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リアルチートがVRMMOを始めたら  作者: 唯宵海月
クランとイベント
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控え室

『試合終了!ルーキー戦優勝は浮雲所属のタージュさんです!』


 始まりの街にある闘技場の観客席で俺達は決勝を観戦していた。

「終わったわね」

「いい勝負だったな」

 決勝は優勝した浮雲所属のプレイヤーとニーベルンゲン所属のプレイヤーとの戦いになり、僅差で浮雲所属のプレイヤーが優勝した。

「やっぱり大手クランのメンバーは新人でも強いんだねぇ」

「装備面に戦い方のコツ。クラン内でPvPの経験も積んでいるでしょうし、この短期間じゃよっぽど飛び抜けたプレイヤースキルを持っていない限りそうそう差は埋められないわ」

「む?」

 三人から揃って向けられた視線に俺は首を傾げた。

「たしかに、多少の装備の差や少しくらいスキルが上手く使えるくらいでは埋められそうにありませんね」

「だから、これは順当な結果ね」

「だとしても、情報が少ない分的中させるのは難しいって話だったけどねぇ」

 ユーナは持っていた一枚の紙に視線を落とした。

 そこにはタージュという名前と100000Dという金額が書かれている。

「見事に的中させた訳だ。流石はマーネとロータス君だ」

 予選の動画から俺が優勝しそうなプレイヤーを絞り、マーネと相談して優勝するプレイヤーを予想した。

 戦いとは単純に強さだけで決まるものではない。その日の調子や相性。時の運。様々な要因が絡み合って決まる。

 だから、予想が当たってよかった。俺達全員がそれなりの額をこのプレイヤーに賭けていたからな。

「オープン戦に関しては迷う必要もないから楽ね」

「プレッシャーだな」

 マーネの持つ紙には俺の名前が書かれ、手持ちの金全てを賭けている。

「ま、やれるだけやるよ」

 ルーキー戦が終わった後は俺達の出番だ。

 俺は席から立ち上がり、肩に乗っていたルナをマーネに預けて控え室に向けて歩き出した。






「ここか」

 決勝トーナメント出場者は北と南、二ヶ所の控え室に四人ずつ分けられる。俺の控え室北側だ。

「ん?お前はたしか……」

 控え室に入ると金髪を短髪にした大柄の男が出迎えた。

 向こうが俺の事を見覚えがあるように俺にも目の前の男に見覚えがある。たしか……。

「トゥーシスで会ったか?」

 会ったのはミャーコ達の護衛で初めてトゥーシスの街に行った時。

「おお!思い出した!たしか魔女王の奴と一緒にいた奴だろ!やっぱ上がってきやがったか」

 目の前の男……浮雲のクランマスターであるヴェントは人懐っこい笑みを浮かべ、バシバシと俺の肩を叩いてきた。

「やっぱり?」

「初めて会った時から強いと思っていたからな」

 俺がこの男を強いと感じたように向こうもそう感じていたという事か。

「そういや、ちゃんと挨拶した事はなかったな。俺は浮雲で一応クランマスターをやってるヴェントってもんだ。よろしくな」

「薄明所属のロータスだ。よろしく」

「同じ控え室にいる奴同士は一回戦じゃ当たらないからな。とりあえず仲良くしようや」

「ん、ああ。ついでにそっちの人もよろしくな」

「そっち?」

 俺が部屋の角に視線を向けた事にヴェントは怪訝そうに俺の視線を追った。

「って、いつの間に!?」

 そこには部屋の隅に漆黒のローブで体をすっぽりと覆い、仮面を被った人物が佇んでいた。

「さっき話している時に入ってきたぞ」

「マジか!全然気づかなかったわ」

 気配を感じさせず、足音一つ立てない足運びはなかなかの手練れだ。

 身長は低く小柄。体をすっぽりと覆ったローブと仮面のせいで性別もわからない。こちらと関わる気がないのか隅でジッとしたまま黙っている。

「あれはアルテミスだな」

「アルテミス?」

「ミナスって名前のプレイヤーでNWOでNo. 1弓使いだ」

「なるほど」

 これで三人。残り一人のプレイヤーは……。

 その時、ガチャッと音を立てて控え室のドアが開いた。

「オレが最後か?」

 入ってきたのは俺とそう歳の変わらなさそうな少年。中肉中背に平凡な顔立ちで正直あまり印象に残らない。

 マーネが着ているのと似た魔法使い用の真っ白なローブを身に纏い、その腰には剣が差さっている。

「よう、勇者様。久しぶりだな」

「ちょっ!その呼び名はやめてくれよ!」

「はは、悪い悪い」

 入ってきた少年にヴェントは親しげに話しかけ、少年もそれに答える。

「二人は知り合いなのか?」

「おう、β時代にな。ヨシアキって名前だ。ヨシアキ、こいつはロータス。歳も同じくらいだし仲良くしろよな」

「えっと、ヨシアキでいいのか?俺はロータスだ。よろしく」

「…………」

 俺の挨拶にヨシアキはジッと俺の顔を睨むように見つめ、ふいっとそっぽを向いた。

「チッ」

「舌打ちって」

 はて?何か気に触る事でもしただろうか?

「イケメンはハヤト一人で間に合ってるんだよ!」

「は?」

 何故俺はキレられているのだろうか?

「イケメン枠なんていらねぇんだよ!当てつけか?フツメンの俺に対する当てつけなのか!」

 突然叫び出したヨシアキに困惑し、助けを求めるように苦笑を浮かべているヴェントに視線を向けた。

「ただの発作だから気にしないでやってくれ。そのうち治る」

「はぁ……」

 よくわからないが、何やら自分の顔にコンプレックスを抱いているという事はわかった。

「いい加減落ち着け、ヨシアキ」

「はっ!オレは何を……」

「いつもの発作だ」

「ああ、オレはまた……」

 ようやく落ち着いたヨシアキは改めて俺に向き合い、頭を下げた。

「悪かったな。たまにああなるんだ」

「気にしていないさ。ところで勇者って──」


 《運営からのメッセージが届きました》


「む?」

「どうやら、組み合わせが決まったみたいだな」

 俺は疑問を一旦しまい、届いたメッセージを開いた。


 第一試合ミナスVSジークフリート

 第二試合ヨシアキVSシグルズ

 第三試合ヴェントVSハヤト

 第四試合ロータスVSローズ


「俺の初戦はヨシアキんとこのリーダーだな」

「オレに変わってあいつの顔面をぶん殴ってやってください!」

「いいのかよ?お前の親友なんだろ?」

「一度でいいからあいつの顔をぶん殴るのがオレの夢です」

「むなしい夢だな」

 俺の初戦の相手はローズ……ローズ?どこかで聞き覚えが……。


『まもなく第一試合を開始します。出場選手はリングまでお越しください』


「お、もうすぐ始まるか」

 アナウンスが聞こえるとすぐに部屋の隅にいたミナスが動き出す。

「あのいけ好かない竜殺しの奴をやっちまえ!」

「同じ控え室になったよしみだ。応援してるぜ!」

「頑張れよ」

 俺達の声援にも反応する事なくミナスは俺達の横を通ってドアに向かった。

 む?

 今、一瞬こっちを見たか?

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