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リアルチートがVRMMOを始めたら  作者: 唯宵海月
クランとイベント
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ユーカの才能

 ニーベルンゲンのリーダーとの一悶着があった後、俺達はホームに戻った。

 そして、俺達は完成してから一度も使用していなかった鍛治部屋に集まっていた。

「闘技大会であのいけ好かないジークフリートをボコボコにする準備をしましょうか」

「ボコボコって……」

 だいぶ落ち着いたみたいだけどまだ完全に機嫌が直った訳じゃなさそうだな。

「準備って何をするんですか?やっぱりレベル上げとかですか?」

「いえ、今の私達のレベルは他と比べて飛び抜けているわ。今私達が行けるフィールドだと効率がよくないのよ」

「なら、さらに先のエリアに行くのは駄目なのか?」

「時間がかかり過ぎるわ。移動時間も合わせると一週間やそこらじゃ上がるレベルは1か2が限界。それなら別の場所を伸ばした方がいいわ」

 そう言ってマーネはユーカに視線を向けた。

「私ですか?」

「そう。ロータスのための武器。それをユーカに作ってほしいの。そのための場は私達が整えるわ」

 今日の収穫である鉱石をマーネは大量に取り出し、テーブルの上に積んでいった。

「……私にできますか?他に適任がいるのでは?」

「単純に性能だけを見れば貴女以上の武器を作れる人はいるでしょうね。でも、ロータスの武器に限れば貴女以上の適任はいないわ」

「…………」

 顔を俯かせ、悩んだ様子を見せたユーカは一度俺の顔を見て頷いた。

「わかりました。どれだけできるかはわかりませんがやれるだけやってみます」

「大丈夫大丈夫。ユーカならできるよ。なにせ僕の妹だからねぇ」

「姉さんと比べられたくありません」

 ユーナに素っ気なく返し、ユーカはマーネが積んだ鉱石から銅鉱石を手に取った。

「とりあえず、一本打ってみます」」

 炉に火をつけ、温度が上がるのを待って銅鉱石を炉に入れる。そして、熱せられた鉱石を真剣な表情でカンッカンッと音を響かせながら打っていく。

「手際がいいな。鍛治なんてした事がないだろうに」

「鍛治スキルを持っていればアシストがあるのよ。その通りに打てばある程度の物はできるわ」

「なるほど」

 裁縫や料理からともかく、鍛治なんてそうそうやった事ある人もいないだろうしな。

「ユーナの調薬にもアシストはあるけれど、ユーナは気にしていないでしょうね。それであれだけの物を簡単に作るのだから紛う事なき天才よ」

「ん?今僕の事を褒めたかい?」

「黙って可愛い妹の頑張りを見ていなさい」

 そんな周りの雑音にも気を取られる事もなく、ユーカは一心不乱に鎚を打っていく。そして……。

「できました」

 その手には完成した一振りの剣が握られている。

 ユーカはそれをマーネに差し出した。



 [銅の剣]品質D-

 銅から作られた剣。性能は低い。

 ATK+10

 スキル:なし



 正直弱い。最初の頃に使っていたゴブリンの剣と変わらない性能だ。

「こんなものでしょうね。私は姉さんとは違いますから」

 どこか自虐的な言葉。だが、その顔には悲壮感のようなものは見られず、ただ事実を述べただけといった様子だった。

 かつては天才の姉と比べ、悩んでいた時期もあったユーカだが、すでにその悩みは乗り越えている。

「闘技大会までには満足のいくものを作ってみせます」

 そう言うとユーカは次の鉱石を取り、再び鍛治作業に戻っていく。

「相変わらずだな、ユーカは」

 ユーカはユーナとは違う。ユーナのように瞬く間に高品質の物を作り出す才能はない。ユーカの才能はユーナとは真逆。

 決して折れぬ精神力。途切れぬ集中力。見た目にそぐわぬ無尽蔵の体力。

 それによってできるまで努力し続けるのがユーカの才能だ。

「品質の心配はしていないわ。心配するとしたらユーカが無理をしないかだけね」

「そうだな」

「ロータス、しばらくユーカを見ておいて切りのいいところでやめさせてちょうだい。このペースだとすぐに取ってきた鉱石がなくなりそうだから後でまた取りに行くから」

「ああ、わかった」




 ◇◆◇◆◇◆




 ロータスとユーカを鍛治部屋に残し、私とユーナは共同スペースに戻ってきた。

「ユーカを入れてくれてありがとう、マーネ」

「……なによ、急に」

 珍しくニヤついた笑みを消したユーナに私は思わず怪訝な表情を浮かべた。

「貴女の妹を受け入れない理由もないわ。知らない相手でもないし」

「たとえ恋敵だとしてもかい?」

「……私の勝手で近づく相手を追い払ったりしていたけれど、それでも誰でも彼でも追い払った訳じゃないわ」

「そうだねぇ。つまり、あの子は姑のお眼鏡にかなったという訳だ」

「誰が姑よ」

「第一夫人と言った方がいいかい?」

「……私はそんなんじゃないわ」

「ふふ、これから楽しくなりそうだねぇ」

 ニヤッといつも通りの笑みを浮かべるユーナに私はため息を吐いた。



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