VSデカラビア決着
〈レベルが23になりました〉
〈剣術Lv7になりました〉
〈眼Lv6になりました〉
〈歩法術Lv6になりました〉
〈逆境Lv6になりました〉
〈集中Lv7になりました〉
〈気配察知Lv4になりました〉
〈カウンターLv5になりました〉
〈嫌われ者Lv4になりました〉
〈アーツ:天地斬りを取得しました〉
〈アーツ:暗視を取得しました〉
〈アーツ:水面歩行を取得しました〉
〈SPが16ポイント加算されます〉
〈デカラビア討伐報酬によってSPが6ポイント加算されます〉
〈悪魔を倒したプレイヤーに称号『悪魔祓い』が送られます〉
〈特定の条件を満たしたため取得可能スキルに【水流の剣】が追加されました〉
《お知らせします。封印されし悪魔『序列69位デカラビア』が討伐されました。ただ今を持ちましてメニューに『悪魔辞典』の項目が追加されます》
大量に流れたインフォにようやく戦いが終わったのだと自覚した。
俺は瞳を閉じ、短く息を吐いて意識を切り替える。
『負ケルトハ想像モシテイナカッタ』
頭の中に響いてきた声にデカラビアの倒れる場所に視線を向けた。
そこには元の星型に戻り、徐々に光の粒子に変わっていくデカラビアの姿があった。
普通のモンスターはすぐに光の粒子となって消えてしまうがやはり普通のモンスターとは違うという事か。
『安心スルトイイ。今ノ我に戦ウ力ハナイ』
「そうか……」
俺は握っていた剣をアイテムボックスにしまった。
「一つ聞きたい」
『ナンダ?』
「何故マーネを狙わなかった。マーネを狙っていれば結果は違っていたかもしれない」
『矜持ニ反スル。貴様トノ戦イを避ケ、アノ娘ヲ狙エバ確カニ我ガ勝ッテイタカモシレナイ。ダガ、ソレハ逃ゲダ。我ニハ強者トシテノプライドガアル。逃ゲル事ハ許サナイ』
「その結果負ける事になっても?」
『ソノ通リダ』
「……なるほど」
わからなくはない。俺にもそういうところはあるから。
『モシ、我ノ同胞ト戦ウ事ガアレバ気ヲツケル事ダ。同胞達ハ我程甘クハナイゾ』
「その時には俺も今より強くなっているさ」
『クク、流石ハ我ヲ倒シタ男ダ』
頭の中に楽しげな笑い声が響き、デカラビアの体は半分以上が消えていた。
『ドウヤラ時間ノヨウダ。サラバダ、強キ人間ヨ』
そして、デカラビアの体は完全に光の粒子に変わり、消えていった。
「いやはや、厳しい戦いだったねぇ。まあ、僕達三人にかかれば勝てない相手なんていないけどねぇ」
「色々言いたい事はあるのだけれど、貴女のポーションに助けられたのは事実だからやめておくわ」
それと同時にこちらの様子を伺っていたマーネとユーナが話しかけてきた。
「それより、まったく貴方は無茶するわね」
「あそこでは最善だったと思うけどな。被害が俺一人なら蘇生薬でなんとかなるし」
「そうかもしれないけど、もうやらないで。代わりにそんな事必要ないくらい強くなりなさい」
「……ああ、わかったよ」
たしかにあの場面ではあれしか方法がなかった。でも、それは俺が弱いからだ。俺がもっと強ければマーネに心配をかける事もなかった。
強くなろう。今よりももっと。デカラビアにもそう言ったしな。
「おやおや、すっかり二人の世界だねぇ。僕がいる事も忘れないでほしいよ」
「あら、まだいたの?」
「酷い言われようだねぇ。悲しいからロータス君に癒してもらおうかな」
そう言ってユーナは俺の腕にギュッと胸を押しつけてきた。
「どうだい?この感触はマーネにはできないだろう?癒してもらうはずがロータス君を癒す事になっちゃったかな?」
「今すぐ離れなさい。死にたくなければ」
そんなユーナにマーネが魔杖を突きつける。
「ふふ、君が今MP切れなのは知っているよ」
「私にはまだやれる事があるわ」
そう言ってマーネは魔杖をユーナに振り下ろした。
「おおっと、それは魔法じゃなくて物理だねぇ」
慌てて離れたユーナだが、その顔には変わらずニヤニヤとした笑みを浮かべている。
「貴女を殺すのには十分よ」
いつも通りの追いかけっこを始めた二人に俺は苦笑を漏らした。
二人共元気だな。
「ん?」
と、その時、デカラビアの倒れていた場所に何かがあるのに気づいた。
「これは……卵?」
見た限りはどう考えても卵。だが、かなり大きく三十センチ程もある。
「卵ね」
「卵だねぇ」
ヒョイヒョイと俺の左右からマーネとユーナが俺の手の中の卵を覗き込んだ。
「もういいのか?」
「ユーナの相手をするのが馬鹿らしくなったわ」
「だそうだよ」
まあ、このじゃれ合いもいつもの事だからな。
「それより、これなんだと思う?」
「鳥の卵だと思うわよ。デカラビアは鳥に似た使い魔をくれるという伝承があるから。たぶん、デカラビア討伐の報酬でしょうね」
「なるほど」
手の中の卵を見下ろすが、ピクリともせず生まれてくる様子はない。
「帰りましょうか。まだ生まれるまではまだ時間もかかりそうだし」
「そうだな」
流石に疲れた。今日はもう帰って休みたい。でも……。
「楽しかった」
ここまでの満足感は久しぶりだ。このゲームをやらなければ感じる事のなかった感覚。もう二度と味わう事はないだろうと思っていた。だから……。
「ありがとな、マーネ」
「……なんの事かわからないわね」
すまし顔でマーネはさっさと歩き出していった。
「何をしているの?行くわよ」
「ああ、今行く」
一度立ち止まって振り返ったマーネを俺は慌てて追いかけた。
さて、明日はどんな楽しい事があるかな。