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新装備

 ポーションを巡る一件から一夜明け、俺達三人はミャーコ達ヘパイストスが購入したというホームに向かっていた。

 昨日ミャーコから頼んでいた装備が完成したと連絡が来たのだが、その時にはもうかなり遅い時間だったためこうして日を改めて行く事にしたのだ。

「ところで、ユーナ。聞きたい事があるのだけれど」

「うん?なんだい?」

「掲示板で飲むとダメージを受けるポーションという話題が出ていたのだけれど、心当たりはないかしら?」

 ん?マーネの言ったポーションに心当たりがある気が……。あ、そうだ。昨日ユーナが作っていたポーションにそんなのが混じっていたような。

「さーて、どうだったかねぇ」

 マーネのジト目を受けながらもユーナはいつもの飄々(ひょうひょう)とした態度で惚けてみせる。

 うん、間違いなく知っているな。

「……変質ポーションの解析は済んだ?」

「君達と別れていた間に色々と実験してねぇ。意図的に再現する事ができたよ」

「ちなみに、その作った奴はどうしたのかしら?」

「性能実験のために売りに出し──おおっと、危ない危ない。危うく誘導尋問に引っかかってしまうところだったよ。間違って飲むといけないからねぇ。破棄したよ」

「そこまで言っておいて誤魔化せると思っているの?そもそも、誤魔化すつもりもないでしょうに」

「ふふ、さて、どうだろうねぇ」

 呆れたようにため息を吐くマーネだが、ユーナは変わらず笑顔のまま。

 ユーナは自分の好奇心を満たすためなら倫理観とかを無視するところがあるからな。それで、何度被害を受けた事か……。

「あ、ここね」

 そんな話をしていると、マーネが一軒の屋敷の前で足を止めた。

「ここ?」

「元々は貴族の屋敷だったそうよ。それを安く買って改造したんだって」

「へぇ」

 個人で使うには大き過ぎるが、ヘパイストスくらい大勢のメンバーを抱えるクランならこれくらい必要なのか。

「迎えが来たようね」

 屋敷を眺めていると、屋敷の中からミャーコが手を振りながら出てきた。

「ニャハハ!久しぶりだニャ!それにそっちの子ははじめましてだニャ。ミャーコはミャーコだニャ」

「ふふ、そうだねぇ。僕はユーナだよ。よろしく」

 ユーナとミャーコは挨拶を交わし、握手をした。

「そういえば、この白衣は君が作ってくれたんだったねぇ。感謝するよ」

「気にしニャくていいニャ。それがミャーコの仕事だからニャ。ところで……」

 ミャーコは突然声を潜め、顔を寄せてきた。

「もしかして、あのポーションを作ったのってユーニャちゃんかニャ?」

「ええ、そうよ」

 ミャーコの問いにマーネは小さく頷いた。

「ニャるほどニャ。それにしても、マーネちゃんの連れてくる人はとんでもニャい人ばかりだニャ。類は友を呼ぶって事かニャ?」

「別に私の周りに集まっている訳じゃないわよ。むしろ……」

 マーネは否定しながらチラリと俺に視線を向けてきた。

 む?

「まあ、いつまでも立ちばニャしをしていても仕方ニャいニャ。とりあえず、入ってくれニャ」

 そう言って歩き出したミャーコに続き、俺達はヘパイストスのホームに足を踏み入れた。

「おおー」

 元は貴族の屋敷だっただけはあり、内装は下品にならない程度に華美で豪華。それに感嘆の声を漏らしたのだが……。

「おい、あれ見ろよ。魔女王じゃね?」

「うわ、マジだ!やっぱ美人だなー」

「俺ファンなんだよ」

「キャー!こっち向いてー!」

 貴族の屋敷に似つかわしくない作業着に身を包んだプレイヤー達がこっち……というかマーネを見て騒いでいるせいで台無しだ。

「ニャハハ、そんニャ行儀知らずに教育した覚えはニャいんだけどニャ。これはお仕置きが必要かニャ?」

 ニコリと笑顔を浮かべるミャーコだが、その目は笑っていない。

「「「「す、すいませんでしたぁ!!」」」」

 その目に騒いでいたプレイヤーは慌てて謝り、逃げ出していった。

「ごめんニャ。うちの馬鹿達が。ちゃんとお仕置きしておくからニャ」

「貸しにしておくわ」

「ニャハハ、仕方ニャいニャ。とりあえず、応接室に案ニャいするニャ」

 ミャーコに案内された応接室は手を加えずにそのまま使っているのか趣味のいい美術品が並び、部屋の真ん中にはテーブルとそれを挟んでソファーがあった。

 俺達はミャーコに促されてマーネを中心に三人並んでソファーに座り、その向かい側にミャーコが座った。

「いい部屋ね」

「ニャハハ、他の部屋は生産用に改造しちゃったからニャ。お客さんを入れられるのはここくらいニャのニャ」

 たしかにここに来るまでに通った廊下でも、各部屋の中から熱気と喧騒が感じられた。

「秘匿してる情報もあるから案ニャいできニャいのが残念だニャ」

「それは当然ね。私達も情報を全て教えるつもりはないし」

 俺達の場合だとユーナの事か。出回っているポーションよりもユーナの作る物はずっと品質が高いらしいからな。

 まあ、出回っていないだけで作らないとは限らない訳だが。

「さて、じゃあそろそろ装備を渡すニャ」

 そう言ってミャーコはアイテムボックスから装備を取り出し、テーブルの上に並べていった。

「こっちがロータスくん用の装備でこっちがマーネちゃん用の装備だニャ。それから杖もルイーゼから預かっているニャ」



 [火熊の服]品質B

 火熊の毛皮を用いて作られた服。一見ただの服だが、並の鎧よりも頑丈で火への耐性がある。

 DEF+25 MDEF+15

 スキル:火属性耐性

 セット効果:STR+4



 [火熊のズボン]品質B

 火熊の毛皮を用いて作られたズボン。一見ただのズボンだが、並の鎧よりも頑丈で火への耐性がある。

 DEF+20 MDEF+10

 スキル:火属性耐性

 セット効果:STR+4



 [火熊の靴]品質B

 火熊の毛皮を用いて作られた靴。普通の靴よりもやや重たいが、頑丈で火への耐性がある。

 DEF+15 MDEF+5

 スキル:火属性耐性

 セット効果:STR+4



「このセット効果って?」

「同種の装備を三つ以上装備すると発動する効果よ」

 という事はこの三つで発動するのか。

「ロータスくんはスピード型の戦士だからニャ。防御力は落ちる代わりに動きを阻害しニャい作りにニャっているニャ。それでも、素材が素材だからそこらの鎧よりも頑丈だニャ」

 俺は新しい装備を受け取り、装備する。

 とはいえ、この場で生着替えをする訳じゃなく、メニューを使って一瞬だ。

「どうかニャ?」

「ふむ、いい感じだ。まるで違和感がない」

 ミャーコの言う通り動きも阻害しないし、着心地もいい。それに、軽い。気になるのは……。

「レッドベアの毛皮って赤くなかったっけ?」

 この装備の色が黒い事だろうか。

「染めたニャ。マーネちゃんが赤のままだと目立つから染めてくれって言われたのニャ」

 たしかにあのままだったら目立つな。ただでさえ目立つマーネが隣にいるのにこれ以上目立っても仕方ない。

「マーネも着替えたのか?」

「ええ」

 隣にいるマーネを見るが、その格好は変わらず黒いローブのまま。性能は変わっているのかもしれないが、見た目ではわからない。

 違いは手に持っている魔法使いが持つ先がクルリと丸まった杖くらいだろうか。

「ルイーゼが早く次の素材を持ってきてって言ってたニャ」

「できるだけ早く持ってくるわ」

「ついでに防具の素材も持ってくるニャ」

「この装備だとしばらくは現役で使えるから当分ないわね」

「ニャ〜、腕がいいのも困りものだニャ」

 その後もしばらく雑談し、俺達はヘパイストスのホームを後にした。

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