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封印の地

 〈逆境Lv5になりました〉

 〈アーツ:修羅道を取得しました〉



「……あったな」

「……あったわね」

「あったねぇ」

 現れるモンスターを倒しながら真っ直ぐ進み、スキルレベルが上がったちょうどその時、それはあった。

 巨大な岩山の一部。そこに魔法陣が浮かび上がり、その奥に穴があった。

 覗いてみると、その穴は地下へと続く階段がある。

 堅牢なる荒野の中にあって明らかに異質な存在。おそらく、ここが封印の地で間違いないだろう。

「β時代にこの近くを通りかかった事があるけれど、こんなのはなかったわね」

「本サービスになって追加されたのか、条件を満たさなければ見つけられないのか、どちらだろうねぇ」

「そもそも、これ入れるのか?」

 試しに手を伸ばしてみると、なんの抵抗もなく魔法陣を素通りした。

「あ、入れた」

「出さないためのものだから入る分には問題ないのかしら?」

「入れるならとりあえず入ってみようじゃないか」

「あ、ちょっと」

 物怖じという言葉が存在しないユーナが躊躇いなく魔法陣を踏み越えた。

「ちゃんと入れたねぇ」

「ちなみに、出られる?」

 マーネに言われてユーナはもう一度魔法陣を潜るが、やはりなんの抵抗もない。

「問題ないみたいだねぇ」

「となると、これは悪魔を封印しておくだけのものなのかしら」

「どうだろうねぇ。それより、行こうじゃないか。まさか、ここまで来て引き返すなんてしないだろう?」

「……そうね」

 頷いてマーネは魔法陣を潜り、それに俺も続く。

「どこまで続いてるんだろうな?」

 階段は長く、その奥を見通す事はできない。まるで冥府の底へと続いているようなおどろおどろしさがある。

「ライト」

 光の球が現れ、暗い階段を照らす。

「行きましょうか」

 景色の変わらない長い階段を降りていると時間の感覚もおかしくなってくる。いったいどれだけ階段を降りたのか、いい加減辟易してきた頃、ようやく終点へと辿り着いた。

 そこにあったのは禍々しい両開きの扉。

 開かなくてもわかる。警鐘を鳴らす本能がこの先にいるのが間違いなく強敵であると告げてくる。

 感じる威圧感はアースドラゴンをも上回るかもしれない。

「鍵や罠はないみたいだねぇ」

 扉に近づいたユーナが手をかけると、扉は簡単に開く。

「ユーナ、もっと警戒しなさいよ。何かあったらどうするの?」

「その時はその時だねぇ」

「まあいいわ。それより、中はどうなっているの?」

「残念ながら何も見えないねぇ」

 ユーナがさらに扉を開くが、その奥は真っ暗で何もせず見えない。

「入らないとわからないという訳ね」

「すぐに入るかい?」

「ここまで来て退くという選択肢はないわ。でも、その前に」

 マーネはアイテムボックスから魔杖を取り出した。

「アタックアップ、スピードアップ、マジックアップ」

「む?」

 マーネが魔法を発動した直後、俺の体は一瞬赤と緑に光り、マーネは紫色に光る。

「貴方にSTRとAGIを一時的に上昇させる魔法を、私にはINT上昇の魔法をかけたわ。効果時間は十分間よ」

「おや、僕にはないのかい?」

「貴女はどうせ戦わないでしょ。この先にいるのは間違いなく強敵なんだから無駄なMPを使っている余裕はないわ」

「仕方ないねぇ」

 ユーナもこの先にいるのが並みの相手ではないとわかっているのか、あっさりと受け入れた。

「それから、ユーナ。いざという時は……」

「大丈夫大丈夫。大船に乗った気持ちで任せておくれよ」

「不安だわ」

 自信満々に胸を張るユーナ。ユーナには悪いが、俺も不安だ。

「ま、危なければ逃げればいいのさ」

「それがフラグじゃないといいのだけれど……」

 フラグ?

「それより、魔法の効果時間もあるし、お喋りはおしまいよ。行きましょう」

 俺は頷き、先頭に立って扉を潜る。それに続いてマーネが。最後にユーナが扉にが潜った。

 なにも見えない真っ暗な空間。光の球はあれど、照らしているのは俺達の周りの極一部だけ。ここがどれくらいの広さがあるのかも、封印されているはずの悪魔の姿も見えない。

 と、次の瞬間、突如として扉の横に壁に設置されていた松明(たいまつ)に左右一本ずつ火が(とも)り、次々と別の松明にも火が灯っていく。

 そして、グルリとこの空間を取り囲むように全ての松明に火が灯った直後、バタンッと音を立てて扉にが閉まった。

「おや?」

 咄嗟に後ろを振り返ると、最後方にいたユーナが扉にてをかけるが、開く時はあんなに簡単だった扉がビクともしない。

「開かないねぇ」

「やっぱり、フラグだったわね」

「エリアボスと同じで戦闘が終わるまで出られないって事か」

 俺は部屋の中央に鎮座するこの部屋の主へと視線を向けた。

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