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封印されし悪魔:VSデカラビア2

 戦いはマーネが初撃を当てた以外は両者攻撃を当てる事ができず、膠着状態に陥っていた。

 とはいえ、戦況は圧倒的に俺達が不利。

 ファイアーランスは現在マーネが使える魔法の中でもトップクラスの威力を誇る。そのうえ、魔杖の性能によって俺よりも遥かに攻撃力が高い。

 だというのに、与えられたダメージは減っているのかいないのかよく見なければわからない程わずか。

 いったいどれだけ攻撃を当てなければいけないのか想像するだけで気が遠くなる。

 対して俺達はかすりでもすればその時点で終わりだ。俺かマーネのどちらかがやられたら全滅は免れないだろう。

 予想通りHPが回復していない事だけが救いだ。

 さっきは冷静さを失っている隙を突いたが、すでに落ち着きを取り戻し、俺を攻撃しながらマーネにもしっかり牽制している。

「そろそろか」

 槍の雨を掻い潜り、一瞬チラリとマーネを振り向けば、マーネは小さく頷いた。

 ここまで攻めあぐねていたが、全く攻撃のチャンスがなかった訳ではない。その気になればマーネの魔法なら当てられただろう。

 だが、それをしてしまえばデカラビアは俺を無視して先にマーネを倒そうとする可能性があった。だからこそ、攻撃を当てられる場面でも控え、デカラビアの観察に努めていたのだ。

 ゲームを始めてからこれまではいつもマーネの持つ知識を元に戦ってきた。だが、デカラビアは全くの初見の相手。なんの情報もない。だからこその情報収集だ。

 もちろん、現時点でデカラビアが全ての手の内を見せた訳ではない。それでも、マーネならここまでの情報からデカラビアの手の内をある程度予想できる。

 そして、情報収集もここまで。マーネの許可も出た以上ここからは攻めさせてもらう。

『痺レヲ切ラシタカ!』

 防戦一方だった俺が突如無謀とも思える突撃を始めた事に嘲りを見せる。

『返リ討チニシテクレルワ!』

 迫る俺を貫こうとデカラビアの前に石槍がいくつも並び、その切っ先を俺に向ける。

 だが、それが放たれる寸前、デカラビアの視界を黒い靄が塞ぐ。

『小賢シイ真似ヲ!』

 しかし、デカラビアから波動のようなものが放たれ、黒い靄を吹き飛ばした。

 直後、黒い靄に隠れて放たれていた光の球がデカラビアの一つ目に直撃した。

『グワァァァ!』

 突如として襲いかかった強烈な光にデカラビアは苦痛の声をあげて身をよじる。

 ここまでの情報からデカラビアのあの目がただの飾りではない事はわかっていた。

 もちろん、マーネの放った死角からの攻撃にも反応していたから目だけで全てを把握しているわけではない。

 それでも、視界内の攻撃に比べればその反応は遅れていた。故に、一時的に視界を封じる手を打ったのだ。

『グッ』

 苦し紛れに石槍を放つが、狙いも定めず適当に放たれた攻撃など脅威じゃない。

 俺は石槍を躱し、デカラビアの眼前に迫った。

 視界が封じられた事でわずかに遅れて俺の接近に気づいたデカラビアは咄嗟に後退する。

「そうすると思っていたよ」

 これもここまでに集めた情報の一つ。接近されたとき、デカラビアは後ろに下がる癖がある。

 それがわかってさえいれば、逃しはしない。

 デカラビアが下がるのに合わせて俺はさらに踏み込み、振り抜いた剣がその目を捉えた。

『下等ナ人間風情ガ!』

 さらなる追撃を加えようとするが、怒りの篭ったデカラビアの声が頭の中に響き、その場は危険だと本能が警鐘を鳴らす。

「ロータス!」

 耳に届いた声に俺は咄嗟に体の横に剣を立てる。その剣にマーネの放った風球が直撃し、俺をその場から吹き飛ばした。

 直後、俺の立っていた場所も含め、デカラビアの周囲360°が盛り上がって鋭い土の棘となった。

「あのままだったら避け切れなかったかもしれないな」

 体勢を整えて着地し、デカラビアを観察する。

 あの全方位攻撃、範囲は然程広くない。だが、近接攻撃を当てる度に出されては困る。一撃の威力でマーネに劣る以上手数を増やさなければならない。

 だというのに、毎度毎度あれをやられては思うようにダメージを与えられない。

 これも検証が必要か。

 それに、さっきの視界を封じる手はもう二度と通用しないだろう。デカラビアには学習し、対処するだけの知能がある。

 とはいえ、搦め手自体は有効だ。そう設定されているだけかもしれないが、デカラビアは戦闘経験が少ないように感じる。

 だから攻撃は単調だし、こっちの動きを先読みするような事もない。それがデカラビアの二つ目の弱点だ。

「非力な人間らしく、そこを徹底的に突かさせてもらおう」

『同ジ手ハクラワヌゾ!』

 俺の接近にデカラビアは待ち構える事をせず、最初から移動しながら土の槍を放ってくる。

 それを俺は躱さない。()()()()

 緩急をつけた歩法によって俺を狙っているはずの攻撃は誰もいない所を通過する。

「どうだ?下等な人間の技は?」

『ッ!』

 相変わらず煽り耐性が低い。

 見下している人間に翻弄されている事に苛立ちを募らせ、一気に圧倒すべく石槍の数を増やす。

「それを待っていた」

 数を増やすために一瞬攻撃の手が緩んだ隙を突き、瞬時に加速して動き回るデカラビアの眼前に迫った。

『ナンダト!?』

 デカラビアからすれば一瞬で俺が目の前に現れたように錯覚した事だろう。

 動揺をあらわにするデカラビアに俺は連続で剣を振るっていく。

『グッ、コノ!』

 距離を取ろうとするデカラビアから決して離れず、ピタリと張り付いたままダメージを積み重ねていくが、さっきの全方位攻撃が来る様子はない。だとしたら……。

 俺の剣は何度もその身を斬り刻み、最後にあえて避けて攻撃していた目へと突き刺した。

 そして、引き抜くと同時に即座にその場から跳びのき、普段はあまり使わないバックステップのアーツも使って距離を取っる。

 直後、デカラビアを中心に全方位へ土の棘が突き出した。

「やはり、発動条件は目への攻撃か」

 デカラビアの一つ目は明らかな弱点だ。それをああも無防備にさらけ出しているという事は何かしらの対策があるはず。それがあの全方位攻撃なのだとすれば納得もいく。

 初見ならまず回避できないし、わかっていても少しでもタイミングを間違えれば串刺しだ。厄介な攻撃ではある。

 だが、代わりにその発動後は周りが土の棘に囲まれている事で動く事ができず、攻撃も一時的に収まる。

 その隙をマーネが逃すはずもなく、飛来した火槍がデカラビアに直撃した。

 ようやく勝ち筋が見えてきたな。


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