第二の街:セカンディア
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名前:ロータス
職業:戦士Lv8
STR:25(+2)
VIT:24(+2)
INT:12(+1)
MID:13(+2)
AGI:24(+2)
DEX:18(+1)
SP:10
スキル:剣術Lv3 眼Lv3 歩法術Lv3 逆境Lv2 集中Lv3 気配察知Lv2 カウンターLv2
称号:【ジャイアントキリング】
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第二の街までの道中。今までは空欄になっていた称号欄を眺めながら首を傾げた。
「なあ、称号ってなんなんだ?」
「特定の条件を満たす事で得る事ができるものよ。獲得する事で何かしらのボーナスがあるわ。例えば、私達の得た【ジャイアントキリング】ならボスモンスターへのダメージ上昇だったりね。というか、メニューから確認できるから自分でしてみなさい」
「ふむ」
ジャイアントキリング:ボスモンスターの初討伐を達成した者に送られる称号。ボスモンスターへ与えるダメージ上昇・小。
「結構使える?」
「そうね。ボスモンスターに対して常にダメージ上昇効果があるのはかなり使えるわ」
「なるほど……。ん?あれって……」
話しながら歩いていると森の奥に壁のようなものが見えてきた。
「ええ、あれが第二の街セカンディアよ」
森を抜けると、そこには木製の壁に囲われた街が現れた。
「木製だけど頑丈そうだな」
「それがこの街の特徴でもあるのよ。とりあえず、入りましょう」
街に入るための門の前には門番が立っていたが、特に声をかけられる事もなくその前を通り過ぎ、俺達は街の中に足を踏み入れた。
〈初めて第二の街:セカンディアに到達したプレイヤーにSPが3ポイント送られます〉
「む?」
「ボーナスポイントね。たぶん、ここまで含めてエリアボス討伐の報酬ね」
「そうなのか?」
「普通に考えればエリアボスを倒したらそのまま次の街に行くでしょ?」
「それもそうか」
マーネの言葉に納得して頷き、俺は改めて新しい街を見回した。
「おお」
そこは始まりの街とはまた違う街だった。広さは始まりの街の方がずっと広く、賑わっていた。
だが、ここはより自然と調和した穏やかな空気が流れている。
「いい街だな。住みやすそうだ」
「そうね」
「あと、なんとなく木の匂いがする気がするんだけど」
「この街は近くで品質の高い木材が取れるの。だから木工が盛んな街なのよ」
そう思って改めて街を見てみると、店で売られているのは木製の食器や家具、木工細工などが多い。素人目ながらどれも質が高いように見える。
「木工って事はここに来たのは杖の強化か?」
「ええ。でも、正確に言うならそのための木材を手に入れる事ね。この先のフィールドで質の高い木材が手に入るの。それを手に入れるのを手伝ってくれるかしら?」
「今さらそれを聞くか?」
俺が断らない事などマーネだってわかっているだろうに。
「じゃあ、休憩したら行きましょうか。でも、その前にここの名産に蜜菓子があるからそれを食べに行くわよ」
「蜜菓子?」
「木工師が作った養蜂箱を使った養蜂も盛んなのよ。その蜂蜜を使った蜜菓子は一度は食べるべきね」
そう言って意気揚々と歩き出すマーネ。
マーネも女子らしく甘い物は好きだからな。もしかして、ここに来た本当の目的は木材よりも蜜菓子なのかもしれない。
「何をしているの?置いていくわよ」
「すぐ行く」
いつもと変わらないクールな表情ながら、いつもより若干テンションが高い様子に苦笑を浮かべ、その後に続いて歩き出した。
「甘いな」
俺達はセカンディアにある喫茶店のような店でマーネオススメの蜜菓子を食べていた。
「それが売りだもの」
テーブルを挟んで対面に座るマーネは蜜菓子を口に入れ、親しい者じゃないとわからないくらいかすかに口元を緩ませた。
だいぶ気に入っているみたいだな。
「それにしても、ここまで味覚が再現できるものなんだな。この紅茶も美味いし」
豊かな香りを放つ紅茶のカップを手に取り、ゆっくりと口に運ぶ。
「これだけ食事のレベルが高いとこれを目的にするプレイヤーもいそうだな」
今まではずっと屋台で済ませていたからな。あれも悪くないけど、たまにはこういう店に入るのもいいな。
「実際にいるわよ。食べ歩き目的のプレイヤー」
「へぇ、そうなのか。いろんなプレイヤーがいるんだな」
「楽しみ方は人それぞれだもの。誰よりも先に行こうとする人。物作りに情熱をかける人。食事や景色を楽しむ人。このゲームは色々な人が色々な方法で楽しめるゲームなのよ」
「俺達はどれになるんだろうな?」
一応一番早くエリアボスを倒したから誰よりも進んでるけど、俺としてはこんな風に食事や景色も楽しみたい。
「全部でいいんじゃないかしら。これはゲームなんだから少しくらい欲張ったって罰は当たらないわよ」
「そうだな」
いつかは物作りにも手を出してみるのも悪くないかもしれない。
「食事に関してだけれど、女性プレイヤーからはかなり喜ばれているみたいよ」
「そうなのか?」
「ええ、いくら食べても太らないから」
「ああ、なるほど」
それは女性からしたら死活問題だろうな。男の俺からすればよくわかんないが。
「マーネはどうなんだ?」
「知っているでしょ。私が太らない体質なの。というか、食べてもどんどん体重が減っていくのよね」
マーネというか、現実の凛も甘い物が好きでよく食べている。そのうえ、出不精で引きこもり気質なのに無駄な肉は一切ない。
「無駄な肉どころか欲しい所にも全然肉がつかないし……」
小声で呟きながらマーネは自分の発育の悪い胸を見下ろした。
これは聞かなかった事にするのが吉だろう。わざわざ目に見えている地雷を踏む事もない。
「うん、甘いな」




