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隠しスキル

「話を聞きましょうか」

 ログインしてくるなり放たれた第一声に俺は首を傾げた。

「なんの話だ?」

「昨日の話よ。女の子をナンパしたりしなかったでしょうね」

「する訳ないだろ」

 まったく、マーネは俺をなんだと思っているんだか。

「なら、言い換えましょう。あの後、女の子と知り合わなかった?」

「それは知り合ったな」

「……はぁ」

 俺の答えにマーネは深々とため息を吐いた。はて?どうかしたのだろうか?

「予想通り過ぎて言葉も出ないわ」

「む?」

「それで、その知り合ったっていうのはどこの誰なの?」

「どこのかは知らないが、名前はローズと言っていたな」

「ローズ?」

 その名前を聞いたマーネは一瞬眉を顰めた。

「知り合いか?」

「お互い知っているという意味ではそうかもしれないわね」

 ふむ、この様子だと友好関係にある訳ではなさそうだな。

「まあいいわ。あの女の話はここまでにしましょう。別にあの女と何もなかったのでしょう?」

「ああ、少し話しただけだ」

「なら、いいわ。それより、他には何かなかった?」

「他か……」

 何かあっただろうかと考え、昨日新しく取得可能になったというスキルの事を思い出してそれをマーネに伝えた。

「それは隠しスキルね」

「隠しスキル?」

「ええ。でも、その話は場所を移してからにしましょう。ここだと誰が聞いているかわからないから」






 そうしてやって来たのはお馴染みの荒野。その奥地なうえ、始まりの街からエリアボスまでの直進ルートからは大きく外れた大きな岩が点在する見通しの悪い岩場に俺達は立っていた。

「こんな所あったんだな」

「滅多に人の来ない穴場よ」

「そんなに人に聞かれたらまずいのか?」

「場合によってはね。それより、その取得可能になったというスキルはなんなの?」

「ええっと、たしか……」

 俺はメニューを開き、スキル取得の欄から新しく増えたそれをマーネに見せた。

「これだな」

「『無技の剣』?聞いた事のないスキルね。どんなスキルなの?」



 無技の剣:アーツを使いこなし、極めた者だけが至れる境地。アーツを使用せずにアーツと同等の効果を得られるようになる。



「どういう事だ?」

「ロータス、アーツのメリットとデメリットは?」

「む?」

 突然の質問に戸惑いながらも俺はそれに答える。

「メリットは通常攻撃よりも威力がある事。デメリットは発動後の硬直かな」

「正解よ。貴方が今はまだ使えないアーツの中には射程が伸びたり属性がついたりするものもあるけど、今は割愛するわ。今大事なのはメリットよりもデメリット。発動後の硬直という部分ね」

「もしかして、アーツのデメリットがなくなるって事か?」

「おそらくね。取得に必要なポイントは?」

「えっと、10ポイントだな。結構必要なんだな」

「それだけ有用なスキルという事よ。SPにも余裕があるんだから取るべきね」

 俺にもその有用性はわかる。硬直がなければ昨日のスケルトンももっと楽に倒せた。

 悩む必要はないと俺は開きっぱなしだったメニューから新しく『無技の剣』を取得した。




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 名前:ロータス

 職業:戦士Lv10

 STR:29(+ 4)

 VIT:28(+ 4)

 INT:15(+ 3)

 MID:15(+2)

 AGI:28(+4)

 DEX:21(+ 3)

 SP:17

 スキル:剣術Lv 4 眼Lv3 歩法術Lv3 逆境Lv3 集中Lv 4 気配察知Lv2 カウンターLv2 無技の剣

 称号:【ジャイアントキリング】【希少種ハンター】




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「スキルレベルがない?」

「隠しスキルにはスキルレベルがないのが結構あるわ」

「へぇ、そうなのか」

 俺はなんの気なしに新しく覚えた無技の剣の詳細を見てみた。

「これは?」



 使用可能アーツ:スラスト



「今はこれしか使えないって事か?」

「たぶんそうでしょうね」

 俺の問いに横から俺のメニューを覗き込んだマーネが頷いた。

「増やすにはどうしたらいいと思う?」

「たぶん、そのスキルが取得可能になった条件と同じだと思うわ。取得可能になった時の状況から予想するに、一つのアーツで一定数のモンスターを倒す事。判明している他の隠しスキルの条件と同じだとすると五百体ってところかしら」

 数は数えていなかったが、たしかにそれくらいは倒したかもしれないな。

「いえ、それだけだとβ時代に誰かが見つけていたはず。という事は他にも何か条件があるはず……」

 思考の海に沈んでいくマーネを俺は黙って眺めていた。

「一番ありそうなのは一つのアーツだけで連続して五百体モンスターを倒すってところかしら」

 しばらくして顔を上げ、マーネはそう結論を出した。

「それ、かなり面倒じゃないか?」

「ええ、そうね。加えて、ソロでという条件もつくかもしれないわ」

 数が多い場合は発動後の硬直を気にしてアーツを使えないし、少なければアーツは使えるが連続でという部分が達成できない。それを味方のサポートなしでとなればなおさらだ。

「そのスキルの有用性と今まで発見されていない事を考えるとそれくらい条件が厳しくてもおかしくないわね。あくまで予想だけれど」

 刹那の時間が勝敗を分ける戦いの中ではアーツの硬直というのは大きなデメリットだ。いくら威力があるとはいえ、使える状況は限られる。

 それがデメリットなしで使えるとなればそれくらい厳しい条件があってもおかしくないのか。

「という事はだ。新しく無技の剣で使えるアーツを増やすには」

「一人で連続五百体アーツでモンスターを倒す」

「という訳か」

 現状だと新しく増やすのは難しいか。あれは動きの遅いスケルトンだったからできた事だし、それも硬直が一番短いスラストに限った話だ。

 他だとかろうじてスラッシュができるかどうかといったところだ。

「とりあえず、スラッシュだけは試してみて、他は保留ね。レベルが上がって囲まれたところで問題ないようになるまでは置いておきましょうか」

「ああ、そうだな」

 スラストだけでも硬直なしに使えるようになったのは大きいし、スラッシュも加われば今は十分だ。

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