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ケモミミ

 〈レベルが10になりました〉

 〈逆境Lv3になりました〉

 〈SPが2ポイント加算されます〉

 〈レッドベア初討伐報酬によってSPが3ポイントが加算されます〉

 〈初めてレアモンスターを討伐したプレイヤーに称号『希少種ハンター』が送られます〉



「む、新しい称号か」

 とりあえず、称号だけは確認しておこうとメニューを開く。



 希少種ハンター:初めてレアモンスターを討伐した者に送られる称号。レアモンスターとの遭遇率が上がる。



「これはいいのか?それに、昨日レベルアップしたばかりなのもうレベル上がったんだな」

「格上のモンスターだもの。これくらいは当然ね。それより、ドロップアイテムの確認をしましょう」

「ん、ああ」

 俺はマーネに言われてメニューを開き、ドロップアイテムを確認する。

 毛皮に爪、肉と胆石?これはどういうアイテムなんだ?

「胆石は一応レアドロップよ。正確に言うなら微レアといったところだけれど」

 俺が首を傾げていると、後ろからマーネが覗き込んできた。

「何に使うんだ?」

「このゲームで胆石というアイテムはそのモンスターの力の結晶体といったところかしら」

「へぇ」

 そういえば、戦う前にそのうち倒すつもりだったと言っていたな。という事は何か目的があったのか?

「ええ、そうよ。一つは貴方の防具用に毛皮ね」

「他は?」

「これよ」

 そう言ってマーネは赤い腕輪を取り出した。

「レッドベアのレアドロップ。火熊の腕輪よ」

「ふむ」



 [火熊の腕輪]品質B

 北の森で稀に発見される火の力を持つ巨熊の力が宿った腕輪。希少価値が高く、滅多にお目にかかれない。

 効果:ATK+10 MATK+10 火魔法威力上昇:小



「それと、貴方の持っている胆石も目的の一つね。一度で全部揃ってよかったわ。倒すのもそうだけれど、見つけるのが大変なのよ。本音を言えば貴方の分の腕輪も欲しかったのだけれど」

「今回はたまたま遭遇しただけなんだよな?」

「ええ。それに、運良く遭遇できたとしても腕輪が手に入るかはわからないわ。腕輪を落とす確率は十パーセントを切っているから」

「まあ、機会があったらだな。俺にはマーネに貰った指輪があるし」

「そう」






 《お知らせします。東の平原のエリアボス『ファイティングラビット』がジークフリート・シグルズ・エドモンド・アロマ・レントによって討伐されました》



「む?」

 始まりの街まで残り少しという所で突然聞こえてきたアナウンスに俺は思わず足を止めた。

「このメンバーという事はニーベルンゲンね。まあ、そろそろだとは思っていたわ」

「俺達の時は名前を非公開にしてたけど、してなかったらこういう風に名前が呼ばれるんだな」

「そうね」

 たしかにこれは目立つな。ただでさえマーネは目立つのにこんな風に名前が公表されたら面倒になるというのもよくわかる。

「トッププレイヤーはそろそろ主戦場を第二の街に移動していくでしょうね」

「俺達も東側の第二の街にも行くのか?」

「近いうちに行く事になると思うわ」

「そうか」

 俺は頷いて止まっていた歩みを再開した。

 そして、それから少し歩き、始まりの街の前に辿り着く。

「昨日までいたはずなのに少し久しぶりに感じるな」

 ちょっとした感慨(かんがい)を抱いて一日ぶりに始まりの街に足を踏み入れ、昨日までと一変した光景に思わず足を止めた。

「ふ、む?」

「ああ、こっちもそろそろ動き出す頃だったわね……」

 入れ違いで街の外に出ていくプレイヤーを目で追いかけ、隣のマーネに顔を向けた。

「今のプレイヤーだよな?」

「貴方の言わんとしている事はわかるわ」

「キャラメイクに種族はなかったと思ったんだけど、違ったか?」

「間違ってないわよ」

 俺が何に驚いているかというと、プレイヤーに耳があったのだ。

 いや、違う。耳は俺にもある。どうやら、少々混乱しているようだ。

 俺は頭を振って混乱を振り払い、頭を冷静に戻した。

 正確に言うならプレイヤーの頭に動物を思わせる耳がついていたのだ。よく見ると耳だけでなく尻尾もついている。

 そんなプレイヤーが街中に溢れていた。

 おかしい。昨日まではあんなプレイヤーいなかったはずなのに。俺が街を離れていた一日の間に何があったんだ?

 マーネにも確認したが、このゲームは種族を変える事ができなかったはずなんだが……。

「行くわよ」

「行くってどこに?」

「この状況の元凶に会いにかしら?」

 未だ状況は理解できていないが、さっさと歩き出したマーネに続いて俺も歩き出す。

「なあ、あれはなんなんだ?何か知っている様子だったけど」

「答えを言うならつけ耳ね。一応、プレイヤーメイドの装飾アイテムよ。このゲームは種族を選べないからああいうのに憧れるプレイヤーもいるのよ」

「あれがつけ耳?」

 たしかによく見ると全く動いていなくて違和感があるが、それでもかなりリアルに作られていてパッと見ではわからない。

 種類は様々で犬や猫、兎に狐、あの丸い耳は熊だろうか?

「あれは犬じゃなくて狼よ」

「いや、そこの正確さは今大事じゃないんだけど」

「あら、同じイヌ科の狐は分けたのに狼だけ一括りなんて可哀想じゃない」

 そう言ってマーネは悪戯っぽく小さく笑みを浮かべた。

「犬か狼かの議論は置いておくとして、昨日まではつけ耳をつけているプレイヤーはいなかったよな」

「量産できる体制が整ったんでしょうね。それで今日か昨日私達が出発した後に売り出した。だから私達は知らなかったのよ」

「なるほど」

 獣耳プレイヤー達の波に逆らって進んでいると、生産者通りのある店の前に行列ができているのが見えた。

 並んでいるプレイヤーは普通だが、店から去っていくプレイヤーの頭には獣耳がついている。

 どうやら、あそこがつけ耳を売っている店であり、マーネの向かっていた場所でもあるようだ。

「マーネもつけるのか?」

「つけないわよ」

「そうなのか?見てみたかったんだけどな」

「……つけないわよ」

 そう言ってマーネは近くにあったベンチに座った。

「落ち着くまでここで待っていましょうか」


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