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リアルチートがVRMMOを始めたら  作者: 唯宵海月
クランとイベント
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孵化

「おや?食事の時間かな?」

「違う」

 取り出した卵をユーナからかばうように背中に隠す。

「その大きさなら大きな目玉焼きが作れそうだねぇ」

「だから食べるようじゃないと言っているだろ」

 ユーナ相手だと本当に何をするかわからないから心配だ。目を離した隙にマジで食べられかねない。

「それ、デカラビアを倒した後に残っていた卵ね」

「ああ、ふと思い出してな」

「美味しそうなんだけどねぇ。おや?」

 いつの間にか俺の後ろに回り、卵を覗き込んでいたユーナが疑問の声をあげた。

「ヒビが入っているねぇ」

「本当か?」

 ユーナに言われて背後に隠していた卵を目の前に持っていき、確認してみると確かにヒビが入っていた。

「これ、生まれるって事か?」

「たぶんね」

「ふむ」

 生まれてくるのは鳥だとマーネは言っていたが、なんの鳥なんだろうな?鳥といえば思い出すのは──。

「む」

 と、その時、卵のヒビがさらに広がり、光を放った。そして……。

「ホー」

 ふわふわの真っ白な羽毛。猛禽類特有の鋭い爪。くりくりとした大きな瞳。

 俺を見て首を傾げ、キョロキョロとマーネとユーナを見回した後、バサッと羽ばたいて俺の肩に止まった。

「フクロウ、だよな?」

「羽角があるから正確にはミミズクね」

「羽角?」

「その耳に見える部分の事よ」

「なるほど」

 俺は横を見て肩に止まるミミズクを見た。

「ロータス君に懐いているねぇ」

「最初に見たのがロータスだから親だと思っているのかしら?」

「インプリンティングだったかねぇ。わかりやすく言えば刷り込みというやつか」

「ふむ」



 名前:未設定

 種族:マジックオウルLv1

 スキル:風魔法 夜目 無音飛行 気配隠蔽

 契約者:ロータス



「名前は未設定か」

「貴方が決めてあげなさい」

「俺がか?」

「貴方が契約者なんだから」

「む……」

 あまりネーミングセンスには自信がないんだけどな。自分の名前も本名を英語にしただけだし。

「……ルナとか?」

「ルナ……月という意味ね」

「ほほう。どうしてそういう名前にしたんだい?」

「フクロウは夜のイメージがあるからさ。夜といえば月かなって」

 そこで俺は一度マーネに視線を向けた。

「それに、なんとなくマーネに似ている気がしてな」

 指の裏で撫でてやれば気持ちよさそうに目を細めた。

「ホー」

「ふふ、たしかにロータス君に懐いているところなんてマーネに似ているねぇ」

「ッ!ユーナ!」

「おお、怖い怖い」

 何故か顔を赤くして怒鳴るマーネだが、ユーナはいつも通りどこ吹く風だ。

「お前もそれでいいか?」

「ホー」

 俺の問いにルナは首を縦に振った。

 俺の言葉をしっかり理解しているみたいだな。

「ルナはどういう扱いになるんだ?」

「テイムモンスターの一種でしょうね」

「テイムモンスター?」

「テイムというスキルを使う事で一定確率でモンスターを仲間にできるの。だから、今回の場合は特殊な入手方法ね。テイムスキルはテイムモンスターの能力をあげるからSPに余裕もあるんだし取っておいたら?」

「なら、そうするか」

 俺はメニューを開いてテイムスキルを探し、新たに取得する。

「そういえば、水流の剣というスキルが取得できるようになったんだよな」

「聞いた事のないスキルね。それも取ってみたら?」

「わかった」

 デカラビアを倒した後に大量のSPを獲得したのだ。然程悩む事なく俺はスキルを取得した。


 《運営からのメッセージが届きました》


「ん?」

 メニューを閉じようとしていた手を止め、突然のメッセージに首を傾げた。

「開いてみて」

「ああ、わかった」

 言われるままメニューを操作し、メッセージを開く。


『「NEW WORLD ONLINE」をお楽しみいただきありがとうございます。

 今日から四日後に大規模メンテナンスを行います。そのため00:00〜23:59の間ログインできない事をご了承ください』


「ふぅん」

「なるほどねぇ」

「……なあ、自分ので見てくれないか」

 二人揃って俺の肩越しにメッセージを覗き込んでくる。近いんだよな。

「美少女二人の胸の感触を楽しめるなんて役得だろう?」

 そこでユーナはハッとした顔で隣のマーネの顔を見た。

「おおっと、マーネに胸の話題は──んぐ」

「そろそろ本気で貴女の頭を吹き飛ばそうかしら」

 据わった目つきでマーネは魔杖をユーナの口に突き入れた。

「ふぅふぅふぁんふぁふぁいふぁ」

「いつまでも冗談ですませると思ったら間違いよ」

「ふぉいふぉい」

 あ、今のはなんとなくわかった。たぶん『怖い怖い』だな。

「このメンテナンスはなんで入るんだ?なんか問題があったのか?」

「……次はないわよ」

 しばらく無言でユーナを睨んでいたマーネは短く息を吐いて魔杖を下ろした。

「第二陣が来るのよ。その分人数も増えるから第一陣である私達のデータを元に調整するの」

「あと、サービス開始一ヶ月を記念して公式イベントがあるって噂もあるねぇ」

 イベントか。そういえば、前に別のゲームでマーネがイベントがあるからと数日引きこもっていた事があったな。

「実際にあるかどうかはメンテナンス後にしかわからないわ。ただ、あるとしたら戦闘系のイベントになるんじゃないかしら」

「なんでだ?」

「ユーナのような生産職もいるけれど、割合としては圧倒的に戦闘職の方が多いわ。初めてのイベントなら派手な方がいいでしょうから戦闘系じゃないかっていうのが私の予想よ」

「なるほど」

 俺は一理あると納得して頷いた。

「だからといって私達のやる事は変わらないわ。いつも通り私達のペースで楽しみましょう」

「なら、僕は新しい設備を試してみようかねぇ」

 言うが早いかユーナは錬金術師用の設備が設置された部屋に入っていった。

「俺達はどうする?」

「ルナを鍛えましょうか。まだレベル1だし、この先連れていくにはレベルが低過ぎるわ」

「そうだな」

 それからメンテナンスまでの間、俺達はルナのレベル上げを。ユーナは設備が気に入ったのかほとんどを部屋にこもって生産をして過ごした。


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