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スキルの感触

「どうだった?」

「やっぱり鈍ってるかな」

 近づいてきたマーネに答えながら自分の手の平を見つめた。

「まあ、それが実感できるくらいこのゲームがリアルだって事なんだろうけどな」

「そう。でも、貴方ならすぐに勘を取り戻せるでしょ?」

「なるべく早く取り戻せるようにするよ」

 あの程度ならともかくもっと強い相手だったら苦戦してたかもしれないしな。

「それより、スキルはどんな感じだった?」

「あー、正直あんまり実感はないかな」

 というか、全然気にしてなかったな。それどころじゃなかったっていうのもあるし。

「でしょうね。貴方の選んだスキルはすぐに実感できるようなものではないもの。逆境以外はね」

「そういえば、あとで話すって言ってたよな」

「ええ。実際に試してみた方がわかりやすいと思ってね。いい具合にHPも減っているし」

 言われて見てみれば俺のHPは七割近く減っていた。

「結構減ってるな」

「槍持ちのゴブリンは攻撃力が高めなのよ。レベル差もあったしそんなものでしょうね」

 痛みもあまりないし、動きにも支障がないから気にならなかったけど、これからはそれも意識しないとな。

 そういう感覚に慣れるのは勘を取り戻すよりもかかりそうだ。

「難しく考える必要はないわ。全部躱せばいいのよ」

「ああ、なるほど」

 言われてみればその通りだ。さっきは試しに受けてみたけど、これからはわざわざ受ける必要もないのだ。

 攻撃を受ける前提で考える必要はないか。

「でも、もう一回は受けてもらうわ」

「む?」

「逆境の発動条件がHPが30%以下である事なのよ」

「だからちょうどいいって言ってたんだな」

「そういう事よ。とはいえ、今の貴方のHPだと受けられるのは短剣持ちの攻撃だけね。それも直撃は駄目よ。かすらせるだけ」

「ああ、わかった」

「じゃあ、次の相手を探しに行きましょうか。あ、でも、その前にドロップアイテムの確認ね。メニューのアイテムボックスから確認してみて」

 言われた通りにメニューを開き、アイテムボックスの項目を押す。

 他に何も入れていないはずだから、入っているものがゴブリンのドロップアイテムなんだろう。さて、なにが入っているのか……。

「石?」

「それがゴブリンのドロップアイテムよ」

「何使うんだ?」

「投げて当たると痛いわね」

「つまり、特に役には立たないと?」

「ま、そういう事よ。β時代と何か変わっているかと思ったけど、やっぱり変わっていないわね。ちなみに、レアドロップはこれね」

 そう言ってマーネはメニューを開き、それに視線を向けたと思うと、突然その手に剣が現れた。

「ゴブリンが持っていた剣よ」

 確かにそれはさっき戦ったゴブリンが持っていた剣に似ている。

 だが、それよりも俺は別の事が気になっていた。

「今のどうやったんだ?」

「ああ、思考操作の事ね。メニューの操作は直接操作と思考操作があるの。貴方がやっているのは直接操作よ。思考操作は手を使わずに思うだけで操作できるのよ。慣れないうちは直接操作でいいと思うけど、慣れたら思考操作の方が便利よ」

「へぇ」

 正直、直接操作ですら拙い俺からすれば上手くできる気がしないけど、できると便利そうだな。

「とりあえず、この剣は貴方にあげるわ」

「いいのか?」

「私が持っていても仕方ないもの」

「じゃあ、ありがたく受け取っておくよ」

 マーネの差し出してきた剣を受け取り、その感触を確かめる。

「性能はそれほどいい物ではないわね。それでも初期装備よりはマシよ。触れた状態で詳しく知ろうと思えば詳しい性能がわかるわよ」



 [ゴブリンの剣]品質D−

 ゴブリンがどこからか持ってきた剣。性能はあまりよくない。

 ATK+10

 スキル:なし



「ふむ」



 [見習い冒険者の剣]品質E

 見習い冒険者用の剣。性能はよくない。

 ATK+5

 スキル:なし



 初期装備の剣も調べてみればこうなっていた。

 性能は初期装備から比べれば倍になっている。だが、これはそもそも元の性能が低過ぎるのだろう。

「じゃあ、そろそろ行きましょうか」

「ああ」

 初期装備の剣をアイテムボックスにしまい、新しい剣を腰に差してマーネの後について歩き出した。






(スラッシュ!)


 横薙ぎの一閃が最後に残った盾持ちゴブリンのクビに吸い込まれ、そのHPを削り切った。

 あれから少し歩くとすぐに別のゴブリンの群れに遭遇した。

 俺はマーネに言われた通り短剣持ちの攻撃をわざとかすらせてHPを減らした。現在の俺のHPは二割を少し超えるといったところだろう。

 逆境の効果はHPが30%以下になると全ステータスが上昇するというものらしい。

 その効果は他のスキルと違ってすぐに実感できた。

 目に見えて与えるダメージが増えていたのだ。そのうえ、俺自身のスピードも上がっている。

 他のステータスの上昇についてはわからないが、一度目と比べて戦闘時間は大幅に短縮されていた。


 〈レベル2になりました〉

 〈SPが2ポイント加算されます〉


「む?」

「レベルアップね。レベル差もあるしこんなものでしょう。ステータスも上がっているから見てみたら」

「わかった」




 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽




 名前:ロータス

 職業:戦士Lv2

 STR:12 (+2)

 VIT:12 (+2)

 INT:6 (+1)

 MID:6 (+1)

 AGI:10 (+2)

 DEX:10(+2)

 SP:2

 スキル:剣術Lv1 眼Lv1 歩法術Lv1 逆境Lv1 集中Lv1

 称号:




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「おお、色々と上がってるな」

「ここで戦っていれば5レベルくらいまではすぐに上がると思うわよ」

「そうなのか?」

「ええ。それ以上は少し時間がかかるでしょうけどね。じゃあ、もう少し続けましょうか」

「ああ」

 それは願ってもない。勘を取り戻すためにももっと続けたい。いや、それ以前に俺はもうこのゲームにハマっているんだ。

 単純にもっとこのゲームを楽しみたい。

「回復はしないで逆境を発動したままで行きましょうか。問題ないわよね?」

「ん?攻撃に当たらなければいいんだろ?」

「ええ、そうよ。まあ、そもそも今の私達には回復の手段がないからそのまま行くしかないんだけれどね」

 悪戯っぽく微笑を浮かべて歩き出したマーネに苦笑を浮かべ、俺もその後に続いて歩き出した。

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