ!」

「どうしろと?」

理不尽に叫ぶヨシアキはそのまま俺を無視してそっぽを向いた。

「まあ、落ち着けって。それより、俺とヨシアキが前から知り合いだったかだったよな」

そんな俺達の間にヴェントが苦笑しながら間に入ってきた。

「ヨシアキとハヤト、それともう一人は元々うちのクランにいたんだよ。そこから独立してキングダムを結成したんだ」

「なるほど」

「うちのクランはその辺結構自由でな。そういう奴もそれなりにいるんだ。だから、気が向いたらお前さんもうちに来ていいんだぜ」

「ありがたい誘いだけど、遠慮しておくよ。俺は今のクランで満足しているからな」

「それは残念だ」

本気で勧誘する気のなかったヴェントはそれだけであっさりと引き下がった。

「さて、そろそろ俺は行くぜ。お前ら仲良くしてろよ」

ニッと人好きのする笑みを浮かべ、ヴェントは控え室を出ていった。




◇◆◇◆◇◆




「次の人が出てきましたね」

そのプレイヤーが現れると同時に会場中から割れんばかりの黄色い声援があがる。

「すごい人気だねぇ。特に、あそこの女の子ばかりの一画。あれがキングダムのハーレム軍団かい?」

「ええ、そうよ」

NWO一のハーレムクラン、キングダム。そのキングダムのリーダーであり、ハーレムの主。

シグルズと並んで最高の騎士と呼ばれるプレイヤー、ハヤト。


『黄色い声援を背に現れたのはご存知この人!数多の女性を虜にする甘いマスクと確かな実力を兼ね備えた王国の王!騎士王・ハヤトォォォォォ!!』

『職業は二つ名通り騎士ッスね。騎士としての実力はシグルズさんと1、2を争う程ッス。ハヤトさんが守り、ヨシアキさんが攻める。この二人のコンビは全プレイヤーの中でもトップクラスッスね』


「なんとなくロータスさんに近いように感じますね」

「そうかもしれないねぇ」

整った顔立ちや優しげな雰囲気は確かにロータスと通じるところがあるかもしれない。あと、鈍感なところとか。

「ユーカはどっちが格好いいと思うんだい?」

「え、それは、その……。よ、よく知っているというのもありますし……。あと、困っていたり悩んでいると助けてくれるんですよね。それに、芯がしっかりしていてブレないところとかいいと思います」

「うんうん、僕は好きなところを聞いた訳じゃないんだけどねぇ」

「ち、違います!好きとかそんなんじゃないです!」

「わかってるわかってる」

ニヤニヤとしたままユーナはうんうんと何度も頷く。

「その顔は絶対わかっていない顔です!」

「おや、僕はいつもこういう顔だよ」

「そうですけど……そうですけど!」

顔を真っ赤にしてあわあわと慌てるユーカ。

こういうのを見ると少しからかいたくなる気持ちというのもわかるわね。って、いけないわ。これじゃあユーナと同じじゃない。

「駄目よ、私。ユーナなんて人として底辺みたいなものなんだから」

「何故僕は脈絡もなくそんな酷い事を言われたんだろうねぇ?まあいいか。一応聞くけど、マーネはどっちが格好いいと思う?」

「ロータス」

「聞くまでもなかったねぇ」

「貴女はどうなの?」

「僕かい?僕はただの人間には興味ないねぇ。面白い人間なら男女問わず大好きだけどねぇ」

そういえば、ユーナはそういう人間だったわね。


『続いて対戦相手も登場です!並外れた実力とカリスマを持って個性的なメンバーを束ねるトップクラン浮雲のクランマスター!風のように自由に!嵐のように激しく!旋風・ヴェントォォォォォ!!』

『職業は武闘家ッスね。武器を持たず、己の体一つで戦う戦士系の職業ッス。一撃の重さはそれ程ッスけど、その手数の多さは脅威ッス。一度飲み込まれたら抜け出すのは困難ッスよ』

『そんなヴェント選手にもハヤト選手に負けず劣らずの声援が飛んでいます』

『果たしてこれを声援と呼んでいいのかは疑問スけど』


「格好つけてんじゃねぇぞ!」

「調子乗んな!」

「ヴェントの癖に生意気だ!」

「ハヤト君を傷つけないで!」

「あんたに賭けたんだから負けたら承知しねぇぞ!」

「俺はハヤトの奴に賭けたから負けちまえ!」

リングを進むヴェントに声援という名の野次が次々浴びせられる。

「まともな声援はねぇのかよ!てか、野次送ってるのうちのメンバーばっかじゃねぇか!」

「加齢臭するぞ!」

「この距離で臭う訳ねぇだろ!てか、ゲームの中で加齢臭なんかする訳ないし、そもそも俺はまだそんな歳じゃねぇ!」

「目が卑猥!」

「よし、わかった!お前ら今すぐ降りてこい!まず先にお前らをボコボコにしてやる!」

ギャーギャーと観客と言い合うヴェント。知らない人からすれば面食らうかもしれないけれど、これは浮雲のいつもの光景。

元浮雲のメンバーであるハヤトも懐かしそうに苦笑を浮かべている。

「これも一種カリスマかねぇ?」

「そうね。浮雲はニーベルンゲンとは真逆の性質よ。厳しい規律のあるニーベルンゲンと違って各々が好き勝手に行動している。なのに、曲がりなりにも纏まっているのはリーダーのカリスマがあってこそよ」

今はニーベルンゲンが一位、浮雲が二位と言われているけれど、この二つのクランに実力差はほとんどない。少しのきっかけで評価は簡単に覆るでしょうね。


『会場も盛り上がってきた事ですし、試合を始めたいと思います!』


実況の言葉に今まで観客と言い合っていたヴェントは改めてハヤトと向き合った。

その顔には余裕の笑みが浮かび、覇気が(みなぎ)っている。そこにはさっきまで観客と言い合っていた様子は微塵もない。

その雰囲気の変化を感じ取り、ハヤトも油断なく構える。


『一回戦第三試合、始め!』

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